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センパイ、僕は本物っス。

センパイ……!


ああ、一週間ぶりのセンパイっス……!


今、気付きましたけど僕…… 女の子になってから毎日センパイと会ってたんですね。


休みの日とかも何だかんだ、センパイの車で出かけたりしてたし……


だから、こんなにセンパイと会わなかったのは久しぶりっス。


あぁ……


センパイ…… スーツだからっスかね?


それとも一週間ぶりだからっスかね?


センパイ……


うぅ……


なんか、超かっこいいっス。


僕の彼氏さんっス……


超かっこいいっスよぉ……!


「朱音……?」


「なんですか? 蒼之助様」


せんぱいが僕を見てる。


そして、ぼくは先輩をみつめている。


「その…… なんでずっと見ているんだ?」


「いけませんか?」


センパイを…… もっと見ていたいんです、


もっと…… もっと、センパイの顔をよく見せてくださいっスよ。


「いけなくはないが……」


「なら、いいじゃないですか…… ね?」


えへへ…… センパイ。


僕のセンパイっスよ……!


なんスかね? ほんとなんなんスかね?


会わなかった反動なんスかね?


なんだかもう…… なんかもっと、もっとセンパイに甘えたいっス。


「もっと甘えさせてください、蒼之助様」


早く二人きりに…… なりたいっスよぅ……


「………………まぁ、いいか」


「はい」


やっぱ…… センパイのそばがいいっスね…… うん。






「ちょ…… ちょっとあなた…… ちょ! 無視するんじゃないわよぉ!!!」


ん………?


なんすか、せっかく僕がセンパイを満喫してたのに。


あ………


この人……


「こんばんは、天ヶ谷様…… どうされました?」


あの時の嫌な人だ…… 


やばい。


特訓とセンパイのことしか考えてなかったっス。


すっかり忘れてました。


「ぐ…… な、なに? 随分と小奇麗にしてるじゃない? 庶民のくせに随分と不相応な格好をしているんじゃないの?」


……………この人、馬鹿なんでしょうか?


こう言うパーティーで、そう言う発言とか、ないっスよ。


メイド長がいたらぶたれるっスよ?


「はい、私もそう思います…… 今日は蒼之助にご迷惑をかけないよう気をつけたいと思います」


僕はにっこりと笑って、天ヶ谷さんを一瞥して、すぐ目線を逸らす。


もう、どうでもいいっスこの人。


センパイに迷惑かけないようにって頑張ったけど、すくなくともこの人よりはマシっスね。


てか、こんな人に関わってたらセンパイの沽券に関わるっス。


「では…… 行きましょう、蒼之助様」


スルーしましょう。


「ちょ、ま、まちなさいよ!!」


無視っス。


そんなのは相手にしちゃだめって、メイド長も言ってたっスもん。


「ちょっと!! 宮前!! ………………ぐ、ちょと!! 光之助さん!! なんとかしなさいよぉ!!」


「あ…… ああ!! お、おい蒼之助!!」


やかましいっスね……


ん……? ああ、あの人がセンパイのお兄さんですか。


…………似てないっスね。


あとなんかこの人、馬鹿そうっス。


「なんですか兄さん?」


「そ、それがお前の自慢の彼女とやらか?」


「そうですよ…… 私の自慢の彼女です」


せ、せんぱい……!


て、照れるっスよぅ……


「ふ、ふん…… 自慢か、笑わせる!!」


「なにか?」


「し、知ってるんだぞ!! その、女は性転換薬を使った元男なんだろう!!」


な………!!


なに……… 言っちゃってるんスかこの人?


こう言う上流階級の世界では割と僕みたいな人は多くて…… でもそれは基本的には公開したり、詮索したりしないものだってメイド長も言ってたのに。


マナーもへったくれもないっスよ……


やっぱ、馬鹿な人だったんスね。


「それが何か?」


「な、何かだと!? よくもまぁぬけぬけと…… この変態が! 一族の恥さらしめ!」


………………は?


「やはり、下賎な妾の子供は、嗜好に至るまで下種の極みと言う事だな! お前の様な奴が一族にいると一族全体の各が下がるんだよぉ!!」


下種……? 


え?


なにそれ…… まさか、センパイに向かっていってるんスか?


「大体お前は、昔からきにいらないんだよぉ!! いつもずる賢く立ちまわりやがって!! お前のちまちました小ズルイやり方には反吐が出る!! この卑怯者が!!」


……ぉ………こ…こいつッ!


「おい、朱音…… 落ち着け、こんなのと同じ土俵に立つな」


で、でも…… でもコイツセンパイに悪口を……!!


