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ダンジョン運営記  作者: レベル
30/39

樹海からの厄災

ノルン王国オルター伯爵領、王国の基盤と成る豊かな穀倉地帯。


北の大霊峰を始めとする山岳地域から、幾つもの水源が集まり蛇行し、大樹海を流れ 遥か南の大河に注ぐ。


支流は海へと向かい、春に雪解けで増水し氾濫する。

氾濫が大樹海の肥沃な土を運ぶ。

肥沃な大地は、多くの実りを齎す大樹海の恵み。


大樹海からは、恵みだけで無く災いまでもやって来る。

冬の積雪と共に、飢えた獣や魔物が集落を襲う。

多くは家畜の被害で、数年に1度人に害が在る程度だった。

以前は毎年数人、多い年は数十人、否、集落そのものが無くなる被害。



60年前先々代オルター伯爵が、この地を治める様に成り始めてから徐々に被害が減っていた。


高額な討伐褒賞制度、領民以外も対象に年齢性別国籍人種階級犯罪歴に及ぶ、全て不問の他に類を見ない制度に因って被害は減った。


討伐対象の特徴的な身体部位の持ち込みで、大金が得られる人気の褒賞制度。


住人は罠等の比較的安全な討伐を、力の在る者や一攫千金を狙う者は、進んで討伐を樹海に求めた。


画期的な討伐褒賞制度は、後のギルド設立に受け継がれ、討伐を生業とする者が数多く誕生した。


年が明け春になると、討伐者は南の迷宮都市に戻り、晩秋の頃に伯爵領に出稼ぎにやって来る。



初夏、冬場の討伐者に因る賑わいも消え、日々農作業に勤しむ領民だけに成った集落アルト村。


樹海ダンジョンから最も近い集落。春先に初めて樹海ダンジョンに現れた、神草ソーマ採取の一行が住む集落。


樹海ダンジョンのゴーストに憑依され、行方不明に成った若夫婦の住んで居た集落。



「今冬は魔物や獣に因る被害も無く、天候も穏やかで作物も順調に育ち、豊作が期待出来そうだな。」



「うん、今年は特級ポーションの出来も良かったし、秋の収穫祭は盛大に出来そうだね。」



「そろそろ日も暮れる、家に帰ろう。」



「はーい、お腹も空いたしね。」



畑を見て回り、家路を急ぐ村長とその末娘は迫り来る厄災に全く気が付く事は無かった。


夕飯を済ませ、就寝前の団欒の一時に異変は起こった。



カタ カタ カタ カタ


家具や扉が細かく揺れて鳴る。


「地震か!」


カタ カタ カタ カタ


「長いな、大した揺れじゃ無いが遠くで、大きな被害が出るかも知れんな。」



「お父さん、あした町の辺境軍にでも聞いて来ようか?」



「いや、ガスレン夫婦の人頭税の事で役場に行くから、ついでに聞いて来よう。」



「はーい、でもガスレンさん達どうして急に居なく成ったんだろう?」



「さぁな、理由は判らんが何やら悩んでおった様じゃ、居なくなる2、3日前から様子がおかしかったからな。それにしても長い地震だな?」



ゴブリン達の群れは、風に乗り微かに匂う家畜と人間に向かって突進していた。



樹海ダンジョンのマスターは、妖禽梟のホーホーと感覚共有をし上空からゴブリンの群れを監視して居た。



「すげぇ、勢いだな。匂いでも捉えたかな、迷わず一直線に村に向かっとるな。」



ドドドドッ ドドドドッッ


地響きと共に、雄叫びが聞こえる。


「グギャッ、グギャッ、ギャッーッ」(獲物、獲物、エーサーッ)


集落を囲む柵を打ち壊し、雪崩れ込むゴブリン達。

集落の端に位置する家畜小屋に、殺到するゴブリンは手にした棒、または禍々しい爪や牙を使い襲い掛かる。

噛み付き、手で毟り取り喰らう。唯ひたすら喰らう。


狂った様に喰らう。


喰らう。


喰らう。


喰らう。


喰らう。


豚、ヤギ、ロバ、牛、馬、交配可能な家畜は喰われながら、犯された。


家畜の悲鳴、ゴブリンの雄叫び、咀嚼する音、飛び散る血飛沫、濃い血臭、家畜臭、糞尿臭、ゴブリンの体液臭。


どれもが更に興奮を誘って、更に狂う。



人の家屋でも凄惨を極めた状況が、そこかしこで見られた。


生きながらに喰われる者。


犯されながら、目の前で幼子を喰われる母親。


泣き叫び犯される娘を前に、生きながら喰われる父親。


悲鳴。


怨嗟の叫び。


絶望の叫び。


呪詛の叫び。


助命懇願の叫び。


愛しき者の名を呼ぶ叫び。


この世に現れた地獄絵図。


阿鼻叫喚の地獄絵図。










「次の村に行ったか。生き延びた女達は気が触れた奴しか居ないなぁ。まぁ、面白い見世物だったわ。」



樹海ダンジョンのマスターは、笑みを浮かべ感覚共有を解除した。



「骸骨傀儡よ、傀儡人形を連れ生き延びた人間を拐って来い!」



(承知しました、造物主様)



「キーキー、骸骨傀儡を村へ案内しろ!」



(はい、マスター)



混乱の中生き残りを拐ってもバレないだろ?監視警戒をしっかりすりゃ問題無いだろ。






真夜中に骸骨傀儡達が、7人の生き残りを連れ帰って来た。全員女だった。

どの女も瞳に力強さが無く、まるで死んだ魚の様だった。

人間以外にゴブリンや獣の骸骨に運ばれても、騒がずにされるがままで心ここに在らずだった。



「あいつって狩人の女じゃね?うん、間違い無い。他に知った顔は無いから、あの時見た他のは喰われちゃったかな?」



あいつなら特級ポーションの実物を見たこと有るよな?どころか在る場所を知っとるんじゃ無いか?



「ゴースト、この女に完全憑依しろ!」


画面を指差し、ゴーストに指示して女の元に転移させた。



上手くいけば特級ポーションが手に入るかも、最悪でも正確な製法ぐらいは判るだろ?



5人の女をカムイに命じ殺らせた後始末に、妖禽梟、妖禽鷹、妖獣狼、妖獣羆、妖蟲大雀蜂達皆で綺麗な骸骨にさせた。


残った女をミミックスライムが、踊り食いをする間に完全憑依が終わっていた。



新たに6体の骸骨傀儡を創り、憑依ゴーストの護衛と骸骨人形の素体収拾と制作を命じた。


憑依ゴーストには、特級ポーションの探索回収を命じた。


製法も回収後にロデムに踊り食いさせて、記憶を奪えば完璧だな。



折角だし骸骨傀儡と傀儡人形制作で、文字通り骨の髄までしゃぶらせて貰う。


傀儡人形の骸骨達には、ゴブリン達の後を追いかけ一緒に暴れて貰う積もりだ。



混乱が長引けば、樹海に手を出す余裕なんか無くなるだろう。




次回投稿土曜日予定です

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