センパイ以外の人たちのこと。
朱音出現による周りの人間達の反応。
全てのキャラが話しにもう一度絡むかどうかは不明。
クラスメイト 山岸幸助の場合
最近、俺のクラスで不思議な事が起きた。
その不思議な出来事とは…… 性転換、
クラスメイトの男子が、ある日突然女子になったのだ。
その突如性転換したその女子の名前は宮前朱音。
俺から見て斜め二つ前の席に座っている生徒だ。
性転換した理由については、宮前の親友である片桐雪菜曰く「突然変異だよ!!」との事らしいが……
そんな馬鹿な。
まぁ…… 理由についてはこの際どうでも良いとまではいかないが置いておこう。
というか、本人も何も話さないので調べようがない。
それに、なぜだか教師陣も完全にそのことはスルーしてるし……
宮前朱音。
特に特徴もないただの男子生徒だった宮前。
唯一の特徴といえば、あの上條先輩に気にいられていると言うことくらい。
それ以外は本当に印象が薄い、居るのか居ないのか分からないような奴だった。
それが……
それがなぜ……
「ふぁ…… ねむいっス……」
なぜ… 女の子になった途端に、なぜこんなにも可愛いのだ?
おかしい…… いやおかしいだろ……
なんだよあの可愛さ。
ちっちゃな口であくびして、目端に涙溜めて、目をこすりながら、瞳をとろんとさせやがって。
天使か!
「ふぁ………」
あくびをかみ殺しながら、なにやら自分のカバンをガサゴソと探る宮前。
「むぅ…」
そして眠そうな顔のまま、宮前はクッションを取り出した。
「おやすみっス……」
そしてそのまますやすやと寝てしまう。
って……
いやいやいや!今授業中なんですけど!?
さすがにクッションはまずいんじゃないか?
まぁかわいいから良いと言ってしまいたくなるけど……
「おい、宮前」
「…………………はい?」
授業中であるにも関わらず堂々と寝に入る宮前に、こめかみを引きつらせながら苦笑いをする先生。
だよなぁ…… さすがにまずいよなぁ。
「なぜ…… クッションを出している?」
「前みたいに腕で眠ると腕が痺れちゃって痛いんス…… ふぁ……ねむ…」
目をこすりながらそれに答える宮前。
「先生おやすみなさいっス……」
そして、宮前はそのまま再び寝に入ったのであった。
「宮前ぇ……」
宮前の全く悪びれない態度に呆れ混じりにため息を吐く先生。
しかし宮前は……
「む……… すぅ……」
そんな先生の事を気にせず完全に寝始めるのであった。
「宮前おきなさ………… ぅ……」
宮前の席に近づいて起こそうとする先生。
しかし、クッションに横顔を乗せてすやすやと眠る宮前を見て停止をする。
「はぁぁ…………」
宮前の寝顔を見て、深いため息をつく先生。
先生はその後にゆっくりと教室を見回し「これはしょうがないよな?」と言う目線を投げかける。
うん……
しょうがない。
これはしょうがない。
…………少しだけ微笑を浮かべて、子犬のようにくぅくぅと小さい寝息をたてる宮前。
日が射す机に、きらきらと輝く黒髪を広げ…… 美しく可愛くお昼寝をしている美少女。
その表情は普段の無表情のときよりもリラックスしていて…… 柔らかくてとても可愛い。
時おり口元をむにゃむにゃとさせるのがどうにもきゅんとしてしまう。
うん……
だめだ、しょうがない。
これは起こせない。
「お前らは…… 寝るなよ?」
困った様な先生の顔に、こくこくとうなずく生徒達。
宮前の隣の席の片桐を初めとして、クラスの全員が眠れる宮前を見て恍惚の表情を浮かべている。
宮前に向けるその視線は慈愛に満ちていてとても温かい。
最近…… うちのクラスは妙に団結力が高い。
いつの間にかクラスのリーダーになっていた片桐を筆頭に、宮前を愛でるものたちでこのクラスは占められている。
そして…… 実は俺もその一人。
だってこんなに可愛いんだぜ?
これは最早宝だろ?
国の宝だろ?
うん………
宮前が突然女の子になってから早1週間。
基本的には今までと変わらない宮前。
変わってしまったのは…… この1年3組かもしれない。
2年生 斉藤雄大
最近、一年で可愛い子が居るとの噂だ。
なんでも数日前までは男だったが、今は物凄く可愛らしい女の子になっているらしい。
なんだそりゃ……?
