祝 初の人間殺害
誤字脱字の修正を時折します
栞位置が、ずれる場合が有ります
m(_ _)m
全身を黒っぽい服装で包んだ男諜報員のダンは、うつ伏せになり顔は横を向いていた。
「コア、転移の条件と範囲を教えろ。」
<空間転移の条件は、ダンジョン内限定の全ての生物及び物体が魔力Ptの消費で可能です。
転移先の空間より容量を上回る場合不可能です。
転移先の範囲は現在ダンジョンエリア内が可能。>
「俺や眷族と眷族以外の消費魔力と生物が持つ持ち物の扱い、それから現在の意味は?」
<マスターと眷族の消費魔力は1Pt、眷族以外の生物は消費魔力は100Ptです。
眷族を含む生物が身に付けた物は一緒に転移され、消費魔力は不要です。現在とはダンジョンコアの最大魔力保有量が10,000Pt、ダンジョンマスターLv5に成るまではダンジョンエリア内制限が付く事を示します。>
「眷族以外は高いな。
コア、スラッチとスラリンを男の進入者の背中の上に転移させろ。」
<スラッチとスラリンを男の進入者の背中の上に転移させろを実行しますか。>
「承認。」
スラッチとスラリンを妖しく光が包むと、姿が朧気に霞みながら消えた。
「魔方陣とかが出て来るとかと思ってたが、こんな感じなんだ。」
進入者が映る画面に目をやると、進入者の背に仲良くスラッチとスラリンが鎮座して居た。
「スラッチは男の腕を、スラリンは男の足を拘束してくれ。」
スラッチ達は上下に伸び縮みした後に、包み込んで手足を拘束した。
「妖蟲大雀蜂達は、男に見える位置に移動して、何時でも襲える様に待機してくれ。」
10体の妖蟲大雀蜂達は、命令通りに男の目線の先1m辺りで威嚇する様に待機した。
「商人ギルド職員で諜報中だった"ゴン"君、聞こえるかね?
麻痺毒によって身体の自由は奪わせて貰った。念の為に、手足は拘束して在る。
可笑しな真似や誤解を招く行為をした場合は、目前に居る蜂達に鼻や耳の穴から内部を喰い千切る様にさせるから注意するんだよ。」
出来る限り優しい口調で問い掛けた。
余り怯えて貰っても、会話に成らないだろう。
本当は目玉を喰い千切ると言いたいのを、わざわざ止めたんだ。
見えなくなったら、解らないだろ?
何が自分を襲って居るのかがね。
うん、俺って優しい。
(何だ!何が起こったんだ。
特級ポーションの調査を粗方終えて、報告の為に帰る途中だったよな?)
池の近くを通った時に、首筋に激痛が有って身体の自由を失った。
(辺りの薄暗さから夕暮れ時だろうか、大樹海だから薄暗いのか?時間の感覚すら曖昧だ。)
急に背中に重さを感じた。いきなりだ。
背中の重さに戸惑っていると、声が聴こえて来た。
(スラッチにスラリンとは人の名前だろうか?手足を拘束だと?)
背中の重さが移動して、手足に何かが触れるのが判った。
(蜂が待機に攻撃だと?あれか?)
現在の状況を把握しようとしていると、先ほどの声の主が恐ろしい事を言い出す。
(目の前に居る蜂が鼻や耳の穴の中を喰い千切るだと…)
目の前の蜂達が、その鋭い顎を奮い血が飛び散ちる様子が脳裏に鮮明に浮かび、ゴンの鼓動が早くなり声を上げそうになる。
「私の声が聞こえるなら、返事をしてくれ無いかね?声が出なければ、瞬きを2回連続でも構わないよ。」
「聴こえる。オタクは誰だ?何が目的だ?」
「返事をくれたのは大変有難いが、ゴン君に質問を許可した覚えは無いぞ。
ゴン君は状況が理解出来て無い様だね。
勝手な質問をした罰として、話しを聞かない耳を貰うよ。
妖蟲大雀蜂達よ、ゴン君の右耳を食べて良いよ。」
妖蟲大雀蜂達は、嬉嬉として右耳に飛び付いた。
「ぎゃあぁぁー」
激しい痛みが襲った、痛みは耐え難いもので悲鳴を上げていた。
痛みとは別に、蜂達が咀嚼する音が聴こえ、血が流れる肌の感覚が心を苛む。
「食べ切れない耳は肉団子にして、エリザベスへの土産にしなさい。
今日は、ご苦労だったね。日が暮れる前に巣に戻りなさい。」
妖蟲大雀蜂達は食べ残した右耳を、肉団子にして持ち運び巣に戻って行った。
叫び疲れたゴンは、肩で息をしていた。
「ゴン君、聴こえるかな?返事をしてくれるかな?」
「き、聴こえる。」
「今度は大変良く出来ましたね。また質問をしたら今度は、右の目玉を貰う積もりでしたよ。」
声の主のフザケタ話し方に怒りを抑えつつ、目玉と聴いて唖然とした。
コイツなら躊躇わずにやると直感が囁く。
「幾つかゴン君に質問をしますよ。
貴方の態度次第で、耳の治療や解放を約束しましょう。
但し、嘘や誤魔化した返答は相応の罰を与えますよ。
解りましたか?」
「判った、俺の知る事は何でも答える。」
「何故村人を尾行していたのかと命令をした人物について詳しく教えて下さいね。」
「奴等を尾行していたのは、特級ポーションの素に成る神草ソーマの調査の為で、依頼人はオルクス商会の会頭ダラス・オルクスだ。
特級ポーションは奴等の村の特産品でね、オルクス商会が主な取引先だが横取りして独占するのが目的だ。」
「わざわざ危険を犯してまで、独占する必要が解らないね?
