表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

センパイどうですか?

「それで蒼之助、まだなのかね?」


「何がですか?」


上條本家にあるパーティーホール。


そこで今おこなわれている、年一回の立食パーティー。


これは上條家の親類一同が顔を合わせる重要な会だ。


そこで俺は今、親父と話をしている。


「君が付き合っている女の子の事だよ…… なんでもずいぶん入れ込んでいるそうじゃないか? 変わり者の君がどんな娘に夢中になっているのか、親としては興味深いところだね」


「変わり者って…… 父さんに言われたくはないですね」


「ほう、君も言うようになったじゃないか」


親父はそう言って小さく笑い、俺もそれに微笑で答える。


親父は…… まぁ妾を作って俺を生ませるような権力者を地で行くような人間ではあるが、決してそれを変に誇示したりはせず、基本的には気さくで誠実で、だけど時に大胆で…… 


何より人間的な魅力と言うかオーラが凄い。


俺が尊敬をする数少ない人間の一人だ。


「どうやら渋滞に捕まってしまったらしく、すこし遅れるそうです、ついたら紹介しますよ」


「わかった、楽しみにしているよ蒼之助」


そう言って親父は軽く俺にウインクをかますと、他の親類の所へと歩いていったのだった。


「さて…… 朱音はどうなっているのか」


実は、俺はここ一週間朱音と連絡をとっていない。


一週間前に、朱音が何故か突然やる気を出して以来、一回も会ってもいないのだ。


朱音が、やるからには徹底的にと言うものだから俺が本家のメイド長を教師として紹介したところ、メイド長がえらく朱音を気に入り、「強化合宿をします!」と言い出したからだ。


朱音も今回はとてもやる気で、それに素直に従いついて言ってしまったのである。


そして今日…… ついにお披露目と言う事だ。


あの朱音が、果たしてどう変わるのかね?


一週間ぶりに会えるってのもそうだが…… とても楽しみだ。


「おい、蒼之助」


「今晩は、蒼之助さん」


俺がそんな事を考えていると、不意に横から声をかけられる。


俺の腹違いの兄、上條光之助とその彼女の天ヶ谷リサだ。


「なんでしょうか?」


俺は二人を見やり、微笑を持って迎える。


「おい…… お前がご執心の彼女とやらはどこだ?」


光之助がニヤニヤと腹の立つ笑みを浮かべながら俺に声をかける。


会合でそんな低俗な笑みを浮かべてるから、コイツは二流なんだよ。


周りに自分の底の浅さを晒してるようなもんだ。


「すこし遅れているようです」


俺は柔らかい笑顔を作り出して応対をする。


「ふふふ…… 怖気づいてこられないんじゃないですか? 所詮はただの庶民ですものね」


………おい、こんな馬鹿女と付き合ってんじゃねーよ。


これがどんなパーティーなのか知ってんのか?


他人を貶める発言をするような女と付き合ってたら、自分の評価をさげるぞ。


ちっ……


親父の顔に泥を塗るような真似だけはするんじゃねぇぞ…… くそ。


俺が代表になったら、絶対こいつは引き摺り下ろしてやる。


「大丈夫ですよ、彼女はああ見えてなかなか物怖じしない人間ですからね」


「へぇ…… そうだといいですけどね」


「まぁ、こなかったとしても、それはそれでお前の女に相応しいではないか

情けない女を相手にするくらいで丁度いいだろう、お前にはな」


そう言って兄貴は「その点、僕のリサは家柄も……」と云々言っている。


うぜぇ……


仕事がが俺より上手く行ってないから、彼女で張り合おうってか?


マジでコイツふざけてやがるな。


もう、面倒くせえ。


無視するか?



「「「ぉぉ………………っ!?」」」


俺が、そんな事を考えていた時だった。


「ん?」


なにやら入り口の辺りから小さな騒ぎが起こる。


「お、おい…… あれどこの令嬢だ?」


「すごい綺麗……」


「あんな娘、親類にいたか?」


「誰の連れだろう……」


なにやらそんな囁き声が聞こえてくる。


「なんだ……?」


俺はその騒ぎの方に視線を向ける。


「ぉ……………」


すると、そこには……


背筋をすらりと伸ばし優雅に歩く、純白のナイトドレスを来た女性が俺に向かって歩いてきていた。


その女性は真っ黒で艶やかな髪をなびかせながら、その綺麗な顔を俺に向けてにこりと微笑む。


その顔は見知った顔なのだが…… まるで別人のように美しく……


いつも眠たげな目を、しっかりと開いて凛々しい顔立ちになった……


「遅くなってすみません…… 蒼之助様」


でも笑顔が可愛い…… 朱音だった。


「あ、ああ……」


俺は差し出された朱音の手を取って、 戸惑いながらそう呟く。


朱音はそんな俺を見て二マリと可愛く微笑み、そして自然で優雅な動作で腕を絡める。


そして、ぴとりと俺の隣に寄り添い顔を横に向けて俺を見上げる。


「それでは私をエスコートして頂けますか、蒼之助様?」


「ああ… そうだな」


あっけにとられる俺。


そんな俺の事を嬉しそうに見つめる朱音。


俺を見つめる朱音は、可憐で、美しく、そして高貴だ。


なんてことだ…… 朱音が、まさかこんなに変わるとは。


いや…… 違うか。


変わったんじゃない。


多分…… 隠れていたものが引き出されたんだ。


普段のやる気の無さと、気だるげな雰囲気で隠れていたけど……


整った顔立ちを引き締めて、綺麗な瞳を見開いて、薄く化粧をして、髪型を整えて、そして背筋を伸ばせば……


それだけで朱音はこんなに綺麗に成ってしまうのか。


なんというか…… 元が良いにも限度ってものがあるだろう。


俺はそこで一旦朱音から目を逸らし、周りを見てみる。


すると、周りが皆朱音を見ていた。


朱音のあふれ出る魅力に…… 皆、釘付けになっていた。


だけど…… その朱音は……


「蒼之助様……」


俺のことしか見ていなかった。


嬉しそうに、楽しそうに、にこにことしながら、ふんわりと優雅に微笑む朱音。


そして朱音は俺の事をひとしきりみつめたあと、俺の腕を軽くひいて顔をすこしだけ近づける。


「センパイ……」


不意に朱音はひそひそと小さな声で俺に語りかけた。


「どうですか?」


ちょっとだけいたずらっぽい朱音のドヤがお。


「僕、がんばったっス」


ちょっとだけ小悪魔的な…… 魅惑的な微笑み。


「あとでたくさん…… 褒めてくださいね?」


そして、一瞬だけお姫様な顔をほどいて、ふにゃりと微笑むのだった。


「………………ああ」


可愛い…… なんて言うか、こいつは本当に愛らしい。


俺は…… 朱音を今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。


しかし…… それをぐっと堪えた。


俺は朱音を見据える。


そして……


「えらいぞ」


朱音をいたわるように優しく見つめる。


「後でいっぱい撫でてやるよ………… 頑張ったな」


そして朱音に優しい笑顔を向けてやる。


「ぁ…………」


朱音は…… そんな俺の事を見て、一瞬感極まったようにして小さくぶるりと震える。


そして……


「はい…… 楽しみです」


頬を赤く染めながら、お姫様の笑顔を浮かべたのだった。

次回パーティー決着。


そしてその次がエロ。


そして最終回だぜぇ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