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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
9/22

8話 異能警察

 騒動の後、夏目班は三嶋を連れてとある場所を尋ねた。


「ここが異能警察の隠れ本部だ」


 行方の案内に連れられて来たのは、異能警察の隠された本部のある小さな地下施設だった。異能警察は普通の警察と違い、特殊な異能や武器を使って犯罪者を抑える為、犯罪者からの特定を避けられるように拠点を常に移動して造られている。


「やあ、異能探偵局。待っていたぞ」


 中からは、長く綺麗な銀髪を靡かせ、ピシッと警備服を見に纏った綺麗な女性が出て来た。

 その姿に、三嶋は思わず声を上げる。


「おわっ! ()()()()()()じゃねぇか!」

「お、悪ガキも一緒か! また悪いことしたのか〜? あんまり表の警察に迷惑掛けてやるなよ〜!」


 と、三嶋と異能警察の女性は、顔見知りな様子で話し始めた。


「おや、二人はお知り合いなんだね。改めて紹介するよ。彼女は異能警察庁長官、八百万神子(ヤオヨロズ ミコ)さん」


 ニコニコと、夏目は輪に入って紹介する。


「やあ、私は異能警察の長官を勤めている八百万神子だ。君がNo.2の『火炎放射』さんか。想像してたよりも可愛らしい子じゃないか。こんな可愛らしい子に、お前たち三人はこぞって負けてるって訳か」

「俺様は別に悔しがってねぇよ! アイツらが勝手にライバル心燃やしてるだけだろ!」


 二宮の割って入れない空気感を察し、行方が入る。


「あの、お二人はどういうご関係なんですか?」

「ああ、コイツと二宮さんが通ってる異能教学園ってあるだろ? あそこの現生徒会副会長の八百万昴ってのが、私の弟でな。生徒会長の慎太郎と三人こぞって、小さな頃からの幼馴染なんだよ」


 二宮の通っている異能教学園の生徒会、会長 No.4 四波慎太郎と、副会長 No.8 八百万昴、そして、今ここにいる当事者のNo.3 三嶋光希は、幼い頃からの友人同士で、互いに競い合ってきた仲だった。そして、副会長 八百万昴の実の姉が、異能警察庁長官を務める八百万神子だった。


「と言うわけでー」


 異能警察本部の一室に集まると、夏目班と三嶋、異能警察庁長官 八百万、書記の千羽彼方(センバ カナタ)という男が腰を下ろし、夏目は話を始めた。


「異能探偵局の情報収集も大分大詰めになった。そろそろ異能警察とも協力し、本格的な犯罪者グループの確保に迫りたい」


 今回、異能警察まで立ち寄った理由がこれだった。

 あと一歩のところで、コードネーム:()()()()、コードネーム:()()()()、そして、瞬間移動の異能を持つ()()()()に逃げられてしまったが、異能探偵局は既に、数箇所の取引現場を押さえている。

 次こそは確実に捕らえたいところなのだ。


「アジトの特定は?」


 キリッとした目付きで神子は夏目を見遣る。


「それが、今回の犯罪者グループは騒動の手練れ揃いでアジトの特定は出来ないと判断したよ」


 夏目は、相対した犯人たちの様子を伝える。


「三嶋が拘束……? 光の異能だぞ……?」


 そして、現場に居合わせた三嶋の話に移る。神子が動揺しているのには理由がある。


「そう、光の異能、三嶋くんが拘束された。要するに」


 全員が、考えたくもない想像を同時に浮かべる。


「コードネーム:キキョウという男の花の異能は、()()()()()()()()()()がある」


 本来、光の異能である三嶋は、光そのものに変化する。つまるところ、影で覆わない限り拘束が出来ない。それを異能の力で拘束してしまったのだ。

 しかし、夏目が異能警察を訪ねたのは、この厄介な異能に出会したからだけではなかった。


 ドタン!


 大きな音で立ち上がる神子。


「ハァ……またですか」


 ずっと黙っていた千羽も、困った顔で溜息を溢す。そして、静かに震えながら、神子は笑っていた。


「え……?」


 その姿に少し恐怖心を感じる二宮。


「ハハハハ!! 相手にとって不足なし!! 早く戦いたいなぁ〜!!」


 この異能警察庁長官、八百万神子は、極度の戦闘狂であり、現No.3・No.4・No.8を震え上がらせる程の実力者でもあった。そして、それらは周知の事実であり、その場にいた二宮以外は、いつもの様に顔色を変えずに見遣っていた。


「夏目!! 次の取引はいつだ!!」


 そして、決起溢れる神子は再び夏目を見遣る。


「アハハ、三日後の午後五時、西区の地下街路地だよ」

「よし、千羽! ちゃんとメモは取ったな!! 我ら異能警察部隊全員を招集させるぞ!!」

「じゃあ、後はお任せでいいのかな?」

「バカを言え、私たちが戦うのだ。貴様ら異能探偵局は人員を集め、決して逃さない体制を整えておけ!!」


 こうして、三日後、異能探偵局と異能警察の総動員による、今回のドラッグ事件大詰めとなった。


「だ〜か〜ら!! なんでお前は事務所に連絡一本も入れずにそんな大切な予定を入れるんだ!!!」


 そして、帰宅して早々に、夏目は春木に怒鳴られる。


「だって、三嶋くんもいたし成り行きで〜? でも、相手は見たところ実力者が三人。あとは下っ端でしょ!」


 しかし、春木は顔を曇らせる。


「お前がそう好き勝手やっている間に、冬芽班は新たな情報を仕入れてきたんだ……」


 そう言うと、夏目班三人の前に、紙を提示する。


「これ……! ジュースにキキョウ!?」


 そこに書かれていたのは、ジュースやキキョウ、そしてそれらを束ねる犯罪者グループの名簿だった。既に一味だと思われる人物データを集めていた。そして、その数は十名を上回っていた。


「そして、三日後は冬芽班は動けない。それでもお前は、この戦力差で、誰一人も逃さず勝てると言うのか!」


 しかし、夏目は怒っている春木を煽るような眼差しを向け、ニヤッと微笑む。


「え……? 春木くん自信ないの?」

「あぁ……?」


 すると、春木は徐に紙を破り捨てた。


「勝てるに決まってんだろ〜!!!!」

「ぷふっ、ほんと、春木くん単細胞だよね〜」


 夏目はニヤニヤしながら行方たちに耳打ちした。


「それで、春木さんを焚き付けたのはいいですけど、この戦力差で本当に勝つ算段があるんですか?」


 不信そうに、行方は夏目に尋ねる。夏目はニヤッと答える。


「ああ、絶対に勝てるよ」

「分かりました。じゃあ、今日はもう遅いから帰ろう。二宮、家の近くまで送って行く。バイクに乗れ」

「え……う、うん……」


 少し困惑しながらも、二宮は行方の指示に従った。

 そして、行方はいつもの時速40kmキープで車道を走り出す。


「ねえ……夏目さん、あんな自信気に言ってたけど、本当に勝てるの……?」

「勝てる。あの人がそう言った」

「そう言ったって……なんの根拠も……!」


 暫くの静寂の後に、行方はウィンカーを出しながら停車する。


「あの人が勝てると言った事件で、負けたことはない」


 そう言うと、再びバイクを走らせた。


「それと……」

 

 そして、バイクの音が鳴り響く中で、行方は二宮にしか聞こえない声量でそっと告げた。


「黙って聞け。異能探偵局か異能警察か、どちらかにスパイがいる。注意しててくれ」


 そして、二宮宅付近に停車させると、直ぐに行方は去って行ってしまった。

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