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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
8/22

7話 鬼ごっこ

 夏目班が目的の場所、潰れてしまった廃工場の立ち並ぶ角の施設に、行方たちは身を隠して待っていた。


「なんだか……如何にもって感じね……」


 二宮にも緊張の様子が伺えていた。意識して事件に参加するのは初めてだったからだ。

 すると、一人の男がフラっと姿を見せる。


「え……ちょっと待って……。あの人……」


 その姿に、二宮は目を丸くする。


「なんだ? 知り合いか?」


 行方の視界にも男の姿が目に入る。男は、金髪の短髪に、()()()()()()()()を着崩した異能教学園の生徒だった。

 そして、男は急に声を荒げる。


「オイ! お前か! 最近、俺たちの島を荒らしてるのは!」


 姿を現したのは、以前行方が取り逃した、フードを被った少年、コードネーム『ジュース』だった。


「今日は大将自らお出ましですか?」

「違ぇよ、俺は止めさせに来たんだ。そのドラッグを()()()()()()()()()をな!!」


 そして、やり取りの中、突如として行方は動く。


「行くぞ」

「え!? 今!?」


 そして、二人の間に割って入った。


「異能探偵局だ。ジュース、お前の身柄を拘束する」

「ハァ……。またアンタたちか。懲りないね」


 そして、金髪の男も行方たちの姿に目を丸くする。


「おわ、二宮じゃねぇか。なんでこんなとこに……」

「あはは……。こんばんは……」


 苦笑しつつも、金髪の男に会釈を送る二宮。


「流石に四対一は不利か……。まあ、交渉相手もいないんじゃ話にならないし、逃げるとするよ」


 ニヤッと余裕の笑みで背を向けるジュース。


「夏目さん!」

「分かってるよ……行秋くん!」


 その瞬間、夏目はジュースの目前にワープした。そして、すかさず行方もジュースの背後に回る。


「ふーん、最初から僕の逃走ルートも計算済みね……」


 すると、ジュースは腕をぐるぐると回す。


「異能探偵局は切れ者が多いって聞いてるし、僕としてもそんなの想定内なんだけどね」


 そう言うと、ジュースはまたしてもニヤッと笑う。


 ドコォ!!

 

 そして、大きく跳躍すると、高さ何十メートルもあるビルの天井を破壊してしまった。


「じゃあね、探偵局」

「夏目さん、第二プランへ移行します!!」


 その瞬間だった。


「それで逃げ切れたつもりか……?」


 金髪の男は、廃ビルの屋上から逃げようとしていたジュースを捕まえていた。


「ハァ!?」


 この行動には、流石のジュースも声を上げる。予想外の事態に、行方も目を細めている。


「二宮……。アイツ、何者なんだ……?」


 金髪の男は、ジュースを再び階下に落とすと、躊躇なく身動きを取れなくさせ、両腕を掴んだ。


「この俺……黄金の野獣の島荒らして逃げられると思うな!」

「彼は、異能教学園が誇るNo.3の三年生。逸れ者の大将にして、()を操る異能者、『閃光一線(せんこういっせん)』と異名を持つ、三嶋光希(ミシマ ミツキ)先輩……!」

「あの生徒会長よりも上のナンバーか。そりゃあ、ジュースも手も足も出ないな」


 そして、行方たちがジュースに近付いた瞬間、突如として男は行方の目の前に現れる。


「やあ、こんばんは。探偵局さん」


 白髪のその姿は、可憐で、ゆらりとした男だった。


()()()()さん……すみません……」

「大丈夫だよ、ジュースくん。交渉相手が待ち伏せじゃあ流石に捕まるのも仕方ないもんね」


 そう言うと、三嶋の周囲に白い花を生み出し、三嶋を拘束してしまった。


「その為に、今日は僕も来たんだ」

「夏目さん……」

「大丈夫だよ、行秋くん……。やることは同じだ……」


 行方たちが警戒する中、男は飄々と立ち上がる。


「ねえ、異能探偵局。一つ、僕と勝負しないかい?」

「勝負……?」

「まずここにいるジュースを逃がしてやって欲しい。彼はまだ年端も行かない少年だ。その代わり、僕と()()()()をしよう。僕は君たちに危害を与えない。彼が逃げ切るまでに僕を捕まえたら、アジトの場所を教えよう」


