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一期一会 第一部  作者: ヤルターフ
第一編 静寧の森
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古今夢想 1

 森は色取り取りの紅葉に染まり、生き物達が冬仕度をしていた頃、ドンカスター宛てに一通の手紙が届いた。それは森の民からのものではなく人間族からの手紙で、封筒の裏には"米英帝国"の刻印がされてある。


~~


 ドンカスター=フォーレス卿


 米英帝国及び政府は、先日の帝国議会に於いてドンカスター卿を代表とするシェイン族の治める地域及び集落を特別自治領区とすることが提案され、枢機院本会議にて法案が提出されたことをここに報告するものです。本会議で可決されれば将来的には一つの国として認められるでありましょう。可決まではもちろんのこと、建国まで、そしてそれ以降の道のりは険しく厳しいものかも知れません。しかし我々のこれまでの活動が報われたために、ようやく一歩前進したものと信じて疑いありますまい。


 ついては今後の活動方針を決めることも含め、議員、財界同志の懇談会こんだんかい貴卿きけいを招待し、マスコミを通じて全世界にこの慶事けいじを伝えたい所存であります。このことが全民衆に伝われば戦争は和平の方向へと進み、全世界の同志が後押しし、我々の夢が加速していくでありましょう。謹んでお慶び申し上げます。


 不肖ふしょうの弟子より。


 米英帝国枢機院議員 ジュスト=ドルオール


~~


 同じような内容の手紙がアプリコットとロンシャンにも届いており、招待されていた。三人は話し合い、さすがに集落に族長がいなくなるのは良くないと判断してアプリコットを残すことに決めた。役所的な仕事が機能しなくなることと、結界の補充が出来なくなることを危惧してのことである。しかし結界に関しては、やはり一人では賄えないかも知れないという、一抹の不安があるのは禁じ得ない。それで三人は結晶石を持ち歩くことにした。パーティーは一週間後に行われる。


「明朝にはここを出ないと間に合わんのう。アプリコット、すまんが我々の結界の管理を頼まれてくれんかのう? 骨の折れる仕事じゃが……」


「わかりました。ですが全てやるのは難しいかもしれません。他の仕事もありますし、私の地域だけでも手一杯ですからね。ですができる限りやります」


「うむ、よろしく頼むの」

「ロンシャン、ドンカスターを頼みますよ」

「おまかせください。ハメをはずしすぎないよう、しっかり監視しますから」

「わしそんなに信用ないかのう……、じじいスネてやるわい」


 翌朝早くにドンカスターとロンシャンは帝都に向けて出発した。集落から樹海を抜け、街道へ出るのに最低でも一日はかかる。二人は馬に乗り、途中で野営をしつつ樹海を抜けていく。街道沿いを少し進むと街がある。二人はそこで一泊して翌早朝の列車に乗ることにした。


「いらっしゃいませ、お泊まりで」

「うむ、二人での、それと外にいる馬たちの面倒も頼む。帰ってくるのは十日後じゃ」

「かしこまりました。では部屋へご案内いたします。それと、お願いがあるのですが……」

「なんじゃ?」

「ドンカスター様ですよね?」

「いかにも」

「サイン、頂けませんか? 私もシェイン族を応援してまして」

「ほほほっ、もちろんいいぞい」

「ありがとうございます。それと、ロンシャン様のも……」

「わたしの?」

「はい、この写真集にお願いします! 知性と教養、絶世の美貌、抜群のプロポーション、スラリと伸びた脚……、米英男子憧れの的です!」

「仕方ないわね」

「ありがとうございます! 一生の宝物にします!」


 そう言うとフロントは色紙とサインペンを取りにいった。


「おぬし、写真集出しとったんか?」

「ええ、我が民の解放運動の一環として宣伝にもなりますし、貴重な資金にもなりますから」

「なるほどのう、にしては嬉しそうじゃの?」


 フレームの無いメガネを直しながら、ロンシャンは婉然(えんぜん)と微笑んでいた。

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