招かれざる訪問者④
俯いて考え込んでいたゴブリンのダンジョンマスターは、不意に笑みを浮かべ呟いた。
「野生の魔物なら、誰に気兼ねする事無く殺れる。行方不明も問題に成らない程にゴブリン達は樹海での食物連鎖の下層に居るのが再確認出来たな。」
「俺自身所詮はゴブリン、雑魚の代名詞だ。
しかし、俺には多少の知恵とダンジョンが在る。
俺を含めた眷族達の能力の底上げ、ゴーストを憑依させたゴブリンを使っての模擬戦闘で、眷族同士の連携を重点に置いた訓練でも始めてみるか?
情報が手に入る迄の時間潰しにも成るしな。」
ゴーストが憑依したビーストゴブリン3体をダンジョンに放ち、眷族達に模擬戦闘の説明と内容を指示した。俺自身は、地下に戦闘訓練出来るだけの広さを持つ部屋を創り、ゴブリン2体と戦闘訓練をする事にした。
悪臭を放つ2体に、入口部屋で身体を洗い身綺麗にする様に命じ、俺は訓練部屋でストレッチをしながら準備をして待っていた。
「遅い、遅過ぎる。」
苛立ちながら入口部屋を画面に映し出し、余りに戻りが遅いゴブリン達を探した。
そこには入口部屋の水面に俯せに浮かぶゴブリンと、沈んだゴブリンの変わり果てた姿が映し出された。
「はぁ?溺れたのか?」
「………、例え死んでもゴーストなら、死骸をグールやゾンビとして操れるだろう?一体何が起こったんだ?」
「コア、入口部屋で何が起こった?ゴーストはどうなってる?」
<瘴気による影響でゴブリンが麻痺して、溺死しました。
ゴーストは健在ですが、突然溺死したゴブリンに混乱して居る模様>
「魔物には瘴気は無害だと思ったが違うのか?」
<コアルームから溢れ漏れた魔力と瘴気が混ざり合い、ダンジョンマスターと眷族以外には、他の生物同様に有害な物に変質しました>
「魔力による影響かぁ。変質した瘴気の濃度が上がれば魔物の侵入も防げそうだな。」
「グールやゾンビに成ったら、元々の身体能力が低下するよな?ミミックスライムに喰わせて擬態させて、訓練相手にするか?」
ゴーストに憑依を解かせ、入口部屋に待機させた。瘴気漂う場所ならゴーストにも居心地が良さそうって考えと、変質した瘴気の影響で亜種に変化しないだろうかとの期待も込めてだ。
ミミックスライム2体にゴブリンの死骸をそれぞれに与え、擬態出来る様に成るのを待つ事にした。
次回日曜日AM7:00投稿予定です




