3話 報告連絡相談できるならしたい
「戻ってきたーー!」
ようやく地上に戻ってこれた。まず協会に行って依頼の報告する。
エンキは魔猪を解体所に持って行くと言っていた。地上では魔猪は引きずって行くらしい。素材は後で牙を貰う予定だ。
「協会に行くかー……めんど……」
今日はもう疲れたから早く帰りたいがそうもいかない。帰還したら報告しないといけないからなー。面倒だが報告を怠るのはまずい。幸いにも大穴昇降機の近くに協会はあるので簡単に行ける。
潜る時も帰ってきた時も余程のことがない限り報告しないとダメ。でないと目をつけられる。あまりにも行動が酷かったり犯罪行為をしていた場合は協会の保有戦力「執行官」に捕まえられるらしい。噂では上位の執行官は国級探索者よりも強いらしく、誰が執行官かは俺は知らない。
チームメンバーは知っているらしいがな。
まあ清廉潔白?品行方正?な俺には縁のない話だ。
「こんちわー、依頼報告に来ましたー」
日本用窓口の受付に行き早速報告をする。それぞれの国ごとに受付があり担当のところに向かう。人はそんなにいないな。おかげで楽に行けた。
流石に数年経てば受付とも顔見知りにもなる。日本人の探索者は多いがすぐに居なくなるからな。自然と仲良くもなる。
「えーと、依頼は完了したが草原には魔猪の異常個体がいて近くで探索していたエンキに救援要請、合同で討伐完了。草原エリアの魔物は徐々に戻るだろ。巨大魔猪はエンキが解体所に持っていったはず。一応確認してくれ」
「はい、確認できてます。魔猪以外の素材はエンキさんがもう換金しましたよ。魔猪の素材はどうしますか?」
「ああ、牙の片方と肉は俺に。他は全部エンキに渡してやってくれ」
「わかりました。連絡しておきます。今回の探索もお疲れさまでした黒瀬さん」
「そっちもおつかれさん」
異常個体の素材はなかなか貴重だ。研究素材としても武器防具としても使える。それゆえに市場には出回らない。
そう考えるとかなり得した方では?エンキが全ての素材を貰っていいんだが俺にも譲ってくれるらしいし。
貰えるなら貰っておこう。またなんかお礼しておくか。
それにアイツはこれぐらいの素材はあまり必要ないからな。探索者の中でも最上位の強さを誇り奇物も持っている。装備も最上位の装備だし。本当に必要な素材なら仲間に渡すだろ。
「よし、早速帰って肉を食おう。そうしよう」
というわけで帰路に着く。帰る途中に屋台やらレストランやらの美味そうな匂いがするが今は気にならない。俺の肉が家に帰って調理しろと言っている。
日本街の探索者用マンションの2階に俺は住んでいる。上の階は後に来たやつが入居している。エンキも前は住んでいたが今は自宅を買って住んでいるらしい。
稼げる仕事ではある。より強い魔物や希少な植物、鉱石を獲れれば数千万、億の世界だ。そこまで強くなれれば、だけど。
「今は肉だ、肉。異常個体の肉は珍しいからな」
改めて貰ってきた肉を見る。ちゃんと解体所で解体してもらったからトリミングもされている。赤みと霜降りの割合もちょうどいい。煮ても焼いても美味しいだろう。
これならどう調理して不味くはならないな。よく見ると通常個体より若干黒くなっている?触るとかなり堅いような感触、肉が相当詰まっているな。
巨体だったから筋肉もその分硬くなったのだろう。
とりあえずステーキ用と煮込み用にブロックにしよう。市販の包丁で切っていくが意外にもサクッと切れる。砥石で研いでいるからかな?
「せっかくの貴重な物だし知り合いにも配るか。いつもお世話になってるし」
熟成させた肉を分けてやろう。たぶん高級レストランで出るような肉だからな。
そのまま焼いても美味いのに熟成させた物ならもう言葉に出来ないくらい美味しくなるだろう。
「うし、こんなもんでいいか」
塊肉の解体終了っと。探索者になってから捌く機会が増えたから慣れたもんよ。
ひとまずステーキ用と煮込み用、どちらも塩麹漬けにして冷蔵庫に入れて置く。
明日になれば柔らかくなるだろう!
ついでに余った肉と脂肪は焼いておく。カリカリになるまでしっかりと焼き塩胡椒をさっと振って完了。
作業中のつまみにしよう。
◇
そして目的の牙だ。コレを待っていた。
魔猪は牙が1番重要な素材であり通常個体でも鉄を貫通するほどだ。
異常個体ならより凄いだろう。こればっかりは視てみないとわからんね。
「黄金眼、使用」
両目が黒色から金色に変化する。一時的だが効果は劇的だ。今なら全てを見通せるような万能感、全能感が湧いてくる。
……まあそこまで便利でもないけど。
集中して牙を見ると文字が浮かんでくる。
異常個体 巨大魔猪の牙
「銀の流星」によって強制成長させられた個体の牙
額の目は魔猪が望んだ結果出来た物
気性が荒くなり常に捕食しないと死ぬように再設計された
牙は特に変質しており魔鉄を貫通する性質を持つ
特性『金属特攻』
「やべぇ、なんだコレ?」
流石は異常個体。今の探索者装備はそのほとんどが魔鉄製だがそれを貫通する性質があったのか。
もちろん俺も使っている。防御してたら死んでたな。
まああの巨体で突進されればそもそも関係ないか。
それよりも「銀の流星」はなんだ?銀色の魔物はまだ発見されていない筈だが?第二階層の鉱山ならもしかしたらいるかも知れないが……。
うーむ。もっと下層の未確認の魔物か?それ以外は今のところわからないな。
「協会に追加報告するか?情報料の金は貰えるだろうけど……ダメだやめとこ」
どうやって知ったか絶対聞かれるだろう。この眼が協会に知られれば最後、監禁、能力の詳細実験、道具への転用までされるのがオチだ。
ここは法律がまともに機能していない。一般的に強盗や殺人といった常識的な法律はある。が探索中は人の目が届かないことが多い。地上ならともかくダンジョン内は魔境と化している。
暴力には暴力で対抗するしかない。
噂では未登録の奇物持ちは協会によってどうやっているかはわからないが加工されているらしい。良し悪しはあるが奇物はどれも強力な道具だ。なら自分達に都合良い人材に与えて戦力にするだろう。
まあ噂だけどね?噂を吹聴していた人はそのあと消えていなくなったけど。大穴にでも潜っているだろう、多分。
「まあ言わんとこ。まだ死にたくないし」
俺?目の力はパーティメンバーには知られているが協会には隠している。こんな噂があるくらいには信用できないし。
代わりに別の能力を申告しているので大丈夫なはず。バレても派生したと言えばいいだろう。
そんなに重要な事項でもないし安全にいこう。正体不明の魔物に魔猪が改造されましたなんて嘘と思われるだろうからな。
そんなことよりも肉ダレも作らないとな。醤油漬けにもしたいし味噌漬けもしたい。角煮でもいいし悩むなぁ……全部やるか!
ここは海上神秘都市アトランティス
世界中の企業が集まり急速に成長している島であり、一攫千金を狙う探索者で溢れている。
弱肉強食。文字通り食われる前に強くなることが生き残る近道だ。
倒して食って強くなれ。