全くもって訳の分かんねぇが、可愛い女子であるのであれば見に行かなくては。
「楽しみだねぇ」
俺はそんな事を言いながら、一年の教室に行く。
俺が一年の所に行くと、一年の女子共が騒ぎ出した。
まぁ、俺が来てるんだ…… 当然の反応だろう。
ふむ… 良く見てみれば、中には何人か食った娘もいるな……
まぁ、噂の娘がそんなに可愛くなかったら、そいつら引っ掛けて遊びにいくか。
そんな事を考えながら、俺は噂の子がいる教室に行き、そして扉を開ける。
「ん………?」
するとそこに、丁度扉から出ようとしていた女子が目の前にいた。
あけようとした扉がいきなり開いたからだろう。
その女子は少し驚いた顔をしている。
そして……
「あの…… そこどいてくださいっス」
すぐにその顔を無表情にし、俺に対してそう告げる。
俺はそんな彼女を見つめて…… 停止をしてしまった。
停止をしてしまうほどに…… 見惚れてしまう美少女だったのだ。
俺は一目見てその子が噂の子だと分かった。
「おぉ…… かわいいなぁ」
少しだけ潤んだ眠たげなたれ目、スッとしていて何処までも真っ直ぐな黒色の艶髪、ふわふわしていてやわらかくて落ち着いた雰囲気。
手が隠れた大き目のカーデも、妙に艶かしい黒のタイツも、全て含めて可愛いと思える美少女。
きらびやかな美しさじゃあなくて……
しっとりとした可愛さというか……
良く言い表せないが、とにかく可愛いと断言できる。
そんな女の子だった。
「なぁ…… 君さ、名前なんて言うのかな?」
「僕は宮前朱音といいますが?」
俺がその子に名前を聞くと、その子はきょとんとしながら答える。
「OK朱音! 俺の名前は斉藤雄大って言うんだ、よろしく!」
「はぁ……」
どうした? 反応が薄いな?
なら……
「これから俺とどっかに遊びにいかないか?」
俺は朱音の手を取って、そして微笑みかける。
今まで何人もの女を虜にしてきた、俺のキメ顔の一つだ。
学校中で噂になっている俺だ…… まぁ問題なくいけるだろう。
「え? ヤです」
「え……?」
しかし朱音は俺に手をとられたまま、顔をしかめて答える。
は……?
こと…… わられた?
お、おかしい……
俺の誘いを断っただど……?
そんな馬鹿な!
「な、なんで?」
「え…… だってこれから部活ですし…… そもそも僕はあなたの事知らないっス」
「え……!? お、俺の事を知らないのか?」
「え? どっかで会ったことありました?」
不思議そうな顔で聞き返す朱音。
そんな…… まさか俺の事を知らない女生徒がいるなんて。
俺の事を…… 知らないだと!?
そんな馬鹿な!
「あ……」
俺がそんな事を考えていると、突然朱音が何かを思い出したように小さく呟く。
「あの…… すみませんが僕に触らないくださいっス」
「え?」
そう言って、俺に握られた手を振り払う朱音。
「僕…… えっと、彼氏に? 他の男に触れさせるなって言われてるんで」
そう言って俺にペコリと頭を下げると、俺の横をすり抜けて歩いて行く朱音。
「な!! ちょ…!! まてよ!!」
俺はそんな彼女を引きとめようと手を伸ばす。
しかし、その手は他の人間にガシっと捕まれ止められた。
「先輩…… うちの宮前に気安く触らないでもらえますか?」
そこそこ身長の高い男が俺の前に立ちはだかったのだ。
「2年で一番モテる斉藤先輩も、朱音ちゃんの前では形無しですね」
そして、その横から一人の女が現れる。
な… なんだこいつら!?
