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センパイテンションたかいっス。

待たせたな…… いや待たせてない!!


そんな訳で第三段!!


さあ野郎共、宴の始まりじゃぁ!!

「なぁ、朱音」


「なんスか? センパイ」


夕暮れの中…… センパイが僕の方を向いて声をかけてくる。


「どっかにいい女いないか?」


「……………………………」


僕はそんな事を言いながらため息をつくセンパイを見て「何いってんスか」って視線を向ける。


「おい…… 何だその目は」


「いや…… センパイ、あなた彼女いるじゃないですか」


今、僕の目の前でたわけた事を言っているこの人。


僕の所属している「第二茶道部」の部長で、二人しかいないこの部活における僕の唯一のセンパイ。


容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能、しかもかの有名な「上條財閥」の御曹司でもあるというパーフェクトぶり。


それゆえに、モテにモテまくっているこの人の名前は上條蒼ノ助かみじょうそうのすけ


間違っても女に不自由しているかのような発言をしていい人間ではないのだ。


僕の様なもてない地味系男子の前では特に…


「俺に今は彼女はいないぞ?」


「は? いや、あなた一昨日デートしてたじゃないですか」


「ああ… 美也子とは昨日別れた」


「またですか…? センパイ付き合うスパン短すぎですよ」


僕はセンパイを見ながら呆れるようにそう言う。


センパイはとにかくモテる。


ファンクラブとかが余裕で組織されるくらいにモテる。


それをいい事に、女の子をとっかえひっかえしているのがこの上條センパイと言う人だ。


だから別に一週間で別れたと聞いても別段驚きはしない。


「別にすぐいい女なんて見つけられるじゃないスか、センパイなら」


「馬鹿だな朱音… 俺が探してるのはただの女じゃない、いい女だ」


そんな事をいいながら先輩は目を細める。


「………どう違うんスか?」


僕はそんな、夕日に染まる無駄にイケメンなセンパイをジト目で見やる。


「どの女も付き合ってみて、どうにもピンとこないんだよ…… フィーリングが合わないっていうかな……」


「へー… そう言うもんスか?」


ふむ… 付き合えばそれだけで楽しそうな気もするけど… そんなもんなんスかね?


イケメンのいう事はわかりません。


「俺はフィーリングが合うような… 気が合うような… そんな女と付き合いたいね」


「そスか… ガンバッテクダサイ」


僕はそう言ってセンパイから顔を背ける。


そんな贅沢言ってる人なんてしんないっス。


「なんだその言い方は… 朱音は俺の恋愛事情なんてどうでも良いというのか?」


「いや、センパイの恋愛にごとに関しては心底どうでも良いと思ってますけど」


僕はさらっとそう、センパイに言う。


「……………お前は本当に俺に対して普通だな」


「……? 普通以外に何かあるんスか?」


僕は首をかしげながらそう言う。


「いや…… 大抵のやつは俺に気を使うか、媚びるか、恐れるか、敬うか、敵意を抱くかのどれかだな…… お前みたいにフラットに接してくる奴はいない」


「…………そっスか? センパイが気にしすぎなだけなんじゃないッスか?」


センパイは確かに普通じゃないけど、話してみれば割と普通といえなきにしもあらずだからなぁ…… あれ? それってやっぱ普通じゃないのかな?


「くくっ…… やはりお前は面白い」


「……? 何わらってんスかセンパイ」


僕がそんなことを考えていると、不意にセンパイがそう言って笑い出す。


なんか…… えらく楽しそうっスけど、どうかしました?


「初めて会ったときもそうだったな、俺を見た瞬間に”おはようっス上條センパイ、食堂ってどっちっスか?”なんて言った奴は初めてだった」


「それの何が面白いんスか?」


……?


僕はただ、入学式の時に在校生代表で挨拶してたセンパイの顔と名前を覚えてたから声をかけただけなんすけどね?


そこに面白いとことかありますかね?


「俺の事を”上條蒼ノ助”と認識した上であんなに自然体で声をかけてくる奴なんて他にいない…… 本当にお前は面白い」


「はぁ…… そっスか?」


どう言うことだ?


