karma
一気に士気を高めた俺たちはその足で、おそらく担任がいるであろう放送室へと向かった。というかなんで今まで気づかなかったのだろうか。刺客を倒すよりも何よりも真っ先にここにくれば担任と直接対決ができたはずなのに。俺たちは放送室と書かれた部屋の前にたどり着くと罠が張っていないかどうかを確認して扉のノブをひねる。
扉の軋む音を聞きながらゆっくりと中の様子を探る。
「……もぬけの殻か」
「最初にスピーカーを使ってアナウンスをしてきたからてっきりここだと思ったんだけど予想がはずれましたね」
諏訪も拍子抜けしたと豪語する一方でどこか安心したような表情を見せている。やはり現実世界でも架空世界でもラスボスと対峙するときというのは無意識に緊張するものなのだろうか。それでも俺たちは一応放送室の中に担任の手がかりがないかを探す。
ふと、机の上に置いてある一枚のルーズリーフが目にとまった。
「なんだこりゃ」
拾い上げて読んでみる。
『二人ともよく頑張った。残りの刺客は八名。さぁ、今すぐ体育館にGo!追伸、お二人様一回限り』
「なんだこりゃ」
「どういう意味?」
諏訪も首を捻っている。そりゃ、俺たちがコンティニューでもしない限りバトルは一回限りだと思うが。とにかく残る刺客はあと八人……ていうかまだ八人もいるのかよ。いやいや、俺たち二人を除いたクラスメイト三十四人を順に倒してきてその残りが八人なら残りは四分の一以下ってことじゃないか。ポジティブ、ポジティブ!
「体育館に行ってみよう。そこにいるとわざわざ書いてあるんだし」
「そうだね。でも、罠ってことはないかなぁ」
諏訪が不安そうにつぶやく。でも、その時はその時さ。今の俺たちにはもう並大抵の罠は通用しないことだしな。
それを言うと、諏訪も「それもそうか」と笑った。最終決戦に向けて、リラックスできているじゃないか。この調子なら案外ゴールはすぐかもしれない。
俺たちはルーズリーフに書かれている通りに再びスタート地点の体育館と向かう。本校舎からならいちいち外に出るよりは渡り廊下を渡っていったほうが早いな。二階に上がって、三年生の教室を中ほどまで通り過ぎ、そこから体育館へと続く渡り廊下を渡ればすぐ体育館のステージにたどり着く。
学校生活も二ヶ月が経ち、すっかり渡り慣れた道なのだが――
「まずは二人…」
俺は正面に立つ二人の男子生徒を前にして静かに足を止めた。




