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文字の剣(つるぎ)

作者:星 則光
最終エピソード掲載日:2025/10/23
 司法試験に挫折し、投げやりな気持ちで行政書士となった村嶋朗は、研修会で行政書士の今井正樹から「行政書士の武器は“書くこと”=文字の剣」と教えられる。半信半疑ながらも、その言葉に何かを感じ取った朗は、今井の事務所「ベントス」を訪ねる。そこで出会った実務家・山川の下で、外国人の在留資格の業務を手伝うことになり、初めて“人の人生”に直結する書類の重みを知る。
 ベトナム人実業家ロンの家族呼寄せ案件では、資本金要件の改正などで審査が厳しくなる中、追加資料の指示に苦悩しながらも、深夜までかかって書類作成に挑む。論理と感情、制度と生活の狭間で模索する中、「書くことが人を救う」という言葉の意味が、朗の中で静かに形を持ちはじめる。
 やがて申請は認定され、空港で家族が再会したという報せが届く。その瞬間、朗は自らの“文字”が誰かの人生を動かしたことを実感する。
 正式にベントスの一員となった朗は、地味ながら社会を支えるという事務所の理念に共鳴し、「遠回りでもいい」という今井の言葉を胸に、再び白い画面に向かう。
 ……書くことは、人を傷つけも救いもする剣。その剣を正しく振るう覚悟を胸に、朗の新しい日々が静かに始まる。
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