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ダンジョン運営記  作者: レベル
17/39

招かれざる訪問者

ハッハッハッハッ



大樹海を妖獣狼のグレイが疾走していた。



(ハク、南に向かっているぞ)



(判ったわ、任せて)


「ワォォーン」

(南に向かったわよ)



「ワォーン」

(了解しました)



グレイに追われ、鹿が焦って逃げ惑っていた。

念話を使いグレイが状況を伝えると、ハクは遠吠えで配下に指示を出し、風下の池に囲い込み鹿を誘導する。



「ワォォーン」

(池に向かってます)



「ワォーン」

(了解)

「ワォーン」

(了解)

「ワォーン」

(任せて)



配下や長兄狼の返答の遠吠えが樹海ダンジョンに木霊(こだま)する。



鹿は混乱していた。逃げる先に狼が現れては向きを変え逃げて居たが、何時の間にか囲まれ池に向かって誘導されていた。



「念話と遠吠えを上手く使うなぁ。」



コアルームで幾つか展開した画面を観ながら、ゴブリンは呟いた。



池まで逃げた鹿は、湿地の泥濘(ぬかるみ)に脚を取られ動きが鈍ると、一斉に襲い掛かられ呆気無く倒された。



「群れでの連携も上手く機能してるが、妖獣狼達の持久力には驚きだなぁ。」



ダンジョンエリアの外から2時間以上鹿を追い回しての狩りだ。

長い時は1昼夜追い回す事も在る。



「グレイ、骨は使うから傷つけるなよ。」



(はい、気を付けます)



グレイ達の食事を観ながらゴブリンは、手のひらに乗せた米粒程の鈍く光る石の様な物を弄んで居た。



キュー太郎とオー次郎を王都に送り出して20日を過ぎた頃、気が付くと砂粒程の魔力結晶が幾つかコアルームに出来ていた。

数日経つと米粒程の大きさに成長していた。



「この小さな魔力結晶に3,000Pt以上の魔力かぁ?

確か人間を殺した時が2,400Ptだったよなぁ。

人間世界では高い価値が有るって事だが、何かに使えないかな?」



妖獣羆のカムイを護衛に、ちび狼達とのダンジョン散策と筋トレをして無作為に時間を潰して居たが、魔力結晶が出来てからは魔力結晶の使い途に悩んで居た。



「スライムに与えてみるか?

この大きさに成る迄に1ヵ月近い時間が掛かっているしなぁ。

魔力結晶もそうだが魔力自体が良く判らん。

情報が無いのに試すのもどうかなぁ。」



現状のダンジョンは時々スライムを捕食する山猫などの肉食獣や水を求めて鹿などの草食獣が侵入するだけで、至って平穏だった。

話し相手と成る知能の高い眷属が増え、特に変化も無くゴブリンは現状に満足して居た。



「やっぱり情報不足だよなぁ。

キュー太郎達が手に入れる情報を待つのは良いが、何時戻るか判らんしなぁ。

ダンジョン周辺の集落からなら、ゴーストの憑依で人は簡単に手に入るが、大した情報は集まらんだろうしなぁ。」



現状の情報不足と必要な情報の収集の困難さに頭を悩ますゴブリンに、妖禽鷹のソフバンから突然報告が入る。



(マスター、報告します。

ダンジョンの東の方角から5体の魔物が、真っ直ぐに向かって来ます)



「何?大樹海の奥から魔物だってぇ!

どんな奴等だ?距離は解るか?」



(約5Km程東からゆっくりと近づいています。姿はマスターに良く似た姿をしています)



「池の東側に居るコモンオーク達よ、直に魔物が侵入する。殺さずに捕らえて拘束しろ!

グレイ、お前達は餌を巣に持ち帰り食事を済ませ待機しろ!」



(承知しました)



「カムイは池の東側でコモンオークが手に余る相手だった時に備えて待機だ!」



(はい、マスター)



「エリザベス、妖蟲大雀蜂100体を1組にして5組をコモンオークのサポートに派遣しろ!」



(はっ、御意に我が主)



「南海は、東側以外の周囲を警戒監視と念の為に、こちらに向かって居る魔物達の後方100Km程度迄を手の空いた配下に偵察させろ!」



(はい、マスター)



「ソフバン、感覚共有をするぞ。俺に似た姿ってのを直接確認する。」



(はい、マスター)



「スラリンとスラッチは感覚共有中の警護をしろ!」



監視体制と防衛体制を整えると、妖禽鷹と感覚共有してゴブリンに似た姿と謂う魔物を観に向かわせた。



あっという間に魔物達の上空に到着したが、生い茂る樹木が邪魔ではっきりと確認出来無い。



「確かに頭髪が無くて緑色の体色とか俺に似とるわ。ゴブリンかも知れんな。真っ直ぐにダンジョンに向かっとるし、侵入した時点で詳しく確認するか。

ソフバン、戻って後方の偵察が戻ったら直ぐに報告しろ!

感覚共有を解除するぞ。」



(はい、マスター)



「ゴブリンっぽい魔物が5体、武器らしき物も持っとったなぁ。このダンジョンを目指して歩いとったのは間違い無さそうだ…」



「目的は何だ?調査や偵察か?

野生のゴブリンなら問題は無い。

捕まえるのも難しく無いだろうし、会話位は出来るだろうから拷問でもして調べりゃ良い。

最悪はゴーストに完全憑依させりゃ良いしな。

問題は他のダンジョンからの偵察だった場合だよなぁ。」



「どのみち捕まえて、情報を聞き出さない事には始まらないよな。

悩んでも仕方無いか

成るようにしか成らんな」



半ば諦めて気持ちを切り替え、魔物達の到着を待つゴブリンだった。




次回土曜日AM7:00投稿予定




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