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小夜物語  small tales of long night   第12話   鬼の証文、A demon's bond 

作者: 舜風人

小夜物語  small tales of long night   第12話 鬼の証文  A demon's bond




第12話ここに始まる。




その老僧は、私の突然の訪問にも快く応対してくれた、。

私がその老僧におつかえしたのはもうずいぶん昔になる。

世をはかなんで電車に飛び込もうとした私を

その老僧がたまたま通りかかってぐいと捕まえて防いでくれたのだ、

それから私はこんこんと諭されて改心してお仕えして、、


こうして今の私があるというわけだ。


さてこのたびは、老僧があるお話を特別にしてくれるというので私は

この山里の庵にはせ参じたという次第だった。



招じ入れられた私に茶を進めてくれて老僧はこんなお話をとつとつと語り出した。




、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、





昔々、丹波の国はとある村に五平という男がおったそうな。


仕事は猟師と樵の兼業?であったが


そんな仕事はほっぽらかしては


この男生来の無頼者で村ではコソ泥、暴力、たかり、ゆすり、手籠め、喧嘩、賭博ごと、それによる刃傷沙汰などが絶えない


与太者で、いわば村一番の厄介者だった。



ただ、、、そのおかあ、、つまり、五平の母親という人は


そりゃあ善根ものでなあ。


毎日毎日仏前で五平がどうか、改心してくれますように、、、と。


祈っておったそうな。


さてそんなある日のことじゃった。


村のはずれの御堂ではご法度の賭博が開帳されておったそうな。

そこには町の与太者どもも大勢集まり

人気のないのをいいことにここを開帳場にしておったというわけじゃった

もちろん五平もそこにおった。


さて賭博も佳境に入ったとき、五平は大枚を

賭けておったが

サイコロの振り方がその時妙で、よーく見ると、

サイコロが袖から出てそれが入れ替わっておるのをちらりと見えたのじゃった。



「待った。おい、おい、いかさまはやめてもらおうか」

「なんだと、ふざけやがって、なんくせつけりゃあ、ただじゃおかないぞ。」


たちまちその場は修羅場と化して五平は持っていた匕首を懐から出すと

胴元の親分のところへまっしぐらずぶりと突き立てる。


子分たちももちろん黙っちゃいない。

五平はたちまち子分の合口に刺されて蜂の巣状態、

即死だった。、


さて、、、、、

五平は何やら誰かが呼ぶような声がしてふと目覚めた。

むっくり起き上がって出るとそこには

貧相な老人がいて「お迎えに来たやったよ」というのだった。

「お迎え?」

はっとして後ろを見ると五平の血だらけの死体を子分どもが

運んで裏山に埋めようとしているところだった。

五平は思わずうーとうなり、歯をかみしめていた。

「さ。もう取り返しはつかん、行くぞ。五平よ」


五平も今はその老人に従うしかなかった。


しばらく行くとぞろぞろとほかにも亡霊たちが歩いているのに出会った。

見るとその亡霊の群れの中には先ほど五平が刺殺したあの

賭博の親分の姿もあった。

だが、、いまさら、、すでに、すべては終わったことだった。


親分の亡霊は五平に気がつくこともなく、

そのまま通り過ぎて行ったという。


しばらく老人について行くと大きな楼門があってその扁額には

「地獄 閻魔堂」と書いてあった。


老人は「ここまでじゃ。あとはしっかり改心するのじゃよ」といってスーッと消えたという。


「ああやっぱり俺は悪い事ばかりしてたから、地獄行きなんだなあ」と自得するのだった。


楼門をくぐると亡霊たちはぞろぞろと列をなして大きな広場?に集められ


そこには大勢の地獄の獄卒たちが太い金棒を振りかざして亡者どもを取りかこんでおったそうな。


その地獄の獄卒の顔といえば、、青鬼、赤鬼をはじめとして


象のように鼻が長い鬼もいて、そりゃあ怖気を誘うことしきりじゃった。


やがて亡者たちは一人ひとり閻魔堂に引き立てられ

閻魔大王のご前で生前の罪状を述べさせられるのじゃった。


もし嘘でも言おうものならそれはすぐばれて

舌を抜かれて、即、、等活地獄行じゃった。


さて五平の番が来た。

「さあ、お前の罪状を述べてみよ」と、閻魔大王。

五平はそもさん、これまでと、腹をくくってすべて生前の悪行を述べた。


それを聞いていた大王。

「待てよ、こいつの母親というのは根っからの信心者でこいつに爪の垢でも煎じて飲ませたいような善根だったな」


「どうしてこんなワルが生まれたのか。それも因果の糸の綾なせる宿業ゆえ致し方ない

その母の因果じゃがなあ」


「さて、五平、お前、もう一度もし生き返れたらどうしたい?」

五平は突然聞かれて、、返答もしかねていると、

おまえの母の信心と、因果の涙ゆえにどうじゃ、特別にもう一度生まれ変わって


因果のすす払いをしてみては?お前も遠い転生の過去世ではくどくもあったようじゃしな」


五平は生き返れると聞いて、、内心、え?オレでいいのか?という


きもちだった、



「だがもちろんタダでは生き返れないぞ、お前はまったく別人に生まれ変わるのじゃ。


ここに、これ証文がある。


これをわしの言うとおりに血判を押すのじゃ。いいか。」


そういうと従卒の鬼が紙を五平に手渡した、


見るとそこにはこんなことが書かれておったそうじゃ。




            身体借用証文


  一つ、六尺身体、

お借り申す、ただし、生老病死、煩悩具足 付き。

右は今般、母が善徳、、おのが過去世の功徳により特別に与えられし身体にして

来世に於いては善用し諸行無常の浮世で菩薩行いたしますることお誓い申し上げまする。

利息といたしましては、仁義。孝養。善徳を必ずお支払いいたしまする。

もしこの約束を懈怠いたし、雑思。雑行いたしましたなら直ちに

無間地獄に落とされましても決して異存ございません。


血判


右借用主、   娑婆国、無明通り一丁目一番地   五平


希善発智  元年 〇月   ○日


冥途国  閻魔大王様。




ははあと恭しく五平は血判を押した。




すると途端に意識は朦朧として、、、、、、。




、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、




と、


老僧は言葉をそこで、ひとまず、継いだ。


「それから?どうなりました。五平さんは。」


「それからかい?」


「五平は京都のさる町屋の子供として生まれ変わったのじゃよ。」


そしてその子は子供のころから信心が好きでなああ、


誰が教えたのでもないに、野仏を拝んだり、

虫けらやカエルでもいつくしむ心を持っておったのじゃよ。


そしてその子は前世のことを記憶しておったのじゃったよ。


でももし、うかつにそれを公言すると

周りが驚愕するので子供ながらに

それはまずいと思い、

決して公言しなかったのじゃがな。


その子供のなれの果てが、、ほれ、、このわしじゃよ。」


そういうと老僧は気持ちの良い高笑いをしたのだった。


「で、、老僧、その証文というのは、実物はございますか?」と


私も、また、つまらない質問をしてみた。


「実物かね?」


「そりゃあわしの心の中に、、筆あとくっきりとほれ

この通りここにあるのじゃよ」


といって老僧は胸を指差した。




終り













お知らせ


私の作品で、、続き物、連作、シリーズものを、すべてお読みになりたい場合には、「小説家になろう」サイトのトップページにある「小説検索」の欄に、読みたい連作シリーズ作品群の「共通タイトル名」を入力して検索すれば、全作品が表示されますので、たやすくお読みになれます。

























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