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ダンジョン運営記  作者: レベル
14/39

潜入調査②

目的のダンジョンは、樹海の外周から僅か500m程進んだ場所に在った。樹海に有り得ない構造物、大人が5人並んで余裕で歩ける幅の階段が地中に続くのが見える。20段程先は平坦で、壁は右に折れ見えない。踊り場で階段が更に続くのか、通路になっているのか降りてみなければ解らない。



樹海の外周から1Km程離れた場所に、なだらかな丘陵が在り其処を宿営地兼ダンジョン攻略前線基地とした。



派兵された部隊は総勢2,500名に及ぶが、これは第1陣に過ぎ無い。陣容は、

正騎士300名

騎馬兵100名

重装歩兵600名

弓射手兵400名

突撃兵200名

歩兵600名

輜重兵200名

衛生兵100名



基本的な戦術は、壁役の重装歩兵が先ず敵に当たり、後方から弓の一斉掃射で重装歩兵ごと射る。間を置かずに突撃兵と歩兵が雪崩れ込み敵を討つ。場合によっては正騎士も突撃に加わる。



突撃兵は、剣術や槍術などの武芸者で構成され個々の武力では正騎士を上回る者も少なくない。

実力は有るが、身分や家柄の為に正騎士を断念した者達が武功を挙げ褒美として正騎士の地位を狙っての志願だ。



魔法兵は、実戦で使える威力を持つ者が少ないそうで序盤戦に出る事は先ず有り得無い。魔物の戦力やダンジョン階層などが、明らかに成って初めて投入される。

但し、衛生兵には数十人の回復系魔法の使い手が居る。






何とか第1派兵隊に選ばれたな。大雑把な戦術と武装ならマスターに報告出来るぞ。

魔法兵については、殆んど解らなかった。情報が統制されてる様だし諦める。ある程度の情報は、オー次郎が入手したそうだ。無理をして、目を着けられても困るしな。



後は魔物の実力を試し、適当に負傷して除隊だ。腕の健でも切断すれば良いだろう。最終的にスケルトンにするからな、骨さえ無事なら問題無い。



「ガスレン小隊長、総司令がお呼びです。司令部テントにお越し下さい。」



「はい。」



敬礼をし、伝令に続いて司令部テントに向かって歩きだした。



司令部での話しは、ダンジョン攻略の手始めに重装歩兵を中心に階層調査を命じられた。



重装歩兵小隊60名を中心に、

前衛 重装歩兵10名

突撃兵10名

正騎士2名


中衛 重装歩兵10名

弓射手兵20名

正騎士2名


後衛 重装歩兵40名

歩兵40名

正騎士2名



前衛の重装歩兵が罠などの危険や魔物の襲撃を、文字通り身体を張って防ぐ。

中衛の弓射手兵が援護し、前衛の突撃兵が切り伏せる。

中衛、後衛の重装歩兵は前衛との交代要員だ。

後衛の歩兵は、負傷者を外に搬送したり伝令が主な役目だ。





俺を中心に左右に2人ずつ並び、盾を胸の前に掲げ慎重に階段を降りて往く。

少し離れて横列5人の重装歩兵が続く、罠の巻き込まれを警戒してだ。



階段の先は、右に折れた通路だった。通路の奥に向かって歩き出すと、頭上から長さ30Cm直径3mm程の細長い金属製の針が勢い良く数百本降って来た。



カンッカンッカッカンッ


最初の罠は甲冑と兜に阻まれ効果が無かった。



暫く進むと、左右の壁から数十本の槍が突き出て来た。



「ぐっ」、「うおっ」



両端の2名の鎧を貫く事は無かったが、衝撃で身体が揺らいだ。



「大丈夫か?」



「ああっ」、「驚いただけだ」



「油断するな、慎重に往くぞ。」



俺以外の者は、重装備を過信し過ぎだ。正騎士を含め全員が、ダンジョンを舐めて掛かっている気がする。ダンジョンマスターの力を甘く見すぎだ。魔物がまだ現れて居ないせいだろう。