 そう言うと、三嶋への拘束を解いた。


「そちらは四人、僕は一人。それに加えて、現役No.2とNo.3もいる。どうかな?」

「本当にアジトの場所を教えると……?」


 夏目は白髪の男の提案に反応を示す。


「夏目さん、罠ですよ!! こんなの、勝負になるわけがないじゃないですか!!」


 夏目の挙動に、二宮はすかさず仲裁した。しかし、二宮の言動を行方は更に制した。


「いや、乗りましょう。キキョウと呼ばれた男は、No.3の三嶋を一瞬で拘束した男だ。実力が底知れない。二人掛かりで交戦となったらこちらが危うい」

「そうだね、俺も賛成だ」


 こうして、ジュースは余裕綽々と去って行った。


「さあ、勝負開始だ……!」


 キキョウの合図と共に、夏目は行方に駆け寄る。


「行秋くん、分かってるね?」

「もちろんです。行ってください」


 すると、夏目は外へと向かって行った。


「あらら? 彼は参加しないのかい?」

「いや、あの人の異能は特殊なんだ。貴方を捕まえる為の策だ。気にしないでくれ」

「そっかぁ……それは楽しみだ……」


 最初に動いたのは、No.3の三嶋だった。三嶋は光の異能者。光の速度であらゆる場所へ移動することができる。

 直様、キキョウの背後を取ると、瞬時に捕まえる。


「な……!?」

「さあ……現役異能上位者の実力を見せてくれ……」


 捕らえたと思ったキキョウは、忍者の分身の術の如く、花に化して消えて行ってしまった。


「行方くん、もうここ取り壊し予定なのよね!?」

「ああ、そうだ」

()()()()……しっかり覚えてるわよ……!」


 二宮は、自身の両手を赤く光らせる。行方は二宮の行動を察知し、ボックスを取り出す。


「灰に……なりなさい……!!」


 ボォン!!


 廃ビルを丸ごと覆う爆発を、二宮が仕掛ける。

 しかし、


「あらら……可哀想に……」

「あの爆発でも……効かない……!?」


 キキョウは、自らの周囲全てに枝を纏わせることで、爆発の外傷を全て防いでみせた。


「さあ、捕らえたぜ」


 しかし、その爆煙に乗じて、三嶋が動いていた。今度はしっかりとキキョウを捕らえていた。


「廃ビル内に光はないから、少し弱っていたが、空から月の光が差し込んでパワーアップした。もうお前はどれだけ草を生やしたところで逃げられねぇぜ」

「わあ、流石だね。No.3にNo.2……」


 そして、更にその背後に――――


「そして……行方行秋……。異能探偵局の頭脳と呼ばれるだけのことはある」


 行方は三嶋の背後で拳銃を構えていた。先程の二の舞にならぬよう、王手を取ったのだ。


「その銃の香り……中身は銃弾ではない。僕だけに効く、()()()()()()()()()()だね」

「そうだ。No.3が先程のように拘束されても、お前をここで確実に捕らえる」

「流石だね。じゃあ、奥の手でも使っちゃおうかな……」


 その瞬間、キキョウの眼前に仮面の男が突如として出現した。


「次に会える時を楽しみにしてるよ。探偵局さん」


 そう告げると、仮面の男と共に去って行ってしまった。


「瞬間移動の異能……。これが狙いだったのか」


 そして、行方は夏目に電話を掛ける。


「すみません、待機してもらってたのに……。瞬間移動を持った仲間がいたらしく、逃げられました」


 電話の後、暫くして苦笑いを浮かべた夏目が帰ってきた。

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