「いいから…… そんな泣きそうな顔で睨むな…… 別にあんなの大した事はない」


だって…… 僕の…… センパイを……


コイツが……!!


「いいから」


「でも……」


うぅ……!


だって…


「おい、何を話している!! ちゃんと俺の話をきいているのか!!」


「聞いていますよ」


センパイが笑って応対している。


センパイは余裕の顔だ。


「っつ!! ……………………っち!! ふん……… まぁいい!! まぁ、お前みたいな二流の偽者には、この女みたいな偽者がお似合いだろうな!! せいぜい偽者同士仲良くするんだな!!」


に、二流? 偽者!?


僕が? センパイが?


偽者!?


「まぁ、お前らみたいな奴は、俺の様な本物には成れないんだよ!! せいぜい、そのまがい物だらけのゴミみたいな人生を精一杯生きるんだな!!」


…………………………………あ、無理。


超無理。


頭きたっス。


「光之助さま? ちょっとお待ち下さい」


僕は…… 光之助を引き止めた。


「おい…… 朱音?」


「大丈夫です蒼之助様……」


僕はセンパイに、ニコリと微笑んでから、馬鹿にも笑顔を向ける。


「な、なんだ?」


馬鹿が僕を見る。


僕は馬鹿を見据える。


メイド長に教わった、人を射抜く視線だ。


馬鹿が、僕を見て、息を飲んだ。



「私は偽者ではありません…… 今の私は本物です」


「な、何を言って……」


「本物の女とはなんだと思いますか? 私は……」


僕はセンパイを見る。


「私は…… 大好きな人の子供を生み、そしてその子と大好きな人を愛して守るのが本物の女だと思います」


「だから…… なんだと」


「私は今…… 蒼之助様の子を身篭っています」


「な!?」


驚く馬鹿野郎、そして回りも……


先輩もすこしだけ驚いてる。


僕は自分のお腹をさすって言葉を続ける。


「そして…… 私はこの子と、蒼之助様を愛しています…… 深く深く、愛しています」


僕は、そう言って馬鹿に微笑む。


そして、真剣に見つめる。


馬鹿は僕を見て、息を飲んだ。


「私は女です、蒼之助様の女です、私は誰よりも彼を愛しています…… だから、私は誰よりも……」


僕は微笑む。


センパイを思って…… 微笑む。


「誰よりも、蒼之助様だけの女です…… そしてこの気持ちは……」


僕は、心いっぱいの気持ちを込めて……


「本物ですよ」


馬鹿に、周りの全員に、そしてセンパイに…… そう宣言した。


――――


僕はそう言ったあと、センパイに「すみません、気分が悪くなってしまいました」と言って、連れ出してもらった。


あの馬鹿は一瞥もせず会場を後にした。


言い切りの形で会場を逃げ出した。


こう言うときは女子って便利っスよね。


まぁ、下手にセンパイの弁護をしたら絶対にヒートアップして僕は地が出ちゃう自信があるっスから、自分のことだけ言って逃げるに限るっスよ。


本当はもっと色々罵倒してやりたいところっスけどね。


まぁ、なんとか言い負かした的な雰囲気になったから、良いんじゃないでしょうか?


うんうん。


「で?」


「はい…… なんでしょう? センパイ」


僕はセンパイに連れてきてもらった休憩用の個室に入るなり、センパイの首元に抱きつく。


「なんで余計なこと言ったんだ? あんなの相手にするだけ無駄なのに」


「だって…… むかついたんですもん」


僕は視線を逸らしてそう言う。


お説教はいいっス。


聞きたくないっスよ。


「で?」


「なんでしょう?」


センパイは首元に抱きつく僕を、自分の膝の上に乗せる。


だっこだ…… えへへ。


「いつのまに妊娠したんだ? 確かまだしてなかったよな?」


「それは…… えっと」


僕は…… 視線を泳がせる。


うん…… だって、その場の勢いってあるじゃないですか?


ありますよね?


「きょ、今日僕を…… えっと、妊娠さてくれれば、問題ないっス……」


まぁ…… もう覚悟はできてるし。


それに、僕は絶対センパイの子供も愛せますもん。


今なら…… 自身を持って言えますよ?


それに……


あんなに大勢の人の前で宣言しちゃったんだもの…… 今更後にはひけないっスよ……ね?


「そうか…… なら今からするぞ」


「え……? こ、ここで?」


「ああ、正直がまんできない」


………………………マジっスか?


「ま、まぁ…… せ……… せんぱいがしたいなら……」


まぁ…… いっスけど。


僕も、その………… だし。


うん……

次回! エロ!


そして、その後は最終回!!


最終回にて…… 次回作の発表!!


乞うご期待!!

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