やっぱり頭のいい人か言う事はわかんないっス。


「くくく…… やはりお前と話すのは面白い、お前を部活に誘って正解だったな」


「あれは誘ったって言うか、命令でしたけどね」


そうなのだ… この人は僕が声をかけたその日の内に、僕がいる一年の教室に乗り込んできて、高圧的に勧誘してきたのだ。


「まぁ、その命令に対して”はぁ… まあ別にいっスけど… あ、月曜だけは早く帰りますね? 夕方に見たいテレビあるんで”なんて言ってきたときは思わず爆笑してしまったがな」


「いや…… 正直に答えただけなんスけど」


まあ別に断る理由もなかったし…… 


ただ「第二茶道部」って言うのが、茶道部とは名ばかりの、ただのセンパイの学校用プライベートルームだと知った時は少し驚きましたけどね。


さすがは金持ちっス。


すごいっス。


「お前みたいに話してて面白い女がいればいいんだがなぁ」


「はぁ…… そっスか? 物好きっスね」


夕日に目を細めながらしみじみとそう呟くセンパイ。


僕は、僕みたいな女いやっスけどね。


「ん………? お前みたいな女?」


そうして、しばらく歩いていると、不意にそう呟くセンパイ。


「……………そうか、その手があったか!」


そしてセンパイは突然、はっとした顔をして。小さく叫ぶ。


いったいどうしたんスか? 


テンション高いっスね。


「おい、朱音」


「なんスか?」


センパイは僕のほうを向いて、僕を見つめる。


なんか、やけに活き活きした目をしている。


「今夜お前の家に行くから家に居ろよ?」


「え? なんでっスか?」


いつも突然訳わかんないこと言うなこの人は…


「その時に説明する」


「はぁ…… まぁいっスけど」


まぁ、もう慣れたからいいけど。


「じゃあ、また後でな!」


「わかったっス」


そう言ってセンパイはダッシュで走っていってしまった。


夕日にむかって…… 


元気っスねセンパイは。


――――


「朱音、早くご飯食べちゃいなさい」


「いやっス、ご飯はゆっくり食べるものっス」


「はぁ…… あんたはほんとマイペースねぇ…… 誰に似たのかしら」


「多分ばあちゃんっス」


「うむ…… 確かに朱音は母さん似だなぁ、そのふてぶてしい感じがそっくりだ」


「そっスか、醤油取ってください父さん」


「ああ、ほら」


「ありがとうっス」


ふむぅ… やっぱり、卵焼きは最高っス。


………………にしても、センパイ遅いっスね。


――――


「くぁ……… む… ねむ」


もう、夜になっちゃったっス。


結局、センパイこなかったっスね。


相変わらず自由っスよあの人は。


「……………………ねよ」


眠いからもうねるっス、早くこないセンパイが悪いっス。


そんなわけで……


「おやすみなさいっス………… ぐぅ…」


――――


「おい…… おい! 起きろ朱音!」


「むにゃ………?」


「やっと起きたか……」


「あ…… センパイおはよっス…… おやすみなさい」


「寝んなっ!」


「あうっ! む……ぅ… なにすんスか……」


こんな真夜中になんスか…… 


いきなり寝起きの人にチョップを食らわせるとか何事っすか。


「夜に来るっていっただろうが…… なんで寝ている」


「今何時だと思ってるんすか……」


「10時だ…」


「真夜中じゃないっスか…… 自由も大概にして下さい」


「………………一般的な高校生は10時を真夜中とは言わん」


「僕にとっては真夜中っス」


ねむいっス… 早く用件を終わらすっス。


「…………わかった、そんな目で睨むな、じゃあ早急に用件を済ますから、それが終わったら寝ろ」


「了解っス…… 早くおわらせるっス、僕はねむいんス」


さっさとするっス。


僕は、不機嫌っスよ。


「この薬を飲め」


「了解っス…… んく… んく… ぷぁ… なんスかこれ、結構美味かったっス」


「明日になれば分かる…… じゃあお休み」


「わかったっス、おやすみっス…… ぐぅ……」


――――











「む…… なんか体がむずむずするっス」











「ぐぅ…… にゃむ…」










「ん……」










――――


「ふぁ…… よく寝たっス」


なんか…… 昨日変な夢見たっスね……


夢の中でセンパイが出てきたような……


「まぁ、どうでもいいっスね…… 今日の朝ごはんはなんスかね? 卵焼きだったら嬉しいっス…………ん?」


あれ……? なんか体が重いっスね?


パジャマもぶかぶかっス。


お……?


髪なが…… え?


なんか色々おかしいっスね?


えっと……


あるっスね……


ないっスね……




あれ……?


なんか冷や汗が出てくるっス…… おかしいっス。


「か、鏡は…… 鏡はどこっスか……」





お…




おぉ……




鏡に映った僕の姿。


それは……


「おお…… 僕…… 女の子じゃないスか…… びっくりっス」


僕こと、宮前朱音みやまえあかねが、そのままに女性化したと思われる姿を…… してたっス。





















僕は10秒ほど呆然としたあと、体をぺたぺた触ってみる。


そしてその中で、自分のお腹を擦ったあたりで一つの事実に気が付く。


「………………とりあえずお腹すいたからご飯たべるっス」


僕はそう呟いて1階への階段を下りたのだった。



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