表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン運営記  作者: レベル
15/39

潜入調査③

単純な力の暴威、圧倒的な質量の鉄塊が風を切り振り回される。

技や(ことわり)に裏打ちされた美技を繰り出さす突撃兵も居たが、サイクプロスの暴威は止まらない。寧ろ足元の虫けらに傷つけられた怒りからか、より激しく鉄塊を振り回す。



想像出来るだろうか、怒り狂う巨大な猛獣に刀1本、槍1本で人が立ち向かう事の無力さを……

眼の前に立つだけで恐怖に脚が震え、歯がガチガチ鳴るのだ。

心の奥底から沸き上がる止める事が出来無い感情、怖、恐、死、逃、様々な負の感情に思考が停まる。

身体に染み着いた技を無意識に放つ、息するがごとく自然に放つ。

肉を切り、穿(うが)ち、(えぐ)るが、幾らも効いた様子が無い。



追い討ちの様に鉄塊の風切り音が耳に届く、ゴウッ、ブンッ、音で身体が硬直する。

重装歩兵の盾や甲冑が、役に立たなかった様子は脳裏に焼き付いている。



脛当てと籠手程度の簡易装備しか無い突撃兵なら、原形を留める事すら難しいだろう。

事実、突撃兵の多くは物言わぬ肉塊になっていた。



正騎士は激しく動揺しながらも、弓射手兵にサイクプロスの集中総射を命じる。

顔に向かって放たれた矢を嫌い、サイクプロスの脚が停まる。

後衛の重装歩兵がケンタウルスの射線上に立ち塞がり、歩兵が人だった肉塊や甲冑だった物を回収する。



「武器や装備はそのまま捨て置け!

死体だけを回収するんだ!

順次通路へ退去しろ!

正騎士と突撃兵は通路で殿(しんがり)をガスレン小隊と交代だ!」



死体の再利用で魔物化を警戒して回収するのか?

死者への敬意から回収するのか?



「死者には申し訳無いが、死体を回収するのは危険が大き過ぎます。」



「死体を放置すれば、ゾンビやスケルトンとして襲って来るんだ。

持ち帰り葬って遣らねば、浮かばれんだろう?ガスレン。」



「はい、判りました。」



死体の再利用を知って居たのか。

ダンジョンと謂うよりは、魔物について理解が深いな。



一旦通路に出て、死体の搬出と新たな物資の搬入が始まった。

物資には、瓶に入った菜種油や機械式弓矢が在った。



機械式弓矢とはクロスボウと呼ばれて居たが、ゴブリンのダンジョンマスターが目にすれば(ど・おおゆみ)と呼んだで在ろう物だった。

通常の弓矢に比べ、連射性は格段に劣るが射程距離と貫通力が比べ物に成ら無い程優れていた。

脚力で弦を張る為に時間が掛かり過ぎるが、100を超える数から歩兵が準備をし、射手兵が射つのだろうと想像出来る。

ケンタウルスを牽制し、その貫通力がサイクプロスにも効果が在る事を期待させる。



菜種油は、火矢に使うのだろうか?

歩兵も50名程増員されている。正騎士達は歩兵や射手兵に、何やらクロスボウの取り扱いと陣形の説明をしている。



さあ、お手並み拝見と行こうか。



重装歩兵を先頭に再び広場に重装歩兵が扇型に展開する。



ケンタウルスが距離を詰め、先程と同じ様に通常の弓矢が届か無い位置に陣取る。

しかし弩から放たれた矢は、馬の半身や人の半身に深々と突き刺さる。



「グエッ」「ギヤーッ」



人語を発するのか?

人と変わらぬ悲鳴を上げて、数体が地に伏せた。



「ギャッギャッ!

グギャッギャッギャッグギャッギャッ!」

(下がれ!

サイクプロス、死体を盾にして突撃しろ!)



ケンタウルスの1体が指示を出した。

周りの人間には意味が解ら無い様だが、ゴーストの俺には意味が解る。

周りに注意を促す事は出来無い。

魔物の言語が解る事がバレるのは不味いからな。俺1人サイクプロスの突撃に備えよう。



ケンタウルスが後退した後にサイクプロスがやって来た。

1トンは有りそうなケンタウルスの死体を無造作に片手で持上げ、盾代わりに翳して近寄って来る。



「今だ!

油壺を投げろ!」



サイクプロスの前に油壺が投げ付けられ、菜種油が撒き散らされた。



サイクプロスは菜種油で滑り、勢い良く脚を宙に放り出して床に叩きつけられた。

地響きを上げてサイクプロスが倒れ込む。後頭部から落ち、頚を在らぬ方向に曲げ絶命する者迄居た。



「射手兵!サイクプロスを射てっ!」



菜種油で立ち上がれ無いサイクプロスは、生きた(まと)でしか無かった。



磨かれた大理石の様な床に撒いた油は、単純だが絶大な効果を発して居た。

サイクプロスを駆逐すると、砂を床に撒きケンタウルスとの距離を詰めて追撃を始めた。



広場に再突入してから、僅かな時間で生きている魔物は消えた。

奥に見えた通路の先には階段が在り、次の階層調査に準備が進められた。



(地形と謂うのか?状況に応じた対応策の手際が良過ぎるぞ?迷宮型ダンジョンに対して経験豊富なのか?)



キュー太郎の疑問を他所に、下層への調査が始まろうとしていた。




リアルの状況が落ち着きました。

投稿再開します。





次回土曜日AM7:00投稿予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