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ダンジョン運営記  作者: レベル
13/39

潜入調査

俺の名はキュー太郎、隣を歩くのは相棒のオー次郎。マスターの命令に従い、ノルン王国首都に向けての旅の途中だ。



ダンジョンから南に約1,000Kmの道程を最低限の睡眠と食事や休憩を取りひたすら進む。



脆弱な人間の身体が不便でしょうがない。真の姿で移動するなら不眠不休で10日程度で済むが、人間の身体では20日は掛かる。



オー次郎の憑依する身体よりは、幾分頑丈なのが救いだ。少しでも早く着き軍隊に志願するのだ。



ダンジョンを出たら憑依の人間に成りきれとのマスターの命令だ。人間としてノルン王国の軍隊を探るのが目的だ。



ダンジョンを出発して16日目の朝ようやく、王都の街並みが遠くに見え始めた。

市街地に入り旅人相手の食堂で、朝と昼を兼ねた食事を摂って情報を仕入れた。



市街地に騎士団の出張所が有り、志願兵の受付をしてるらしい。受付の後に、簡単な体力測定をして配属先を決めるそうだ。受付でゴーストとバレないか心配だ。



「次の方、前に進んで下さい。名前と年齢と出身地を書いて下さい。字を書けない場合は口答で結構です。」



「字を書けません。名前はガスレン、歳は25歳、オルター伯爵領アルト村出身です。」



「北のオルター伯爵領からとは、遠くからの志願有り難うございます。失礼ですが、そちらの奥さんかな?女性は付き添いですか?」



「妻のリスムです。実は幼い頃、私達の両親が魔物に殺された復讐に今回志願しました。

妻も何か国のお役にたちたいと着いてきました。雑用でも何でも構いません、何かお手伝いさせて下さい。」



「ガスレンさんの志願動機は大変良く判りました。しかし奥さんをどうするか困りましたね。国の為に働きたいと謂う気持ちは大変有難いのですが、何せ私では権限が無いのです。」



「情けない事を申すな!儂の裁量にて奥さんにも働いて貰おう。」



「だ、団長。」



「志願兵の増加で、厨房は戦場の様だと料理長が溢しておったわ。奥さん、兵舎の食堂での下働きでも構わんかの?」



「国のお役にたてるなら、何でもします。」



「うん、うん、戦いは儂ら兵隊が頑張って魔物を倒す。奥さんは出来る事を頑張ってくれたら良い。旦那もなかなか良い身体じゃし鍛えがいが有るわ。」



「有り難うございます。」

「頑張ります。」



「ではガスレンさんは、午後の体力測定の後に訓練参加となります。正午まではあちらの控え室でお待ち下さい。奥さんは団長が責任を持って案内しますから安心して下さい。」



「儂が案内するのか?」



「儂の裁量でと、おっしゃいましたよね?

私は受付業務で手一杯です。」



「仕方がないか、奥さん兵舎の食堂で料理長に紹介するから、着いてきてくれんかね。」



騎士団団長との出会いが、この先数多くの貴重な情報に繋がる事に成るのをまだ2人は知らない。



体力測定の結果、重装歩兵への配属が決まった。

全身を鎧で包み、大きな盾と槍で武装した兵士が重装歩兵だ。

ダンジョン攻略に重要な壁役で、死亡率が高く一緒に配属された者達は皆青ざめていた。



他のダンジョンと直接戦えるなら、マスターに報告出来る情報が増えると喜んでいると声を掛けられた。



「ガスレンだったか?重装歩兵に配属が決まって、嬉しそうだな?」



「はい、団長。両親の敵討ちが出来ると想うと嬉しいですね。」



「やる気が有るのは感心だが、奥さんの事を忘れるなよ。生きて帰れる様に訓練に励め。」



「はい、団長。」



「なぁ?アンタ団長様と知り合いか?もしかして偉いさんか?」



「たまたま知り合っただけだよ。俺は元々百姓だよ。」



「アンタ百姓かぃ?重装歩兵配属で嬉しそうにしてるから、腕に自信が有るかと思ったわ。」



「槍働きは判らんが、力比べなら村じゃ敵無しだったよ。」



「ふ~ん、それにしても力だけは有りそうな身体のデカイ奴ばっかりじゃないか?この部隊。」



確かに、小さい者でも180Cm以上の身長だな。周りの事は関係無い、訓練を通し戦術を読み取るんだ。



訓練は装備を全て身に付け、ひたすら走るだけだった。全ての重量を足すと40Kgを超える。

1時間足らずで脱落者が出始め、2時間を超えた時には150名の内俺しか走って無かった。



限界を超えて肉体を酷使する事は、完全憑依状態なら簡単な事だ。限界が迫ると肉体が意思を拒絶するが、憑依は拒絶すら捩じ伏せる。



初日の訓練で、最後まで走っていたのを評価されて重装歩兵部隊の小隊長を任された。



初日の今日は免除されたが、明日の夜から騎士が講師の戦術講習に参加だ。各部隊の隊長、小隊長には必須科目らしい。



各部隊の役割や戦術が良く判るだろう。

マスターに報告出来る情報が増えるのは有難い。



騎士団団長と知り合ったお陰で、士官用の宿舎に夫婦で特別に住み込みと謂う扱いを受ける事に成った。



周りの食堂で働く者や士官達は、団長の後ろ楯も有り皆親切にしてくれた。

両親の敵討ちに夫は志願兵、妻は兵舎の食堂で下働きとは見習うべき夫婦だと口を揃えて皆が言う。



マスターが謂う通りの設定を話しただけだ。人間は愚かだ、違うなマスターの思惑通りなのだ。マスター曰く、軍人なんてのはコテコテの浪花節で簡単に騙せるそうだ。浪花節とは人情話で、敵討ちは特に効果的と申されていた。



田舎から敵討ちの為に志願兵として、それを支える為に下働きを厭わない妻。美談でしかない。騎士もしくは騎士を目指す者は、国に全てを捧げたいのだ。夫婦が敵討ちの為に行動した様に。



キュー太郎は重装歩兵として、訓練を重ねダンジョン派兵に選ばれるのが今の目標だ。

俺は噂話や風評を集め、ノルン王国そのものを探っている。

王国の政治体制や周辺国との関係など多岐に渡るが、マスターの命令だ。少しでも多くの情報を手に入れてみせる。






1ヶ月後、王都に最も近い樹海のダンジョンに騎士団を主力とした討伐軍が派兵された。




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