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一期一会 第一部  作者: ヤルターフ
第二編 工場での生活
56/68

新工場長 3

 月に一度、レウレトはイェオーシュアと面会した。アルフレッドの手紙を渡すためだ。その際、彼女は自分とミーファの手紙を彼に渡し、代わりにアルフレッドとソラリスの手紙を受け取り、雑談を楽しんでいた。こういったことを実行した結果、以前より安定した生産を実現させ、工場長として赴任した彼はこの成果に納得し、"休暇"を楽しんでいた。気づいたらギュストはいなくなっていた。その理由は実に単純なものである。彼の逆鱗に触れたのだ。ギュストがシェイン族を虐待し、差別し、犬呼ばわりしている現場を目撃してまったのだ。レウレトは弱者が虐げられているのを最も嫌った。その原因は彼の幼少期にあるのだが、それはまた別の章にて取り上げることにしよう。


 工場で働くシェイン族達は人並みの生活をすることができるようになったばかりでなく、体罰も無くなり、人して扱われることに喜びを感じていた。そういった喜びや感謝が綴られた手紙が意見箱に入れられ、とうとうそれが溢れてしまった。それを見て彼は書面に一言だけ書いて返事とした。


~~


 諸兄並びに御婦人方へ。


 世界は法によって統制されている。それに則して生活するならば、君達の要望は当然の権利であり、私は法に従って賞罰を明確にしただけである。


 R.R


~~


 集落の四季同様に皇国にも四季はある。紅葉は風に吹かれては散っていき、新芽は冬の厳しい寒さに耐え忍び、春には喜びを具現して美しく花を咲かす。若葉風吹く皇国独特の梅雨が明けた。空青く、雲流れ、太陽が赫々(かくかく)と燃えている。


 レウレトが工場に来て半年が経った。月日を重ねるにつれてイェオーシュアのお腹は大きくなっていく。アルバが小さな手でぽんぽんと叩いては兄になるのを楽しみしている。イェオーシュアはお腹が大きくなったことをアルフレッドに伝え、アルフレッドもまた我が子の誕生を心待ちにしていることを手紙に綴っていた。生まれてくる子の名前を男ならオメガ、女の子ならアルマと名づけようと相談し、レウレトに手紙を渡す時にそれを報告していた。


「そうか、男の子ならオメガ、女の子ならアルマ、どちらもいい名前じゃないか」

「ありがとう、レウレト」

「しかし私自身、君の出産に臨めないのはいささか寂しいな」

「どうして?」

「軍事機密なので詳しくは言えないのだが、本国から辞令があり、とある戦地の総司令官を任された」


 デューイから珈琲コーヒーを受け取りながら彼が続けた。


「今度の作戦にはアルフレッドも参加する。この戦いで戦争が終わるだろう」


 言うと彼は椅子から立ち上がり、彼女に歩み寄った。


「二ヶ月ほど、手紙は渡せなくなる。彼に伝えることはないか?」


 しばらく彼女は黙考していたが、やがて椅子からゆっくり立ち上がると、じっと彼の顔を見つめ、こう返事した。


「愛してると、伝えてください」

「わかった、必ず伝えよう」

「レウレト、これを」


 と、彼女が小さな袋のような物を彼に手渡す。


「これは?」

「お守りです」

「アルフレッドにか?」

「いいえ、あなたに」


 少し間を置いて彼が尋ねた。


「なぜ?」

「夫は近々、あなたと一緒に戦場に行くと手紙にありました。同じ物を夫宛ての手紙に同封しています。レウレトには良くしてくれた恩があります。それで……」

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