「下がれっ!」



足元に違和感を感じ、思わず叫びながら後ろに飛び下がった。突如足元の床が消えた。



「うぁーっ」「ぐあっ」「ぎゃっ」「いってー」



5m近い落とし穴に4人が落ちた。装備重量が仇になってしまった。勢い良く落ちた衝撃で骨折や脱臼をした様だ。



「後衛の歩兵は縄ばしごと、落とし穴を塞ぐ木材を用意しろ。

後衛の重装歩兵4名、前衛でガスレンの指揮下に入れ。」



正騎士が的確な指示を矢継ぎ早に出す。



通路は天井も壁継ぎ目無く、階段を降りた場所から変化無く右や左に時々折れ曲がるだけで分岐すら無い。在るのは罠だけ、炎の噴き出す床やヌカルミの底無し床など引っ掛かるまで判らない物ばかりだ。



罠は一度作動すると、その痕跡が丸1日残り再起動しない。ダンジョンコアの魔力を使用した自動修復に時間が掛かる様だ。



壁や天井に記しを付け罠の位置を表示するが、自動修復により無駄に成った。

正騎士は知って居た様で、歩数による通路地図を作っていた。

1Kmは通路を歩いただろうか?数十の罠は重装歩兵には効果が薄く、負傷者8名の内骨折6名に脱臼2名で生死に係わる様な負傷者は今のところ無い。



通路の先に広い空間が見えた。緊張感が部隊を包む。



「開けた場所が見える、恐らく魔物が待ち構えているはずだ。警戒して反撃に備えろ。」



正騎士から指示が飛び、いっそう緊張してきた。

開けた場所は奥行き100mは在り、天井も10m以上は在った。

この広場も通路と同じ様に、継ぎ目が無く白っぽい磨かれた大理石の様な感じだ。



入った通路の向かいに、小さく通路が見える。その通路を守る様に、何かが居る。遠く判り難いが、人と馬が全部で20程居る。

前衛と中衛の重装歩兵20名で扇型に、入って来た通路を囲む。弓射手兵は矢を(つが)え、敵に備え突撃兵は得意な得物に手をかける。



馬が走り出し、近寄って来た。遠目には騎馬と思ったが、全く別物だった。



馬より2回りは大きく、本来馬の首が在る位置に筋肉質な男が腰から生えた人馬一体を地で行く魔物だ。



「ケンタウルスだ。弓を持って居るぞ、重装歩兵盾を構えろ。全員重装歩兵の背後で耐えろ。」



ケンタウルスは、弓射手兵より遠い射程から矢を射って来た。太い腕から繰り出される矢は盾に弾かれるが、気を抜けば盾ごと弾き飛ばし兼ねない威力だ。



ズシンッズシンッ



地響きすら感じる足音で人型の魔物が近づいて来る。5mは在ろうかと謂う巨体の人型。鼻の上に大きな1つ目が特徴的だ。手には鉄柱の様な巨大で彎曲(わんきょく)した刀を持って、ケンタウルスの直ぐ後ろ迄走って来ていた。



「サイクプロスだと!?奴を近づけるな!

目を狙って矢を射てっ!」



半ば叫びつつ、正騎士が指示を出す。サイクプロスはその巨体から愚鈍な感じがするが、1歩が長く見る間に近づいた。



重装歩兵がケンタウルスの矢を防ぐだけで手一杯な所に、巨大な曲刀が唸りを上げて振られた。



刃先は潰れ、刃毀(はこぼ)れした曲刀は刃物と謂うより巨大な鈍器だった。



「グハッ」「ガァッ」



曲刀は2名の重装歩兵を盾ごと弾き飛ばした。盾はくの字に曲がり、腕は在らぬ方向に曲がっていた。胸の甲冑は押し潰され、元々の1/3程度しか厚みが無かった。



倒れ込んだまま動かない甲冑だった物から、血が滲み出て床に溜まっていく。



サイクプロスに向かって放たれた矢は、その大きな目に当たる事無く(かざ)した左手に刺さるだけで痛みすら感じて無い様だ。



荒れ狂う様な力の殺戮劇が始まった。




土曜日AM7:00

定期投稿予定です

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