オルクス商会の財政は逼迫しているのかね?」
「老舗の王室御用達で財政は安定してると思う。
理由は推測しか出来ないが良いか?」
「ゴン君の考えを聴きたいな。」
「俺の推測だから間違っても、罰は勘弁して欲しい。
ダラス・オルクスって男は世間で謂う所下種の極みだ。
女に対して見境が無い上に、金と地位を利用する事に躊躇いが無い男だ。
村長の娘を第4婦人に迎え入れ様として断られたから、特産品を横取りして困窮を救う金銭と交換に娘を手に入れる為だと思う。」
「なかなか面白い推測だね。罰は与え無いから安心してね。
特級ポーションの効能と価値を知りたいな。特級以外のポーションの効能と価値も教えて欲しいな。」
「特級ポーションは、死ぬしか無い怪我や病を一瞬で治し、欠損した肉体をも再生するらしい。ウズラの卵程の大きさの特級ポーションが、金の延べ板10枚で買え無いと聞く。1粒でも庶民なら、一生働いても買え無いと思う。
1級ポーションは、肉体の再生は無理だが、大概の病や怪我なら1日で治るらしい。庶民が10年以上働いた稼ぎ全てで、買えるかどうからしい。
2級ポーションは、数日掛けてある程度の病と怪我が治る。庶民が数年頑張って買えるかどうか?
3級ポーションは、軽い病と単純骨折程度なら1日程で治る。庶民が1ヵ月の稼ぎで買える。」
「非常に判りやすい例えで良かった。
お礼に1つだけ、ゴン君からの質問に答えてあげよう。」
「アンタは何者だ?」
「ん~?なかなか難しい質問だね。
人に厄災と死をもたらす存在かな?」
「厄災と死を…」
「さて、突然だが君に謝るよ。嘘を付いて済まない。
治療も解放もする気は無い、死んでね。
スラッチ、鼻と口を塞げ。」
「がっ、んっ…」
瞬きと眼球の動きは激しいが、麻痺毒の影響でピクリとも身体は動かなかった。
暫くすると眼に光が無くなった。
ピンポーン!
<人間がダンジョン内で死亡し2,400Ptの魔力と最大魔力保有量が増加しました。
ダンジョンマスターLvが上昇しました。>
「凄い量の魔力Ptだ。人間が特別なのか?ゴンが特別だったのか?
コアへの蓄積量が増えたな。
コア、最初の最大魔力保有量を教えろ。」
<初期の最大魔力保有量は3,000Ptです。>
「3,000+2,400=5,400の倍近くに増えたんだな。これで監視体制を問題無く増やせるし、戦力の強化も出来る。
コア、俺の詳細表示。」
個名:
種属:魔属
種名:ゴブリン
官職:ダンジョンマスターLv2
官位:森の侵略者
*眷属(眷族)に対し絶対服従を強制
眷族と意志疎通、会話可能(声帯を持つ者のみ)
「代わり映えしないなぁ。
コア、増えた機能とか変化は無いか?」
<ダンジョンエリアの空気中から魔素を回収出来る様になりました。>
「魔素?魔力とは違うのか?
コア、説明しろ。」
<魔物を含む全ての生物は、最大保有量を超えた魔力を体外に放出します。
放出された魔力は特有の特性を失い、魔素に変化します。>
「生物の豊富な樹海には、魔素が満ちてるよな?なら魔力が溜まるのも早いのか?
