準備②
キュー太郎とオー次郎の二人は、調査を終え王都に帰還する調査団と共に再び潜入調査に向かった。 今度は連絡係を着けたから、特に情報が無くとも5日に1度定期報告が入る。 有用な情報が入手できれば良いが最悪は魔物とバレ無ければ良いんだ。 他にも情報入手手段が欲しいが中々難しい。
調査団はコレと言った成果を出せずに、樹海開拓の前線基地としてアルト村を整備して行った。 鳩と馬を使った通信網を領都と王都に設置して情報入手手段を構築した事から、ゴブリンの氾濫にダンジョンが関与している可能性を未だ捨てて無い様だ。
樹海開拓といってもアルト村を始めとした周辺の農村や耕作地の復興の為、木材の伐採がメインだ。 多くの樵が入植し簡易的なベースキャンプ地が出来、木材をアルト村に運搬し生活物資を搬入する事で利に聡い商人が開拓地に集まり出して居た。
んー!大したものだ。樵と警備兵相手の雑貨の行商から始まり、今じゃ数軒の飲み屋に娼館まで短期でここまでに成るとはね。 潤沢な予算を使って人を集め、そのお溢れに与ろうと更に人が集まる。 人が集まれば、金が動いて更に人が集まり発展して行く。 そこまで見込んで動いてたんだろうな、調査団団長さんは。
お陰で池の周辺まで商売の種を探しに行商人やら、山師みたいのがウロチョロして目障りだ。
行商人を地下に転移しゴーストに憑依させて、欲しかったゴブリンへの苗床となる人間の女なんかを入手するなんて如何だろうか?
完全憑依には時間が掛かり異変として察知されるかも、商人なら対価を与えれば取引きとして引き込め無いか? 魔結晶は人間社会で高価だと云う、魔結晶は大小様々に大量に在る。 監視は必要だが、いけるんじゃね?
良し!ミミックスライムを変身させ交渉する、極寒地で大型化したゴブリン2匹を脅しとし名付きゴーストを監視用に後は魔結晶を用意して目ぼしい商人を探そう。
あー遅かった。 儲かりそうだと聞いて樹海開拓地に来てみたが商売に成りそう物は既に誰かしら手を出して居た。 せめて売り物をと、樹海に足を運んでみたが無駄足だったな。 水場で休憩したら、ベースキャンプに帰るか。
?? えっ!
「ようこそ」
周りが輝いて気付けば目の前の男に声を掛けられた。
「誰だ?」
「私はこの地の主」
「あるじ?」
なんだコイツ、さっきまで水場に居たのに見知らぬ部屋でいきなり訳が分からん。 今気が付いたがコイツの背後に見上げるほどの巨大な怪物が2匹も居やがる。
「ひぃ!」
「そう怯え無くて良い、君がおかしな真似をしなければ何もしない」
俺の倍くらいの巨体で毛深く緑の顔、噂に聞くオーガの一種か? 俺が聞いたのは人よりも頭一つ大きく怪力で人が好物で、倒すには経験豊富な冒険者チームが必要って事だ。 こんなデカイ奴が2匹なんて、あっという間に喰われちまう。
「少し話がしたい、君は商人のようだが金の為ならなんだってする覚悟は有るかい?」
「金持ちになりたいから商人になった、金持ちになれるならなんだってする」
「良い心掛けだ、この魔結晶で君と取引がしたい」
デ、デカイ このデカさなら、金貨数十枚下手したら百枚になるかもしれん。
「な、何が欲しい?」
「雌の人間、亜人でも構わないよ」
「女?」
「そうだね、出産出来る程度の年齢かな多少欠けてても大丈夫だよ」
「出産に欠け?」
「そう、若すぎても老いてても駄目。 手足の一本くらいは無くても大丈夫かな?」
「何に使うんだ?」
「背後に居る子達の餌だよ」
「ひ、人を喰うのか?」
「そうだよ。 この子達は若い雌が好きでねー定期的に手に入れたいね」
「オーガの餌に人が欲しいなんて、アンタ何考えるんだ」
「ん? そんなに理解し難いかい? 金や権力の有る人間は奴隷を玩具にして欲望を満たして居るだろう? ペットの餌として使うのと大して変わらないだろう? 対価として魔結晶が小さいかい? それとも足りない? そこは相談に応じるよ」
た、たしかに奴隷商は人を売買するし、あの大きさの魔結晶なら若いだけの女なら10人は買える。 容姿が悪かったり、身体に欠損や傷が有れば捨て値でもっと買える。
「器量や傷は大丈夫なのか?」
「人間の美醜にこの子達は感心が無いね。 出産出来る程度に脂の乗った食べ応え有る量だね必要なのは」
「例えば、脚が無くても2人とかで1人とかは大丈夫なのか?」
「まあ、現物を見ないとなんとも言えないが大丈夫かな? 病気持ちなんかの不健康や痩せ細ったのは駄目だよー」
そうか、痩せ細ったのや病気になって処分するようなのを買い取って、治療や食事を与えれば更に儲かりそうだ。
「一年程前に自分で捕まえ様と試したけど上手くいかなくてねー だから君が取引してくれると非常に助かるよ」
「一年前に自分で?」
「そお、頭の悪いゴブリンを使ったら孕ませたり、摘み食いしたりでねー」
は? 一年前のゴブリンの氾濫ってコイツの仕業なのか? そ、そんな事が出来るのか?
「ここ迄話を聞いて断る事は出来ないよ。 君もウスウスは気が付いたみたいだから、自己紹介をしよう。 私はダンジョンマスター、死と災いを齎らす者」




