8話
地域交流会から数日後、センターに戻った面々はそれぞれの体験をノートに記していた。だが、その中には苦い記録もあった。
戦闘員の一人は、イベントで子どもに声をかけたが、怯えたように逃げられてしまった。ノートには震える字で「拒絶された」と書かれていた。
「やっぱり俺たちは嫌われてるんだ……」と彼は呟いた。
元ヒーローもまた、司会の途中で言葉に詰まり、会場が静まり返った瞬間を思い出していた。ノートには「声が途切れた」と記されていた。
「人前で話すのは、やっぱり俺には無理かもしれない」
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待合室の空気は再び重くなった。成功の喜びを味わった後だからこそ、失敗の痛みはより深く感じられた。
真琴は静かに言った。
「失敗は、外に出たからこそ経験できたものです。ここで立ち止まるのではなく、仲間と共有してください」
戦闘員はためらいながらもノートを開き、拒絶された体験を語った。すると別の戦闘員が声をかけた。
「俺も昔、同じように逃げられた。でも、続けて声をかけていたら、ある日笑顔を返してくれたんだ」
ヒーローもノートを見せた。
「声が途切れたのは事実だ。でも、子どもたちが拍手してくれたことも忘れてない。失敗と成功は一緒にあるんだ」
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仲間たちの言葉に、失敗した者たちは少しずつ顔を上げた。拒絶や沈黙は痛みを伴ったが、それを共有することで「自分だけではない」と気づけたのだ。
真琴は全員に新しい課題を与えた。
「次回までに、ノートに“失敗から学んだこと”を一つ書いてきてください。拒絶されたなら、その時に感じたこと。声が途切れたなら、次にどう工夫するか。失敗を未来につなげる言葉を探してください」
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その夜、戦闘員はノートに「拒絶は怖い。でも、声をかけ続けたい」と記した。ヒーローは「声が途切れても、拍手は残る」と書いた。
社会復帰支援センターの一日は、挫折と支えを抱えながら進んでいく。過去を背負った者たちが未来を探すためには、仲間の手を差し伸べ合うことが欠かせないのだった。