「山岸君、離してあげて?」
「了解だ、片桐」
男が俺の手を離す。
く…… 握られた腕が痛い。
こ、こいつ握力強いな。
「いいですか、先輩? 朱音ちゃんに、他の子と同じようにちょっかいを出したら…… ただではすみませんよ?」
そう言っって妙に迫力ある笑顔を見せる女。
俺はその笑顔に言い知れぬプレッシャーを感じた。
そして……
「な……… なんなんだお前らは!」
良く見てみればクラス全体が俺の事を睨んでいた。
俺はその光景に言い知れぬ不安を感じ、とりあえず撤退をすることにした。
「く…… くそ! なんなんだ!?」
1年3組宮前朱音……
いったいなんあのだアイツは……
三年 香西由梨絵
最近…… 上條君に彼女ができた。
その彼女とは、宮前朱音と言う女だ。
いや、ちがう…… 女ではない
なぜなら奴は、前は男だったのだから。
前から上條君のそばにいた、部活の後輩。
それが宮前朱音。
地味で、無個性な、上條君にはまるでふさわしくない地味男だった。
そして……
そんな男がある日突然女になったのだ。
私の調べによると、どうやら霊薬を使用して上条君が彼をが女にしたらしい。
そんな元男が上條君と付き合っているだなんて。
ゆるせない……
なんなのだあいつは。
このところ上條君をそばにいつも居て、やたらとべたべたしている。
元男の癖に…… くそ。
しかも、あの上條君のすぐそばにずっといるのに…… あの女は不敬にも、嬉しそうな顔を殆どしないのだ。
なんだあの仏頂面は…… 私なんて隣に居たくてもいれないのに。
今日、あの女が上條君と一緒に食事をしていたときなんて…… 本当に腹が立った。
上條君があの女を膝の上に…… 膝の上に乗せて食事を…… 抱っこで食事をしていたというのに!!
あの女はノーリアクションで無表情で特に嬉しそうにもしないでそれを享受していた……!!
あんなに素晴らしい…… あんなにすばらしいシチュエーションでだ!!
なんだアイツは! なんなのだ!
くそ…… あの女、ムカつく。
本当に…… ムカつく。
ムカつくムカつくムカつく……!!
死ねばいいのに……
でも……
どうせ上條君のことだ…… すぐに飽きるのだろう。
宮前朱音…… せいぜい今のうちにいきがっておくことね…… どうせすぐにあなたは捨てられるのだから!!
3年 幸島洋介
私には最近気になる女子が居る。
その女子の名前は宮前朱音と言う。
宮前を私が始めて目にしたのは五日ほど前の事だ。
私が部活に行こうと剣道場へと移動をしているときの事であった。
宮前(名前は一年の後輩に後日教えてもらった)が一人、中庭のベンチで日向ぼっこをしていたのだ。
目を瞑ったまま、日のあたる方へと顔を向け、僅かに口元を緩ませながらちょこんとベンチに座る宮前。
それはまるで一枚の絵のように、そしてそこだけ別世界であるかのような光景。
その姿は可憐で可愛く…… そしてただ美しかった。
例えるならば冬の朝焼けの様に…… 爽やかで純粋で引き締まるような美しさ。
例えるなら春に芽吹いた草木の様に…… いじらしく健気でみずみずしい愛らしさ。
決して派手さは無い…… だが一度目にしたら、目を離せなくなるような魅力がそこにはあった。
私はその時の光景を生涯忘れないだろう。
そして……
そして私はすぐに宮前に声をかけようとした。
最早、恋としかいいようがないこの気持ちを素直に伝えようと思った。
私は早足で宮前に近づいた。
声をかけようとした。
しかし……
しかしそこであの男が…… 上條蒼ノ助が現れた。
あの男は宮前に近寄るや否や、すぐに宮前の手を取り、そして連れ去っていった。
その手口は鮮やかなもので、突然現れたかたと思えば次の瞬間には宮前の手を取り、颯爽と連れ去っていっていた。
私は宮前からの位置が遠すぎて、そこで上手く対応ができなかった。
別に大声で「待て!」と言っても良かったが、そんな事をしてはあの可憐な少女が私に対して怯えてしまうやもしれん。
それだけは避けたい。
しかし……
あの男に連れ去られたときの宮前の顔。
まるで表情が無かった。
つまらないとでも言いたげな表情だったように思える。
あの表情…… あの表情にはきっと何かがある。
たとえば……
上條に無理やり「俺とつきあえ!」と脅されている…… とか?
ううむ……
十分にありえる。
いや、きっと恐らくそうであろう。
そうに違いない。
これは……
これは俺が宮前を救ってやらねばいかんのではないか?
そうだな…… そうしよう!
私が…… 私が宮前を救い出す!!
あの可憐な少女を私が救い出すのだ!!
上條の魔の手からな!!
