Battle2
人数は先ほどと同じ二人。どうやらまたうちのクラスメイトの男子らしいな。でも、今度はこっちには武器があるんだ。そうそう簡単には――
「やられない!」
俺は囲みを破るようにまずは一人にナイフを構えて飛び掛った。自分では見事な体当たりのつもりだったが、バックステップで軽く回避される。何とかバランスを保った俺はそのまま相手に攻撃の隙を与えないようにステージ側へと追い込む。ステージと床とはかなりの高さがあり、よほど跳躍力がないと正面からでも飛び移ることは難しい。まして、こいつは後ろを向いたまま俺の攻撃を裁いている。この状態で飛び移ることなどまず不可能だ。
俺は作戦通り相手をステージに追い詰め、軽くダウンを奪った。
「さて、あと一人…!?」
しまった、しかしその言葉が口から出なかった。一人を相手にしているその隙にもう一人の男が連れの首を締め上げていた。小柄で腕も細いくせにあの怪力はどこから出てくるんだ?とにかくこのまま殺させるか。俺は首を締上げている手を引き剥がそうとするが、まるで通用しない。くそ、何なんだこいつ。隠れ怪力なのか?いや、でもこいつはいつも一人教室で本を読んでいた奴だったよな。そんな奴にどうして?
俺はふと奴の目を見た。最初の二人同様やはりこいつも焦点が今、首を締上げている相手にあっていない。ただ不気味な笑みを浮かべて殺人を楽しんでいるように見える。
(早くしないと)
俺は最終手段で奴の右手をナイフで刺した。そして、そのまま中で数回肉をえぐる。
「ギャハあ!!」
よし、手が外れた。締上げられていた彼女は地面に落とされ激しく咳き込んでいる。
このまま決める!
俺は渾身の右ストレートを敵の顔面に見事に決めた。敵は鼻血を吹き出しながら数メートルほど吹き飛び、そのまま起き上がることはなかった。
「ハァハァ…」
な、何とか勝てた。俺の体から力が抜けて、思わず膝をついてしまう。
「あんたも、大丈夫だったか?」
俺は横で座り込んでいる連れに荒い息を吐きながらつぶやいた。
「死ぬかと思いました…」
確かに、あれは危なかった。気づくのが遅れていたら今頃彼女は……
「情けないな、女の子一人守れないなんて…」
俺は静かに木の床を殴りつけた。認めたくないが、今の俺は自分の身を守るので精一杯だ。
「でも、前に進まなきゃな」
俺はよろよろと立ち上がりながらつぶやいた。
「あのトチ狂った先公にはどうやら鉄槌を下してやらないといけないみたいだからな」
俺たちが戦いに勝利したことで体育館の扉がゆっくりと開放されたようだ。
「見てろよ先公!人を殺そうとした罪をその体に刻んでやるからな!」