表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、こちらSRSCです!  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

4話

交流室の熱気が冷めた翌日、待合室には重い沈黙が漂っていた。成功例を見た仲間たちは希望を抱いたが、同時に「自分にはできないのではないか」という不安も芽生えていた。


真琴は一人の戦闘員を面談室に呼び入れた。彼はノートを持ってきていたが、ページはほとんど白紙だった。

「課題はどうでしたか?」

戦闘員はうつむき、かすれた声で答えた。

「……書けませんでした。強みも弱みも、何も思いつかなかったんです」


真琴は静かに頷いた。

「書けなかったこと自体が、今のあなたの状態を示しています。無理に言葉を絞り出す必要はありません。ただ、“書けなかった”という事実をノートに残してください。それも一つの記録です」


戦闘員は戸惑いながらも、ノートに「書けなかった」と記した。だがその表情は暗く、成功例を見た仲間たちとは対照的だった。


---


別の面談室では、元ヒーローが真琴の前に座っていた。彼は「人前で伝えたい言葉」を課題として与えられていたが、ノートには戦闘の掛け声しか書かれていなかった。

「これが……俺の声なんです。励ます言葉なんて、思いつかなくて」


真琴は少し間を置いてから答えた。

「それでも構いません。あなたが“まだ戦いの声しか出せない”と気づいたことが大切です。次回は、その声を少しだけ変えてみましょう。例えば“守る”ではなく“支える”という言葉を探してみてください」


ヒーローは苦笑した。

「支える……か。簡単には出てこないな」


---


待合室に戻った二人の姿は、成功例を見た仲間たちとは違い、どこか影を背負っていた。仲間たちはその様子を敏感に感じ取り、空気は再び重くなった。


真琴は全員に向けて声をかけた。

「成功も失敗も、ここでは同じくらい大切です。成功例は未来の可能性を示し、失敗例は今の自分を映す鏡になります。どちらも記録し、次の一歩に変えていきましょう」


戦闘員はノートを握りしめ、ヒーローは窓の外を見つめた。彼らの歩みはまだ遅く、時に立ち止まる。だがその姿こそが、社会復帰の現実を映していた。


社会復帰支援センターの一日は、成功と失敗の両方を抱えながら進んでいく。過去を背負った者たちが未来を探すためには、立ち止まる時間もまた必要なのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