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ダンジョン運営記  作者: レベル
8/39

ダンジョン拡張後③

いきなり画面が目の前に現れ、エリザベスを映し出した。



「ヂーイッヂーイッヂイッヂーイッヂイッ。(報告です、人間が4人池に向かっていると配下より連絡が有りました。)」



「エリザベス、ダンジョンに着くまでの時間と4人の特徴を調べ、大至急報告しろ。」



「ヂイッ。(はっ。)」



妖禽鷹は何してんだ?



「妖禽鷹を映し出せ。

げっ、デカイネズミ!?カピパラか?」



カピパラに似た動物の裂かれた腹の辺りから、血の滴る腸らしき臓物を引きずり出して食事中だった。



「食事中に悪いんだが、相棒は周辺監視か?」



「クエェェーックェッ。(はい、順番にご飯。)」



「そうか、ご苦労。

食事の後も頑張ってくれ。」



「クェッ。(はい。)」



数の問題だな。

半径5Km近い広大な土地の周囲監視に、たった2体は厳しいな。

今回はたまたま妖蟲大雀蜂の活躍で人間を発見出来たが、監視員の増強は急務だな。



会話もぎこちないし、エリザベスの様に名前を与えるか?



「コア、眷族同士で画面越しに会話出来るか?無理なら離れた場所で眷族同士の会話手段を示せ。」



<ウィンドウ画面の使用は眷族も可能ですが、マスターとの使用が条件です。

マスター及び眷族に、念話能力を付与が可能です。>



「コア、念話の付与条件と範囲は?」



<マスター及び眷族個々に魔力を使い付与します。

消費魔力100Ptです。

使用範囲はダンジョンエリア内限定です。>



「コア、付与した念話の使用時間は?

念話を脱着した場合の消費魔力は?

ダンジョン上空と地下は何処までが、ダンジョンエリアになる?」



<念話に時間制限は有りません。

一度付与した能力は外せません。

当ダンジョンの場合、地上から上空1Km地下1Kmがダンジョンエリア内です。>



時間制限無しは良いな。

魔力100Ptって高過ぎじゃないか?

1Kmなら飛んでる時もコアルームからも使えるな。

俺を中継して、画面同士を向かい合わせで会話させるか?

人間には意味が解らんと思うが、外の魔物相手だと会話内容が筒抜けだよな?



「ヂーイッヂーイッヂイッヂーイッヂイッ。(報告します、大人3人子供1人全員女、、1人弓を携帯、他の武器は不明、約20分程度でダンジョン進入。)」



「エリザベス、良く調べたな。

配下に上手い物を喰わせてやれ。」



「ヂイッヂーイッ。(恐悦至極に御座います、早速褒美を与えます。)」



エリザベスって難しい言葉を使うな、頭良いんだな。

護衛に弓使いで、ナイフか鉈程度の武装だろうか?

子供連れって事は、元々この辺りは危険視されて無いのか?

動物の狩り?山菜や茸狩りとかの可能性が高そうだな。



「コア、ダンジョン内全ての眷族に命令を出せるか?」



<可能です。>



「コア、スライムを除く眷族に命令だ。

まもなく人間が進入するが命令するまで、攻撃するな。」



<スライムを除く眷族に命令だ。

まもなく人間が進入するが命令するまで、攻撃するなを指示しますか>



「承認。」



全員を殺すのは不味いよな。

女だけで大樹海に入るか?普通?

樹海のまだ浅い場所とは謂え、周辺集落から山菜なんかの採取で来る場所か?

特別な理由が有るのか?

最悪は手出しせず、出て行くのを待つしかないか。



けたたましい警報音と共に、進入者の報せが頭の中に響く。

<西側から人間が4名進入しました。>



「来たか。

コア。進入者を映し出し、詳細表示。」



個名:マリー

種属:人属

種名:人間

官職:村人

官位:



*薬草・毒草・食用茸鑑定



個名:エリー

種属:人属

種名:人間

官職:村人

官位:



*薬草・毒草・食用茸鑑定

マイの母親



個名:アミ

種属:人属

種名:人間

官職:村人

官位:狩猟者



*罠設置

弓術

動物解体

動物追跡

気配隠蔽



個名:マイ

種属:人属

種名:人間

官職:村人

官位:



*エリーの娘



「見た目通りに村人か。

弓持ちが肉食獣からの護衛で、薬草かなんかの採取に大人が二人、経験か勉強の為に子供を連れて来たってとこか?」



注意深く、画面に映し出された進入者達を観察する。

全員が熊避けだろうか?腰に鈴を着けている。

報告通り、弓以外の武器類は見当たらない。

村人なら解体用のナイフと護身用の懐剣ぐらいか?持っていても。






「マイ、もう少し行くと湧水で綺麗な池が在るから、そこまで頑張れるかぃ?

休憩をそこで取るからね。」



「うん、大丈夫だよ。マリーおばちゃん。」



「ちょっと皆注意しておくれ。」



「どうしたのアミ?」



「スライムがちょっと多いんだよ。

スライム自体は、マイが何度か踏みつけて倒せる相手だから危険は少ないんだけど、スライムを食べに熊とかと出くわすかも知れないんだよ。」



「熊ってスライムを食べるの?アミお姉ちゃん。」



「ああ、この時期は冬眠で体力が落ちた熊は動きが遅いスライムを好んで食べるのさ。

覚えときな。熊避けの鈴と話し声で、熊の方が逃げるからね。」



「はーい。覚えたよ。」



「熊以外に狼なんかも子育てでスライムを良く食べるからね。」



「赤ちゃん?見てみたーい。」



「馬鹿、野生の獣はね子連れが一番危ないんだよ。

一番危ないが一番臆病になってるから、鈴の音と話し声を聴けば逃げるからね。」




「はーい。」



「マイ。この森はアミが言う様に危険が一杯在るから、よーく覚えるんだよ。

危険も在るけど、恵みも豊かだからね。」



「ポーションになる薬草でしょ?マリーおばちゃん。」



「そうだよ。池の東に特級ポーションになる薬草の群生地が在るのさ。」



「マイ。神草ソーマって名前の薬草なのよ。

これは村の秘密、村人以外には絶対に内緒よ。

他に知れたら大事な収入源が無くなっちゃうからね。」



「うん。内緒だね、お母さん。」






特級ポーション?

神草ソーマ?

かなりの貴重品みたいだな。

情報漏れを警戒して少人数で来たのか。その場所まで案内して貰おうじゃないか。



「クエェーッ。(人間が居ました。)」



突然、妖禽鷹から報告が在った。



「どの辺りだ?」



「クエェェーックエェッ。(ダンジョンの西1Kmぐらい。)」



「ご苦労だったな。他にも居るかも知れん、引き続き警戒監視を頼むぞ。」



「クエッ。(はい。)」



「村人か?立て続けに人間を見つけるとはな。

それよりも、妖禽鷹の会話力の低さが問題だな。

神草ソーマの群生地は、問題無く見つけられるだろうが、特級ポーションとやらの製法が何とか手に入らんかな?

手に入る物は、全てを手に入れたい。

何が役に立つか判らんしな。」



止まらない思考を整理しながら、村人一行の一挙手一投足を見逃すまいと画面を注視するゴブリンだった。






「ここらで休憩を兼ねて朝食にしようかね。」



池の西側に到着した村人一行は北側の岩場に回り込み、車座になって朝食を摂り始めた。



「サンドイッチ美味しいね。

綺麗な池を観ながら、ご飯食べるのってピクニックみたいで楽しいね。」



マイの無邪気な言葉を聞きながらも、周囲の気配を探るアミ。

マリーとエリーはマイの言葉に頷いて、池に目をやっていた。



樹海の中は木洩れ日が射し暗くは無いが、生い茂る樹木が暗い雰囲気を作っている。池とその周囲は湿地と岩場に囲まれ、樹海に数少ない空が良く見える明るい場所だ。

4人の顔を眺めながら、ゴブリンは呟く。



「サンドイッチかぁ、食べる必要が無い身とは謂え、旨そうに食べてるのを観ると食べたくなるな。」



<西側から人間が1名進入しました。>

警報音と共に、進入者の報せが頭の中に響く。



「妖禽鷹が報せた人間か?

