ダンジョン拡張と新種
アラウネとスライムを召喚して10日が経った。
魔力は十分溜まり、最大保有量近くになった。
何処まで森をダンジョンに取り込むか早く決めないといけない。
アラウネは順調に補食を繰り返し成長した。
小さい個体で20Cm、大きいのは50Cmを超えた。
小さい個体は昆虫やトカゲなどを好く捕らえ、大きい個体はネズミや小鳥を好く捕らえている。
誘引物質に個体差が在るかも知れない。
アラウネと違い予想外だったのがスライムだ。
水中迷路に放したスライムは、プランクトンや藻などを食べて爆発的な勢いで分裂増殖をした。
僅か2日で入口部屋と水中迷路を食べ尽くす勢いだった。
餌を求めて池へと移動したスライム達の多くは、水を求めてやって来た肉食動物の腹を満たす事になった。
熊に狼、山猫、鷹などの猛禽類といった様々な肉食動物が集まり、スライムだけで無く互いに喰らいあった。
予期せぬ魔力の臨時収入をもたらした。
ダンジョンで生物が死ぬと魔物が絡ま無くても魔力が回収された。
5日目にはスライムの分裂とリポップを補食が上回り、1,000程度の個体数に落ち着いた。
肉食獣達が昼夜を問わずスライムを補食する為に、分裂とリポップに対して補食が絶妙なバランスで保たれた。
満遍なくダンジョン全体に散らばったスライム達の中で、気になる個体が居た。
ヤモリや蛙などの補食が異様な程上手い個体だった。
スライムはイメージと違いシズク型をせず、歪な円形や棒状、水溜まりの様な形と呼べない姿の個体まで居る。
軟体の特色を持つ不定形のアメーバみたいな感じだろうか?
その為に動きも遅く、補食出来る相手も限られていたが、奴は違った。
奴を観たのは偶然だった。
アラウネを観察中に偶然映り込んだ。
身体の一部を触手の様に伸ばし、ヒラヒラと動かしていた。
ズームアップして良く観察して判ったのは、触手の先端が芋虫を真似た姿形だった。
アラウネに誘引された蛙の目前で、挑発する様に芋虫モドキをヒラヒラさせていた。
蛙は飛び上がりながら、舌を伸ばして芋虫モドキに襲い掛かった。
まるでトリモチにでも張り付いた様に、口を大きく開けた蛙が触手ごとスライムの身体に飲み込まれていった。
「疑似餌で蛙を釣ったぞ。すげぇな。
身体の一部を芋虫に似せるとか芸が細かい。」
「画面に映るスライムの詳細表示。」
個名:
種属:魔属
種名:ミミックスライム
官職:
官位:
費用:魔力1Pt
*補食に特化適応した亜種。
補食した生物の特徴を再現し擬態する。
「効率良く補食する為に擬態能力を持ったんだな。
動きの鈍さを擬態で補ったんだな…」
「たった10日で進化するなんて、すげぇぞスライム。
他にも進化した奴が居るかも知れないな。」
「ダンジョン内の魔物全てを表示。」
アラウネ、スライム、ミミックスライムの他に見慣れ無い名前が在った。
「水妖蛇?すいようじゃって読むのか?」
「水妖蛇の詳細表示。」
個名:
種属:魔属
種名:水妖蛇♀
官職:
官位:
費用:魔力3Pt
*魔物を補食した為に魔力が変質し魔物化。
神経麻痺の毒を持つ。
「スライムを食べた影響で魔物になったのか。
スライムを食べに来た熊とか狼も魔物に成るかも知れないな。」
「水妖蛇を映し出せ。」
「どこ?池の水面かな?
居ないじゃん。」
池の水面に陽射しが注ぎ、そよ風で小さな波が起っていた。
目を凝らすと波を遮り、何かが水面に浮いている。
「えっ?これが水妖蛇なの?」
スライムの性質を受け継いだのか無色で水面に溶け込み見つけ辛い。
こいつなら奇襲で毒を喰らわせる事が簡単じゃ無いか?
数さえ揃えば、樹上から落としたり、水中迷路の防衛など使い途は多いな。
「水妖蛇♂5体、♀4体池に召喚。」
<水妖蛇♂5体、♀4体池に召喚しますか>
「承認。」
「水妖蛇に命令、各♂♀番になり産卵に励め。池を中心に生活しろ。」
<水妖蛇に命令、各♂♀番になり産卵に励め。池を中心に生活しろを指示しますか>
「承認。」
「ミミックスライムに命令、アラウネの周辺で補食をしろ。」
<ミミックスライムに命令、アラウネの周辺で補食をしろを指示しますか>
「承認。」
水妖蛇の数が増えれば、十分な戦力に成るだろう。
ミミックスライムは分裂増殖と擬態能力に期待だな。
ダンジョンの拡大を何処までにするか?
ある程度池から離れた場所までをダンジョン化しないと進入者に対して対応が難しい。
予想外にスライムによる魔力補給速度が早いから、今在る魔力で最大まで拡大しても大丈夫だろう。
「池を中心に今在る魔力で、円形に最大現までダンジョン化。」
<池を中心に今在る魔力で、円形に最大現までダンジョン化をしますか>
「承認。」
池を中心に半径5Km程が、ダンジョンに取り込まれた。
<ダンジョン内に多数の生命反応>
新たに取り込んだ領域の警戒が頭の中に響き渡る。
「新たに取り込んだ領域の生物情報一覧表示。」
羆、狼、虎、豹、山猫、猿、大鹿、鹿、大鷹、野兎、狐、鼬、猪、野鼠、モグラ、リス、梟、……多種多様な生物がいた。
食物連鎖の下層に位置する、昆虫類とネズミ類や兎などが多数居た。
実が成る樹木が多数生えて居るから、多様性に富んだ生態系が保たれているのだろう。
巣を持ち定住するタイプと広い縄張りを移動するタイプの動物が居るな。
「昆虫類、植物、菌類、微生物類は進入者規定から削除。
定住タイプの動物も進入者規定から削除。」
これで当面は良いだろう。
池の岩場辺りに野鼠の大きな集団が居るな。
大家族か群れだろうな。
「水妖蛇に追加命令。池の北側の岩場に近い野鼠の巣で食事をして産卵に備えろ。
♀が優先だ」
<水妖蛇に追加命令。池の北側の岩場に近い野鼠の巣で食事をして産卵に備えろ。
♀が優先だを指示しますか>
「承認。」
これで水妖蛇の成長が早まるな。
スライムには補食とコアルームの立ち入り禁止以外は命令して無いから、勝手に森を徘徊するだろうな。
「おっ!?大雀蜂も居る。
18,000匹って巣としてはデカイのか?」
「大雀蜂の巣を映し出せ。」
「おおっ!?
思ったよりデカイ巣だ。
太い枝の下に巣が在る。
これなら上手く落とす事が出来れば、アナフ何とかで人間を殺せるかも知れないな。
まあ、死なないまでもかなり有効なダメージを与えそうだ。」
他にも役に立つ物は無いかと、食い入る様にモニター画面を見つめてアレコレと思案するゴブリンだった。
10.18(日)AM7:00
次章投稿予定です
本日台風の影響次第で、臨時投稿するかも知れません。
では(´・ω・)ノシ