1年 天ヶ谷リサ
最近…… 気に食わない奴がいる。
気に食わないそいつの名前は宮前なんとか。
もと男だとかなんだとか…… とにかく得体のしれない気持ち悪い奴だ。
そいつが…… 最近どうも男子に人気らしいのだ。
リサを…… 生意気にもリサと同じ学年で、リサには及ばないだろうけどそれなりに男子にチヤホヤされているらしい。
なんだそれ?
気に食わない。
あんな地味女のなにがいいのかわからない。
リサの方が綺麗だし可愛いし明るいし家もお金持ちだし成績も良いし。
全てあいつなんかより上なのに。
なんであいつが?
あいつなんて、雰囲気は地味だし、なんだか暗いし、家も普通だし、成績も普通だし。
なんであんな奴がリサと同じ位に持て囃されてるのか分からない。
今日だって何も無いところで、一人でいきなり無様に転んでた。
廊下でいきなり転ぶもんだから、「馬鹿なんじゃね?」って思いながらリサは見てたんだ。
そしたらあいつは上体だけ起こして、ぺたんって座ったまましばらく停止してた。
何してんだろって思って見てたら、なんだか少しだけ涙目で無言のままじっとしてたから、「あ、こいつ我慢してんだ」って気が付いた。
リサは「いい気味」だなって思って見てたんだけど…… そしたらその直後に男達が何人か群がってきたんだ。
いや…… 男子だけじゃない。
女子も集まって来てて…… なんだそれ。
なんでそんなちやほやされてんの?
わけわかんない。
本当になんだあいつ。
マジで面白くない。
あいつ…… 本当に気に食わない。
なんなんだアイツ…… 地味女の癖に……
お姫様はリサ一人でいいんだ。
あいつは…… 邪魔だ。
クラスメイト 片桐雪菜
どうも、朱音ちゃん愛し隊、隊長の片桐です。
私達、朱音ちゃん愛し隊こと1年3組の主な活動は、朱音ちゃんを愛でる事と朱音ちゃんを守ることです。
なんだか最近変な男とか変な女とかが近づいてるから、私達が彼女を守るのです!
こんなに可愛い子を傷つける訳にはいかない!
こんな…… こんなに可愛い……!!
ああ……
しかし今日も朱音ちゃんはかわいいなぁ。
「雪さんどうしたんスか?」
おっと、いけない。
朱音ちゃんが可愛すぎてついガン見しちゃった。
「何でもないよ!? あっ、そうだ! 朱音ちゃんみかん食べる? みかん好きだよね?」
「好きっス、たべるっス」
そう言って私の方を見やる朱音ちゃん。
さらりと揺れる黒髪から覗いてる小さな顔は、いつも通りの無表情。
だけど口元が微妙に微笑んでるのが私には分かる。
どうやら喜んでくれているようだ。
「うふふ、みかんむいて食べさせてあげようか?」
「本当っスか? ありがとうございます」
基本面倒くさがりの朱音ちゃんは、こうやって食べさせてあげるのを喜ぶ。
私としては食べさせてあげられる上に喜んでもらえるという最高のご褒美に他ならないのだが。
「はい、あーん」
私はみかんのスジまで剥いてあげて、朱音ちゃんの口に運ぶ。
口に入れたときにちょんと触れた朱音ちゃんの唇は本当に柔らかくて、思わずキスしてしまいたい衝動にかられるが、私はそれを必死にガマンした。。
私偉い!
「ん……」
口に入れたみかんを目を瞑りながらあむあむとかみ締めて味わう朱音ちゃん。
この、朱音ちゃんの一つ一つの事柄をかみ締めるような…… そんなマイペースでゆったりとしたところが朱音ちゃんらしくて本当に可愛い。
「んく……… うまいっス」
みかんを飲み込んで眉を少しだけふにゃリとさせる朱音ちゃん。
これが朱音ちゃんの小さい笑顔。
この控えめな笑顔が、なんだか本当に愛しいのだ。
クラスの皆もこっちを見てほっこりとしている。
皆も朱音ちゃんにメロメロなのだ。
「もっとほしいっス……」
朱音ちゃんがそう言って私にねだる。
おねだりをする朱音ちゃんは、いつもちょっとだけ上目使いをする。
いつもの無表情のまま、控えめに私を見上げる朱音ちゃん。
いつもの眠たげな瞳が可愛く私を見つめている。
「うふふ、喜んで!」
ああ…… なんかもう……
なんかもう本当に朱音ちゃん可愛い!!
ああ……
人生って素晴らしいなっ!