6話
社会復帰支援センターの一日は、個人の課題から少しずつ広がりを見せていた。真琴は次の段階として、複数人での活動を提案した。
「今日は、皆さんで一つの作業をしてみましょう。小さな協力から始めます」
用意されたのは、地域イベントで使う看板作りだった。段ボールに文字を書き、色を塗り、組み立てる。単純な作業だが、複数人で役割を分けなければ完成しない。
元ヒーローは率先して声を出した。
「俺が文字を書く。人前で伝える練習にもなる」
戦闘員は少し戸惑いながらも、筆を持った。
「じゃあ俺は色を塗る。命令じゃなくても、手を動かせるはずだ」
作業はぎこちなく始まった。ヒーローは文字を大きく書きすぎ、戦闘員は色を濃く塗りすぎて紙が破れそうになった。だが、周囲の仲間が声をかける。
「文字はもう少し小さく」「色は薄く重ねた方がいい」
互いに指摘し合いながら、看板は少しずつ形を整えていった。
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途中、意見の食い違いもあった。
「赤で塗った方が目立つ」
「いや、青の方が落ち着いて見える」
ヒーローと戦闘員が再び衝突しかけたが、真琴が静かに言葉を挟んだ。
「違いが出るのは当然です。ここでは“どちらが正しいか”ではなく、“どう組み合わせるか”を考えてください」
二人は顔を見合わせ、やがて笑った。
「じゃあ文字は赤、背景は青にしよう」
看板は完成し、交流室に立てかけられた。そこには大きく「地域交流会」と書かれ、赤と青の色が鮮やかに並んでいた。
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作業を終えた後、戦闘員はノートにこう書いた。
「命令がなくても、仲間と一緒なら動ける」
ヒーローはノートにこう記した。
「声は一人で出すより、皆で合わせた方が強い」
真琴は二人のノートを見て、静かに頷いた。
「協力は、失敗や衝突を含めて成り立ちます。今日の看板は、その証です」
待合室に戻った仲間たちは、完成した看板を見て少し誇らしげな表情を浮かべた。社会復帰支援センターの一日は、個人の挑戦から集団の協力へと広がり、未来への可能性をさらに大きくしていった。




