センパイ…… なんでっスか?
最近の僕は、おかしいっス。
どうおかしいかと言えば…… それはセンパイに対しての僕の気持ちが……っス。
僕は…… センパイが好きっス。
だけど、それはもちろん人間としてと言う意味でのことっス。
僕はこの通り友達がいません。
人付き合いもへたっス。
だから…… 強引とは言え、そんな僕の事を部活に誘ってくれたのは、ちょっと嬉かったっス。
僕はめんどくさがりだから、人付き合いを進んでする気はないけれど、でも…… 別に人嫌いって訳じゃないですからね。
とにかく、センパイはそんな僕に仲良くしてくれて、その上お父さんの会社まで助けてくれました。
だから、僕はセンパイに恩があるっス。
恩がある上に、僕はセンパイと話をしていて、とても楽しいと感じてます。
センパイと一緒にいて、素直に楽しいと思うっス。
だから僕はセンパイの事を人間として大好きっス。
でも……
でも、最近…… ちょっと違うんスよ。
センパイに…… センパイに無理やりされちゃった時からでしょうか?
僕はその辺りから…… センパイをセンパイとして見れなくなってきています。
僕の中のセンパイの「好き」が変わってきているような気がするのです。
センパイが……
センパイが、近くにいると落ち着かないし。
センパイが僕を見てると落ち着かない。
センパイと未だにちゃんと目をあわせられないし、なんだかちゃんと話せない。
センパイと一緒にいるのは…… 正直とても疲れるっス。
だけど……
だけど、センパイが近くにいないとなんだか物足りなく感じてしまう。
センパイと一緒じゃないときはいつも通りの僕なのに…… センパイと一緒だと、まるで僕が僕じゃないみたいっス。
まぁ……
それがなぜなのかって言ったら…… 分からないほど僕も馬鹿じゃないっスけど……ね。
まぁ、要するに…… 僕はセンパイの事を異性として認識してしまっているって事です。
センパイの事を…… 男として見ているってことっス。
そりゃあね……
あんなにも毎日されたら…… 嫌でも意識してしまいますよ。
あんなにも毎日…… ぅぅ…… 自分が女の子だって事を思い知らされたら……
あんなにも毎日…… センパイが男で、僕が女の子だって事を思い知らされたら……
そりゃぁ……ね?
ホントにあの鬼畜野郎…… 僕が避妊してくれって頼んでるのに、何回か「外に出すから」って言って避妊してくれなかったし。
もう…… 本当にもぅ……!
一昨日に生理が来た時は…… 思わず安心してしまったっス。
本当に…… できちゃったらどうするつもりなんすか…… あのばか…!
はぁ……
もう…… なんて言うか…… まぁ、僕がそんな感じでセンパイを異性として意識しまくってるのは自分でも分かってるっス。
でも…… それは単に恥ずかしいからなんでしょうか?
それとも、これがセンパイが僕に望んでいる「恋心」って奴なのでしょうか?
僕の中の…… センパイへの好きって気持ちはどうなっているのでしょうか?
人間としてなのでしょうか?
男性としてなのでしょうか?
まぁ……
正直なところ…… 多分異性として好きになってんじゃないかなぁ、と思ってはいます。
色々と思い当たる節があるのです。
たとえば……
センパイに抱きしめられると、胸の奥がきゅうっと熱くなりますし…… 恥ずかしいけど。
センパイに触れられると、なんだか熱くてむずかゆいけど…… いやじゃ無い気分になります。
あと、センパイの真面目な横顔とかにドキッとすることもあるっス。
これって…… 多分そういうことなんでしょ?
でも……
それはなんか…… しゃくにさわるんスよね。
だって…… 僕、センパイにされる前までは、特にそんな事なかったじゃないですか。
それで、センパイにされた途端にこうじゃないですか。
それってなんだか…… まるで、一回ヤッただけで本気になっちゃうような女みたいじゃないですか。
なんか…… ちょっとそれは嫌です。
むぅ……
でも…… そう言うことに、なっちゃうんスかねぇ?
「はぁ……」
「どうしたの? 朱音ちゃん」
ユキさんがため息を吐く僕に声をかける。
「あぁ…… ユキさん、ちょっと聞いてくれますか?」
「なに!? なんでも聞くよ!!」
ユキさんはなにやら嬉しげにそう言ってくれる。
うん、ユキさんならきっと真剣に僕の話を聞いてくれそうだ。
「僕は…… 安い女なんでしょうか?」
「え?」
「僕は、せまられたらさせてしまうような女の子なんですよ」
「え?」
「結局、避妊してって頼んでも押し切られてしまうし…… 求められたら断りきれないんです」
「え? え? ひ、避妊? 求められって…… え?」
「やっぱりそんなんじゃだめですよね? ユキさん」
「朱音ちゃんを無理やり…… 避妊せずに…… な、なんて事を……!」
「ユキさん?」
「あ、あわわ…… な、なんてうらやま……」
「ユキさん?」
「え………? な、なにかしら?」
「鼻血…… 出てますよ?」
「ぇ………え!?」
慌てながら、手鏡を取り出し、顔を確認するユキさん。
「ちょ…… ちょっとおトイレに行ってくるわ!」
「あ…… は、はい」
その後、ダッシュで席を立つユキさん。
「そ、それと朱音ちゃん!」
ユキさんは、教室を去り際に、鼻を押さえながらそう言う。
「淫らな朱音ちゃんも…… 私は好きよ!」
ユキさんは最後にそう言い残して教室を去ったのだった。
「………………………………何をいっているのだろう? あの人は」
――――
「お昼ごはんを食べますかね」
お昼休み…… 僕は第二茶道部の部室へと向かう。
今日はセンパイがお昼ご飯を用意してくれる日なので、とても楽しみだ。
この前は確か、高級出汁巻き卵が入ったお弁当だったっス。
高級料亭で用意したとかで、本当に美味しくて、ほっぺが落ちそうだったっス。
さて…… 今日はなんスかね。
超楽しみっスね。
「ん? センパイ?」
僕がそんな事を考えながら歩き続けていると、センパイの後ろ姿が目に入る。
「ぅぇ……… センパ……ィ?」
僕の目に入ったセンパイ……
それは…
一人の綺麗な女性と……
「キス」をしているセンパイの………
「ぇ…………ぇ…?」