コア、新たな進入者を映し出し詳細表示。」



個名:ダン

種属:人属

種名:人間

官職:商人ギルド職員

官位:諜報員



*気配隠蔽

気配察知

読唇術

尾行術

健脚術

護身体術



「商人ギルドで諜報員かぁ、諜報する為に身に付けた技能の数々。

ダンジョンに進入した事には気が付いて無さそうだ。

スパイ、産業スパイか?

商売相手の秘密や利潤の為に諜報って感じか?

神草ソーマと特級ポーションとやらの調査だろう。」



映し出されたダンいう男は、踏みつけ折れた草や枯れ葉などの上に残された村人一行の痕跡をたどり、確実に距離を詰めて行く。



「スパイなら行方不明になっても、ダンジョンと結び付けて考えずに調査対象に始末されたと考え無いか?

幸いにも単独行動みたいだしな。」



獰猛な笑みを浮かべるゴブリンだった。

気の弱い者が見れば、夢に出そうな強烈な悪意と害意に満ちた目は笑っていなかった。






村人一行は池から東に3Km余りを迷う事無く進み、周囲に樹木の無い窪地に着いた。



「さぁ、着いたよ。

ここに生えてるのがソーマだよ。

マイ、ソーマはね多年草でね、3年は育たないと特級ポーションとして役に立た無いから注意するんだよ。」



「うん、でも使えるのはどうしたら判るの?」



「良く見てご覧、葉の色に違いが在るのが判るかい?

明るい緑色と濃い緑色が在るだろう?

濃い緑色が冬を越したソーマさ。

濃い緑色の葉で茎の太さが、マイの親指より太いのが3年以上は育ったのだね。」



「親指より太いのだね、覚えたよ。マリーおばちゃん。」



「3年以上のソーマを見つけたら、丁寧に掘り起こすんだよ。

根にジャガイモみたいな実がなってるから、傷付け無い様にして実を1つ残して根と一緒に埋め戻しな。

新芽が出て来るからね。」



「葉っぱとかは捨てちゃうの?」



「葉も茎も大事な材料だから、持って帰るよ。」



「特級ポーションってどうやって作るの?」



「葉と茎を大鍋で形が無くなってドロドロに成るまで3日3晩煮込んでね、実を乾燥の後に臼で粉にしたのと混ぜ合わせて丸めて乾燥したら出来上がりだよ。」



「あっ、去年大鍋で煮る時火の番をしたよ。」



「そうね、去年は火の番をして貰ったわね。

今年はもう少し手伝ってね。」



「うん、お母さん。マイ頑張るよ。」



「さぁ、収穫するよ。アミは周囲の警戒を頼むよ。」



「ああ、任せな。」



アミは周囲を警戒し、他の村人はソーマの収穫を始めた。



「特級ポーションの製法は判ったが、当分は作れ無いな。

臼に大鍋などの道具類の用意、火を興すのも大変だ。

何よりも3年以上のソーマは採取されて、来年まで待つしか無いだろう。

来年までに道具類を集めるとして、情報漏れは不味いよな?」



窪地から風下に位置する樹上から、身を潜め監視する男を映し出す画面を観ながら、呟くゴブリン。



「エリザベス、池の東約3Kmに窪地が在るから、そこに10体羽音を消して移動させろ。

窪地の北側の樹上に男が隠れ潜んで居るから、気が付かれ無い様に接近して俺からの指示を待つ様に命令しろ。」



「ヂーイッ。(御意。)」



「後は収穫した村人達が帰るのを待つだけだか。

見付かる危険を犯さずに、村人が立ち去るまで男は動かないだろうから、捕らえるならそれからだ。」



2時間程収穫作業をしていた村人達は、来た道順を戻り集落への帰途に着いた。

夕暮れ前には着くだろう。

村人の姿が消え失せ、更に1時間近く経って男が動き出した。

樹上から降り、窪地のソーマをじっくり観察した後に1株を引き抜き、丁寧に懐に仕舞い村人と同じ道を引き返し始めた。

その背中には、気配を消した妖蟲大雀蜂達が張り付いていた。




もう一話臨時投稿

本日PM18:00です。



ではまた後程

(´・ω・)ノシ

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