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Battle3

 諏訪は堅い表情で落ちているナイフを拾い、自分の正面にかざした。そして、闇雲に走っていく。諏訪の攻撃は難なく中華鍋によって阻止され、背後から残り二人のパンチやキックを受ける。それでも懸命にナイフを振り回すが、彼女たちに致命傷を与えるにはいたっていない。このままじゃ先に諏訪の体力が尽きてしまうだろう。やはり俺が叩かないと駄目か。俺は右手で、調理台を支えにしながら立ち上がる。

(何かないものか、彼女を助けられるようなものは……)

 俺は必死に調理台の周囲を見回すが、普段こういう教室に出入りしたことがないので何がどこにあるのかまったくわからなかった。しかし、そうこうしている間に戦局のほうはだいぶ変わっていた。中華鍋の娘の隙を突いたのか、彼女の最大の武器である中華鍋が諏訪実の両手に渡っていた。彼女はそれで三人の攻撃を何とか防御しているが、このままでは攻撃に転じることができない。やはり俺が何とかしなくては。

 俺は調理台下の収納子を開け、適当な器材を三人の少女たちに向けて投げた。少女たちは突然の出来事に全員が一斉に俺を見る。

「今だ!力いっぱい中華鍋で叩け!」

 俺の声に答えるように諏訪は大きく中華鍋を振り上げた。

 お、おい待て。いくらなんでも脳天直撃はよしたほうが――

 ゴワァァン。

 思わず耳を塞ぎたくなるような鈍い音が辺りに反響してしばらく俺の耳に残り続けた。諏訪は予想に反して振り上げた中華鍋を固まっている女の子たちの一人の背中を強烈に

殴りつけた。勢いのあるその一撃はそのまま他の二人の女の子も一緒に窓側へと吹き飛ばしてしまうほどである。

 恐るべし、火事場の馬鹿力。

 俺は心の中で三人の少女たちに向かって合掌した。いくらなんでもあんな一撃をもらってしまったら合掌したくなる。しかし、当初の目的通り彼女たちを気絶させることはできた。死んではいないだろう、多分。きっと、おそらく、絶対に死んでいないと思いたい。

「む、向井君…」

 う〜む、中華鍋を持ちながら弱々しく微笑む諏訪にどこか恐怖を感じるのは気のせいだろうか。

「や、やりましたよ…」

 弱々しく微笑む諏訪の足が大きくふらついた

「おっとっと…」

 俺は倒れこんでくる諏訪の体を両手で支えた。外傷はそんなに目立たないものの受けたパンチやキックで所々あざができていた。割と痛そうだし、女の子がこんな傷を残したまま明日を生きられるわけがない。治療はしてやりたいが、しかしここは調理室。救急用具など置いているはずもない。となれば行き着く先は保健室ということになるのだが、二つほど問題点がある。一点目は保健室が開いているかどうかだが、体育館やここがごく自然に開いていたのだ。おそらく保健室も例外ではないだろう。問題は――

 俺は自分の体にもたれて眠っている女の子を見下ろした。

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