コア、魔素の回収で魔力はどれだけの時間で最大魔力保有量になる。」
<現在のダンジョンエリアと周囲の魔素濃度と最大魔力保有量では、1時間に約500Ptを回収し約9時間後に最大保有量になります。>
「朝には満タンになるなら、どんどん使おう。
まずは死体の処理だな。
コア、俺をゴンの死体の脇に転移。」
転移したゴブリンは、死体から衣服や装備を全て剥ぎ取り身に付けた。
「エリザベス、妖蟲大雀蜂を3つに分けて、肉団子を持ち帰った者達に案内させ先ほどの場所に順番に寄越せ。」
「ヂイッ(御意。)」
「妖禽鷹、俺が居る場所まで夫婦で来い。」
「クエッ。(はい。)」
「スラッチ、スラリン拘束を止めて、楽にしてろ。」
「ミミックスライム、俺の居る場所まで来い。」
必要な指示を眷族に出すと、ゴブリンは初めての森にキョロキョロと視線を移しながら眷族の到着を待った。
「おっ、早かったな。妖禽鷹、名前と念話能力を与える。
お前は、南海。お前はソフバンだ。
コア、俺と南海にソフバンと念話能力を付与。」
<マスターと南海とソフバンへ念話能力を付与しますか。>
「承認。」
「南海にソフバン、ダンジョンエリアなら念話で会話しろ。」
((はい。マスター。))
「そこの死体は好きなだけ喰っていいぞ。
進入者を発見した褒美だ。」
(有り難う御座います、マスター。)
(遠慮無く頂きます、マスター。)
「骨は使う予定が在るから、傷付けるなよ。
南海とソフバンには8体の妖禽鷹を部下に付ける。
番にして東西南北に監視体制を採れ。お前達は池の近くに巣を移し、部下への指示をしろ。」
((はい。))
食事の済んだ南海とソフバンは、巣の移動と新たに召喚された部下に指示を出し飛び去った。
「妖蟲大雀蜂達よ、今日はご苦労だった。その死体を好きなだけ喰え。骨は傷付けるなよ。」
6,000余りの妖蟲大雀蜂達が食べ進んだのを見計らい、順番に次を寄越す様にエリザベスに指示をして、最後に肉団子を持たせ巣に帰らせた。
「ミミックスライム、お前達は骨を残して死体を喰え。」
スラッチ達は死体が嫌だった様で、食べたがらなかった。
また汗を与えると言うと、喜ぶ様に上下してた。スライムって亜種に成ると好みが出るのかね?
ミミックスライムは喜んで食べてるけどね、良く判らん。
日が落ち、辺りがすっかり暗くなったので妖禽梟に名前と部下を与え、池の近くに巣を移動させた。
因みに、ホーホーとキーキーだ。
名付きで知能の高い眷族には念話を与え、眷族同士の念話もさせてみたが問題無かった。
「食べ終わったか?
全部じゃないが人間を食べたから、人間に擬態出来るか?」
激しく身体を横に震わせ、否定された。
残念、丸々食べないと駄目かな?
「ミミックスライム達は人間擬態の練習をしてくれ。
ダンジョンエリアなら何処で餌を捕ってても良いよ。」
上下に伸び縮みすると、イタチに擬態し森に走り去った。
「コア、ゴンの骨をスケルトンに出来るか?」
<可能です。ゴーストを召喚して憑依させて下さい。>
「へー、ゴーストが憑依してスケルトンに成るのか。
コア、スケルトンとゴーストの詳細表示。」
個名:
個数:
種属:魔属
種名:スケルトン
官職:
官位:
費用:魔力10Pt
*頭部の魔力塊を破壊されない限り再生可能。
動きが遅い。
個名:
個数:
種属:魔属
種名:ゴースト
官職:
官位:
費用:魔力20Pt
*魔法攻撃と魔力を伴った物理攻撃以外は攻撃無効。
生物や死体、骨などに憑依する。
憑依した肉体を魔力で再生可能。
「ゴーストを1体召喚。」
<ゴーストを1体召喚しますか。>
「承認。」
「ゴースト、お前はその骨に憑依して命令在るまで動くな。」
今のところはこんな感じで良いかな?
「コア、俺とスラッチにスラリンをコアルームに転移。」
コアに命令をして安全なコアルームに戻った。
やっと初めての人間殺害です。
ようやくダンジョンマスターとしてスタートラインに立ったと思います。
次回土曜日AM7:00
投稿予定です。
(´・ω・)ノシ