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Last dance

先生を乗っ取った悪魔の攻撃は格闘技と、時折繰り出してくる不思議な力がメインだった。格闘技のほうはなかなかの使い手で、ナイフ程度の武器など物ともしないスピードと手足の破壊力は絶大だった。しかし、ここまで来たんだ。もう負けられない。俺の力の全てをこの戦闘につぎ込むんだ。

「これを避けられるか!?」

 先生は足元に球状のエネルギーの塊を作り出すと、それを俺に向かって何本も蹴ってきた。

 動きに一定の間隔があるから、それにあわせてよければなんてことはない。

「!?」

 しかし、その一瞬の油断がクリティカルヒットを招いた。食らってからわかったのだが、このボールのスピードは徐々に速くなっていたのだ。相手に気づかせないほどゆるやかにスピードを上げていく技術はやはり人間業ではない。そもそも正体のわからないエネルギーを球状に打ち出すこと自体既に人間業ではないのだが。

 悠長に解説をしている場合じゃないな。俺は木の床から素早く起き上がると、スピードの速くなっているボールを避けながら先生の懐に向かって飛び込んだ。

「君のそのパターンも既に私の頭の中で攻略済みだよ。そのまま飛び込んできたらどうなる……か!?」

 もちろん、ただ突っ込むだけで俺の攻撃は終わりじゃない。突っ込むだけだったら相手がどう反応してくるかも計算した上での特攻だ。案の定、そのままみぞおち目がけてナイフを突き出してくるとふんでいた先生はみぞおちを中心にガードを固めていたが、俺がみぞおちを避けて背後に回ったことでその防御は役立たずになった。そう、俺は最初か背後に回ることを承知でわざと直線的に移動をしたのだ。そして、相手の間合いに入ったところで姿勢を変えて背後に回りこむ。

 いいぞ、上手く誘い込めた。

「でやややや!!」

 俺は先生の背中にナイフでではなく、パンチを繰り出せる限り繰り出した。最後はブロウパンチで先生を木の床目がけて吹き飛ばした。

 本田たちが『おお!』と歓声を浴びせる。

「……それで?」

 膝をついた先生は俺に背中を向けたまま顔だけをこちらに向けた。怒りに歪むという表現が的確だろか。先生の目は鋭い刺のように細かった。

「お前がいくらこの肉体を攻撃したところで私には何の痛みも感じぬ。痛みを感じるのはこの体の持ち主のみ。お前はこの教師に止めをさせるか!?生徒が教師を殺せるか!?」

「………」

「殺せまい!殺せるはずがあるまい!?ハーッハッハ!私の勝利は君たちの実力云々の前に最初から決まっていたのだよ!ハーッハッハッハぐ!?」

「「「!?」」」

 突如、先生の体に異変が起きた。さっきまでの怒りに満ちた表情は、いつもの自信のない先生のものに変わり、声も先ほどまで俺たちが話していた悪魔のものとは違う、いつもの先生のものになった。

「そ、そう、なにもかも……思い、通り、に、なると思わないで……くだ、さい。悪、まさん…」

「先生…?」

「「「先生!!」」」

 本田たちが膝をついてうずくまっている先生の元へと駆け寄る。

「む、か、い君……それ、から諏、わさん。二人、には……いろいろと、めいわ、くをおかけ…しま…」

「先生!」

「喋らないでください!」

「わ、たしが……君たちの、ことを案じ……ていた、ところ…を……悪魔に、つけこまれて……生徒に、酷い、ことを…」

「それはもういい!もういいんです!」

 俺も必死に叫んだ。

「だから、悪魔なんかに負けないでください!こいつを倒せるのは先生だけなんですよ!」

「が……グ、グヘ、ヘェー!し、消、滅させ、られてたまるもの、か…。せっか、ク居心地のいイ……人、間のここ、ろにはいれ、た……ノ、に」

「貴方の、口車に……乗った私が、馬鹿……だった。クラスの関、係は……他人のち、からを借りて、つくる……ものじゃ、ない。きょう……しとせい、とが一体となって…。自分を、押し付け…て、はいけ……な…い」

 先生は心の中で必死に戦っていた。俺たちには、それを固唾を呑んで見守るしかなかった。でも先生、その通りだよ。どちらか一方の偏った愛情でクラスの友情は育めない。全員が一体となって初めてそれはクラスになるんだ。

「ひぐ!?い゛やだァ!?おでばじにだぐな゛い!じにだぐ……」

 断末魔の雄叫びとはまさにこういうことをいうのだろう。

 悪魔は先生の心の光に撃たれて死んだ。最後の最後までもがき苦しんで。

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