Episode00~序(はじまり)の序(はじまり)~
初投稿です。
今ここに、1つの時代が終わりを告げようとしていた――
『グギャァアアオォン!!!!』
1体の【黒き獣】は最後の雄叫びと供に、その首を大地に下ろした。
その【黒き獣】の背から1人の少女が荒い息を吐きながら立ち上がった。
「“魔獣●●●●●”討ち取ったぞぉーー!!!!」
少女の顔のあちらこちらにはキズや血で汚れ、己の身を守った鎧はボロボロの有り様であったが、それでも彼女の声には張りがあった。
目下では、少女の仲間が満身創痍な体でありながらも少女……【勇者】に手を振っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
“あぁ……口惜しいや、口惜しいや”
死して、魂だけの存在になった【魔獣】は ただ呟いた。
血肉踊る闘争に終止符が打たれてしまった事にだ……
“幾久しく忘れていた胸高鳴る熱き戦い…興奮冷めやらぬものであった。
故に、口惜しいのだ。”
“――フフフ、勇者よ。
此度の戦い、貴様の勝ちである!
だが、次こそは我【●●●●●】が勝たせともらおうぞ。
故に必ずや《転生》し、貴様に勝負を挑もうぞぉ!”
黒き獣の魂は輝き始めると、世界から姿を消した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
“あれから、何十年、何百年いや どれ程の月日が流れただろうか。”
黒き獣の魂は輪廻を巡っていた。
“しかし、一向に転生の兆しがないのは 何故だ?”
『それは、あなたの魂が【次元の壁】を越え、魂の核が傷ついていたからよ。
その魂を癒すために、私はあなたの魂を転生させずにいたの』
【黒き獣】の問いに答えたのは、少女のような存在だった。
‘~のような’と付けたのは、その存在が【神】と呼ばれる力を持つ存在と【黒き獣】は理解したからだ。
“格高き名のある神よ、我は いつ【境界】を越えたのか…聞いても?”
『それは、分からないわ。
いくら、私が魂の管理者たる【地獄の閻魔】でも元は別次元にいた魂まで管理出来ないわ』
少女…… 閻魔が魔獣の問いに小さく首を横に振るった。
“なるほど…では、こうして我に語りかけてきたということは【転生】が為せるまで、魂が回復したと?”
『えぇ、その通りよ。
それに傷を癒していた【黒き獣】に興味を持った困った女神がいるのよ』
【黒き獣】の前で、【地獄の閻魔】は困った顔で肯定する。
“なにゆぇ……”
【黒き獣】が喋ろうとした瞬間、【地獄の閻魔】の隣に金色の淡い光と共に別の神が顕現してきた。
【地獄の閻魔】より女性らしい背格好と異国の装束(巫女服)、それに真っ直ぐで綺麗な黒髪が装束によく似合う女性であった。
女性の放つ神聖のオーラに【黒き獣】の魂は1ドットでダメージを受けていた。
『呼ばれて、跳び出て、こんにちは♪
日の本のアイドル最高神【天照】ちゃんだお!』
“……だ、ぉ?”
そして、1stコンタクトは最低であった……
『天照、アポなしで いきなり何なの!
さては、また【覗き見】したのね』
『閻魔ちゃん、硬いよ ロックよ ハードだよ。
まるで、杉の木の板みたいに硬いよ!
もうちょっと、その慎ましやかな《ちっぱい》の柔らかさを持つべきだよ!
え~~っと、あのね、そのね…そろそろ【あの子】の魂が治ったかな(?)って、気になって来ちゃっただけだぉ。キャハ(*≧∀≦*)』
どうやら、頭の出来は悪いらしい…
それに、なにやら端たない女性だ というのが【黒き獣】の感想であった。
『《ちっぱい》では、ありません!
品乳なの、発展途上中なのよ!
このデカチチ天照ッ!! そう…決して、品乳などでは ないの!
それに“来ちゃった”とは、何なのよ!
《アレ》ね、そうね…きっと《アレ》ね。
またどうせ、【神託】の仕事サボったのね!』
『ねぇねぇ、【あなた】お名前は なんていうの、Say?』
『なっ、無視しないでよ!』
2柱の女神のやりとりに終始、翻弄されっぱなしであった【黒き獣】だったが、【天照】を名乗る女神に問い質され――かろうじて残る理性に基づき名乗るのであった。
“我が名は【ケルベロス】――”と
『へぇ~、ほぉ~、【ケロちゃん】か』
天照は【黒き獣・ケルベロス】の魂を品定めするように見つめる。
実際、天照はケルベロスの魂にある能力やら生前の記憶やら【覗き見】していた。
“しかし、【ケロちゃん】とは何やら バカにされた感じの名など……
それに先程から何やら、むず痒い気分になるのだが”
『こら、天照ッ!!
また勝手に【覗き見】してるのね。
止めないと【イザナミさん】に言い付けるわよ』
『ひっ!? やめます、止めます、Stopping!!』
【地獄の閻魔】の青白くも すらりと美しい手がスナップを利かせ、【天照】の頭を叩く。
【ケルベロス】は2柱の女神のやりとりをどこか懐かしむような感じで見ていたが、それでいて思考は別の事を考えていた。
“さて、話を聞いた限り ようやく転生できる。
しかし、次元を越えたとなると【勇者】と相見えるのは…叶わないという事、か”
再戦が叶わない事に話す言葉にも悲しみのオーラがのる。
『…あっ、その事なんだけどね。ケロやん』
またも魂の記憶を【覗き見】をした天照がケルベロスに言う。
『あなたを倒した【女勇者】ちゃん、こっちの世界にいるんだお!
今も生きてはいるなのね!』
“……ッ!! 誠なのか!”
ケルベロスの魂が呼応するかのように力強く 点滅するのだった。