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5月1週目 ホワイトブレス&スターティアラ①

 メンテナンスは明け方終わる。

 仕事を抱えている俺は当然のように朝に時間を作ることができず、ログインはいつもの夕飯後となった。


 定期的に行われるメンテナンスやアップデートは何かを変える為ではなく、これまでに設定したモノがうまく機能するように、より快適にできるようにするためのものだ。何が変わるというものでもない。

 だがしかし、それは見る者の心次第でいくらでも変化する。俺には、何となく牧場が広くなったように感じられた。



「猫村!!」


 ログインした俺に、最初に反応したのはパヴァだ。

 ドラゴンの姿で俺の方に駆け寄って、いや、文字通り飛んできた。あまりの風圧に座標固定で抵抗したが、それをしなかったら体の軽い俺は遥か彼方まで吹き飛ばされていただろう。


 パヴァの姿は、成竜のころと比べて一回り大きくなった。全長12m程度だったのが、16mぐらいまでになっている。細かい造形はあまり変わっていないが、心なしか胴回りだけ他よりも大きくなっているように思う。これについてはスクリーンショット(スクショ)を比較して確認すればいいか。とりあえず一枚写真を撮る。

 表情の方は喜色満面。機嫌がいいのは丸分かりで、これならドラゴンを見始めて間もない人でも判るほどに歓びのオーラを振りまいている。

 ……特に理由は思いつかなかったが、何かしらのイベント的なものが発生したとは考えられず、単純に成長した姿を見てほしいとか、そういった事ではないかと理解した。なので、容姿を褒めることにする。胴回りの事を除いて。


「見違えたな。パヴァ。ずいぶん大きくなった。今までよりも速そうに見えるよ」

「ん。当然」


 スピード勝負の世界で生きてきただけに「速そう」というのは最上級の褒め言葉だ。案の定、パヴァの笑顔が一つランクアップする。チョロインの称号をあげてもいいかもしれない。

 追加で頭を撫でてあげれば、更に機嫌がよくなる。


「キュゥゥ!!」

「クルゥゥ!!」


 そうやってパヴァの相手をしていると、ドナドナとビギニングウィンドもやってきた。2頭とも年を取ったわけだが姿に変わりはない。いや、あっても困るんだけど。

 そうこうするうちに、なんだかんだ言って全員がこの場にやってきた。その中にはエルフ姿のオルファンもおり、笑顔で俺の隣に侍る。


 今月で出産を規定数終える彼女はスキル≪竜の統治者(ドラゴンマスター)≫の効果で現在俺の秘書的な扱いとなり、サポート役として傍らに控えていることになる。俺がログインしている間は別命が無ければそうしているのが仕事なのだ。懸念としては先月前半の時のようなヒキニートな性分が出てこないかという事だったが、そちらについてはずいぶん改善されており、先日レース観戦にもついてきたことから、もう大丈夫と判断されている。

 これからオルファンは俺の出した指示をスケジュール化して管理するのと、普段の行動との比較から俺が忘れているかもしれない事があれば自発的に指摘すること、内容は知らないが俺がいない間にちょっとした小遣い稼ぎをするのが業務となる。

 服装については若草色のスーツに身を包み、髪は上でまとめている。伊達であろうがメガネをかけ、いかにもデキル女といった装備でこの場に挑んでいる。

 ちなみに、彼女が牧場を管理している間は細々としたことに対しボーナスが発生する。微量ではあり、誤差の範囲といえるレベルだが、生まれてくるドラゴンの初期能力値がわずかに上昇し、訓練したドラゴンたちの成長率が上昇する。生産系・調教師系でスタートしたプレイヤーの持つ能力をほんのかけら程度ではあるが持っているのだ。これにパヴァが親竜を引退した後にトレーナー補佐として起用すれば、もう少し補正は大きくなる。

 あと、仕事に慣れてスキルのレベルが上がれば一応効果は大きくなる。これからは頑張ってもらう事になるだろう。



 今年の新規登録は『十六夜』と『望月』だ。

 アイス・ドラゴンの十六夜を『ホワイトブレス』、ブリザード・ドラゴンの望月を『スターティアラ』とした。ホワイトブレスはともかくスターティアラは男向けの名前で無い気もしたが、そこはもう気にしない方向で、第一印象というか、フィーリングで決めた。2頭とも新しい名前を気に入っているので問題ないと結論付ける。

 2頭は今、ドナドナ、ビギニングウィンド、ユピテルといった先輩方と一緒に訓練中だ。ついでに監督としてオルファンもつけてある。俺は2頭に基礎を教えるとともに、今後の育成計画も踏まえてコミュニケーションをするよう心掛けている。≪意志疎通≫のフラグだからね。


 2頭とも飛ぶことに関しては楽しんでくれるのだが、氷属性の宿命か、晴れたコースで飛んだあとは休憩を欲しがることが多い。今までの経験と比較しての多い・少ないと言った判断だが、あまり良い傾向ではないので留意しておく。逆に吹雪状態のコースを飛んだあとは元気いっぱいでもっと飛びたいと駄々をこねるようなので、単純に気候に対する適正が問題なのかもしれないが。

 なんにせよ、普通の天気でも飛べるようにならないと一人前になれないので、そこは要教育といったところだろう。デビュー戦は来週まで待った方がいいかもしれない。





 出ていった(?)メンバーもいるが、新たなメンバーを加え、また新しい月が始まる。

 よし! 今月も気合入れていくぞ!!

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