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ダンジョン運営記  作者: レベル
33/39

樹海からの厄災④

「案外呆気無かったな。」



オルター城での攻防は、共食いが始まった後、討って出た重装歩兵や重装備騎馬兵に駆逐され、周辺の集落や町へ被害確認と生存者捜索が開始されていた。



「団長ー

被害状況の中間報告ですがねぇ…」



「ん?歯切れが悪いな

何か気になる報告が有るのか?」



「奴等は大樹海から街道に出て、一直線にオルター城に向かった模様。

大樹海から街道迄と街道沿いの集落や町は壊滅的な状況ですね。」



「大まかな被害者数は判るか?

どれだけの数に成る?」



「進路途中の集落や町の徴税台帳から予想するに、3,000余名に上るかと思われます。」



「生存者は?」



「それなんですが…

現在数名発見されています。

生命の危機に在る者は、居ません。」



「それは僥倖(ぎょうこう)だな。」



「否、僥倖なんかじゃ有りませんよ。

最悪な不幸ですよ。」



「命さえ助かれば、僥倖そのものだろうが?」



「確かに命は助かってますが、心が死んでます。

全員が妊娠をしたんですよ。」



「奴等の子を…生き地獄だな。

医師に厳命だ。

全てを堕胎させよ。」



あぁ、コイツは堕胎命令を予想してたんだな。



「……」

コクリッ



陽気な口調が常の部下は、眉をしかめながら頷いた。



3,000名余りで済んで良かった。

下手をすれば国家存亡も有り得たぞ。



「襲撃に遭った者達の遺骸は、教会にて荼毘(だび)()し丁重に葬れ。」



「はい、団長。」



「家畜等は、奴等の死体と共に焼却し、骨は細かく砕き聖水で浄化した後、祠を築き祀るのだ。」



「家畜はともかく、ゴブリンをそこまで丁寧に扱う必要が有るんですか?」



「聞いた事も無い様な大発生だぞ。

不死者・アンデットとして蘇るかも知れなんからな。」



「念には念をって事ですね、了解しました。って言いたいとこですがね、奴等を燃やすにドンだけ薪や炭が要ると思ってんですか?」



「城の備蓄を全て放出しろ。

足らなければ、樹海へ調査を兼ねた伐採隊を編成する。」



「樵達を雇い入れる予算なんて有るんですか?」



「予算の心配は要らんぞ。

オルター閣下に、今回の一件の全権を頂戴したからな。」



「じゃあ金勘定の苦労は筆頭政務官殿のお仕事って事ですね。」


「とりあえず樹海への調査と伐採は後回しだ。

まずは、生存者と生き残りのゴブリンが居ないか徹底探索だ。」



「はい、団長。」





その後、徹底調査の結果として不死者の一種アンデットスケルトンが数体発見された。



人型スケルトンに獣型スケルトンの混成から、集落の村人と家畜と推測された。



通常死体や遺骨がアンデット化するには、濃い魔素が漂う特殊な環境か邪禁術による反魂術の使用だが、そういった痕跡が一切発見出来無かった。



ゴブリンの異常な大発生に、スケルトンの発生…

異常なんてもんじゃ無い。

樹海に何かしらの手懸かりが有る筈だ。

樵達を連れての調査は危険過ぎるな。

薪や炭等の燃料は他領からの交易で用意して、精鋭での調査が必要だな。

樹海に詳しい冒険者や狩人も雇う必要があるな。



エヴァンス団長は、樹海への調査隊の編成について、いつまでも考えていた。



しかし、筆頭政務官にはゴブリン大発生に伴う臨時支出を極力抑え、伯爵家の台所事情への影響を抑える事に腐心した。



「交易で薪や炭を用意するだと?

いったい幾ら掛かると思っとるんだ。

疫病や土壌汚染を考え焼却すると謂う考えには、儂も賛成じゃ。」



「はぁ、しかし…」



「骨を砕き聖水で浄化した後、祠に祀るのも理解出来る。

スケルトンが出たのじゃ、エヴァンス卿が慎重を期すのも当然じゃ。」



筆頭政務官に騎士団団長からの指示を伝えに来た騎士は、余りの剣幕に右往左往していた。



「交易での補充は絶対に認めん!

樵達には、人頭税と租税の一年間免除を条件に伐採をさせる。

炭焼費用と薪の運搬費用に免税分は、余剰伐採し売却益で捻出する。」



壊滅した集落からの税収減、集落と農地の復興費用、教会への喜捨…考えただけで幾ら掛かるやら…



職務に熱心な筆頭政務官の独断に因り、樹海への伐採隊が帰って来てからエヴァンスの耳に入るのだった。



「何を勝手な事してんだハゲ爺め。」



「落ち着いて下さいって、団長~

あのハ、じゃなかった、筆頭政務官殿も財政を考えての事でしょ?」



「そんな事は百も承知だ。

樹海に今回の異変の手懸かりが有った筈なんだ。

それが、ハゲ爺のお蔭で滅茶苦茶だ。」



「樵達の話じゃ、蝗の大群が湧いた様な荒れた状態で、スライムが多かったぐらいってらしいですよ。」



「だから、樹海に詳しい冒険者や狩人に調査させたかったんだよ。

異常が有るかも知れないと調査するのと、伐採のついでに観るんじゃ全く違うだろうが?」



「そりゃ、そうっスけど…

今すぐ調査隊を編成しますか?」



「どれだけの人数が樹海に入ったか知ってるのか?200人近い人間が手懸かりも何も滅茶苦茶にしてるよ。」





職務に熱心な筆頭政務官のお蔭で、ダンジョン発見の危機を免れたマスターだった。




前回投稿から随分ご無沙汰しました。



急激な生活環境変化が有りましたが、落ち着いたので投稿再開します。



以前の様な毎週投稿は、暫く無理なので隔週を目標に投稿したいと思います。



m(_ _)m

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