表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一期一会 第一部  作者: ヤルターフ
第二編 工場での生活
PR
49/68

苦心惨憺 7

「何か飲むかね?」

「いえ、結構です」

「そうか……」


 男はそう言いつつ、机を挟んで椅子に座った。


「名は、なんと言う?」

「〇二五一号です」

「そうではない、君の本当の名だ」

「イェオーシュア=アージェンティークです」

「うむ、君がイェオーシュアか」

「わたしをご存知で?」

「ああ、この工場を見学してる際に聞いた」

「そう、ですか……」

「それと、ある男が君の名を口にしていたのを覚えている」

「誰ですか?」

「君の夫だ」


 イェオーシュアの心に幾条もの光が差し込んだ。


「アルフレッド!」

「そう、アルフレッドだ」


 彼女の心を照らした光条は束になり、一切の闇を吹き飛ばしてしまった。彼女が立ち上がって男に駆け寄った。


「アルフレッドは……、アルフレッドは生きてるんですね?」

「ああ、生きている」


 その言葉を聞き、彼女は見ているもの全てが薔薇色になったような錯覚に陥った。しかし次の瞬間、猛烈な吐き気が彼女を襲った。


「大丈夫かね?」


 男は足元にあったごみ箱を彼女に差し出すと、彼女がそれを受け取り、中に吐き出した。


「明日、医者に診てもらうといい。手配しておこう」


 言いながら男がティッシュを差し出した。


「あ、ありがとうございます」

「イェオーシュア」

「はい」

「君の夫から手紙を預かっている、これを」


 言って男はイェオーシュアに手紙を渡した。


「明日、ここを発つ前に君のところに寄ろう。手紙があれば、それを君の夫に渡しておく」

「あ、ありがとうございます」


 彼女は涙を流しながらそう言った。


「どうした?」

「嬉しくて、つい……」

「そうか……、今日はもう遅い。部屋に戻り、休息を取りたまえ。守衛に案内させよう」

「はい。あの、お名前を……」

「レウレトだ」


 レウレトがそう言うと、守衛に案内させるよう伝え、彼女を見送った。


 守衛に連れられイェオーシュアが部屋に戻ると、ミーファはもう寝ていた。レウレトから受け取った手紙を取り出してみる。手紙は赤い封筒で、裏に紅いロウで封がされており、獅子をかたどった印が押されてある。卓上ライトに自分の毛布を被せ、その中でスイッチを入れた。光が洩れてミーファを起こさないようにするためだ。そうして音をたてないように手紙の封をそっと剥がし、中身を開いた。


~~


 愛しのヨシュアへ。


 おはよう、こんにちは、こんばんは。君がいつ読むかわからないから全部書いてみた。ヨシュア、元気かい? ぼくは元気にやってるよ。いまやってることや、どこにいるかとか詳しくは書けないんだ、ごめん。


 あの夜、狩りに出てたぼくはソラリス、プラシドの三人で狩りをしていた。だけどいつの間にか体が動かなくなって、気づいたら飛空船の中にいて、そこにはレウレトが居た。その彼がぼく達にこう言った。


「家族や恋人にまた会いたければ戦場に往け。私が勝つ方法を教えてやる。戦争が終われば会うこともあるだろう」


 ってね。それでいま、ぼく達は訓練を受けている。彼はすごいんだ! ぼく達の知らない知識を持っていて、しかもわかりやすく教えてくれる。ぼくは感動して、


「これなら生きて君に会える!」


 なんて思ったりして……。ああ、ごめん。レウレトの話ばかりしてた。なんせ手紙を書くのは初めてで、しかも君に書くとなると嬉しくて、なかなかうまくまとまらなくて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