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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
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6話 違法ドラッグ

 異能探偵局では、常に一人の男が慌ただしくしていた。


「あー! もうまただよ、この事件!!」


 そう声を上げるのは、夏目の同僚、春木春臣。


「どーしたの? 春ちゃん」

「春ちゃんじゃねぇ!!」


 いつもの飽きないテンプレなツッコミを入れると、春木は一枚の紙を夏目の机に荒く置いた。


「夏目……お前の管轄だよなぁ……!?」

「あー、この事件か。そうだねー、抑えても抑えてもキリがないんだよねー」

「犯罪が起こるのは仕方ない……。ただ……」


 そう、春木が常に、夏目に対しイライラした粗暴を見せるのはこれが理由であった。


「なんでお前の管轄の書類も俺が整理してんだよ!」

「いいじゃんいいじゃーん! 春ちゃんの方が字が綺麗なんだしー、俺も外回りばかりで疲れちゃうからー!」


 誰しもが入り辛いその喧騒に、行方は容赦なく立ち入る。


「これ、この前の事件ですよね。最近、頻度増してませんか?」


 そして、春木が乱雑に置いた紙を眺める。


「そうだねー、俺たちがSDカードを横から取っちゃったから、少し焦ってるのかもしれないね」


 この事件は、先日、二宮が研修と称してゴミ拾いをしていた時に入手したSDカードのことである。


「それにしてもお手柄だったねー! 二乃ちゃんの入手したこのSDカード!」

「え、あ、はい!? そのSDカードの事件ですか!?」


 急に振られた二宮は困惑を露わにする。書類などは基本、支部長たちが管理をする為、先日の事件の詳細を未だ聞けてはいなかった。


「あの……それってなんの事件なんですか……?」

「あー、そう言えば説明してなかったね。俺たちが今追っているのは、『違法ドラッグ』のことだよ」

「違法ドラッグ……? 薬物ですか……?」

「まあ薬物……かなぁ……。一応、人体被害が起きている様子は見られていないから、医学的に悪いとは言われていないんだよねー……」

「それなのに "違法" なんですか……?」


 すると、行方が書類を持って二宮の前に出る。書類には、真っ黒なカプセル錠が映されていた。


「これが、事件のドラッグ。無能力者が使用すると、()()()()()()()()()()ことができ、異能力者が使用すると、()()()()()()()()()()()()()ことができる」


 その話を聞き、二宮は青褪める。

 本来 "異能" とは、生まれつき持っている力であり、外部から強引に取り入れることは出来ない。もし外部から取り入れしてしまえば、人体にどんな被害が及ぼされるが未知の領域だからである。


「でも……人体に影響は見られていない……? それって正直……すごい進歩なんじゃないの……?」

「そうだな。功績だけ見れば凄い代物で間違いない。ただ問題は二つ。一つは、()()()()()()()()()()()こと。表舞台で研究者が発表し、医学的にも安全だと認められていればノーベル賞物だろう」

「もう……一つは……?」

「ここまで広まっているのに、発表がされずに裏取引しかされていない薬ってことは、『今はまだ見られていない()()()()()()()()()()()()』と言うことだ」

「そ、そんな薬……! 早く止めないとじゃん!!」


 声を上げる二宮。しかし、他の局員たちは苦い顔を浮かべていた。


「な……何……どうしたんですか……皆さん……」


 すると、夏目は苦笑いで二宮に答えた。


「いやね、俺たちも結構情報は掴んでるから、実物の回収を試みてるんだけどね……」

「凄いじゃないですか……! 流石です……! その回収っていつなんですか?」

「ああ、今日だよ。もう局員が行ってるんだけど……ちょっと()()()()でね……。冬美ちゃんも着いて行ってるから大丈夫だとは思うんだけど……」


 そう言った瞬間、事務所の扉は大きな音で開かれる。


「ミッション〜〜……コンプリート!!!」


 大きな声で入ってきたのは、二宮と年齢もそう変わらないロングヘアーの女性だった。


「え……あの……」


 そして、後ろから「ハァハァ……」と、見るからに疲弊している冬芽の姿も現れた。


「その様子だと、回収は出来たみたいだね」

「はい! この通りであります!!」


 ビニール袋に入れられた、黒いカプセルを掲げる。


七色(ナナイロ)、重要書類だ。そんな高らかに掲げるな」


 意気揚々と書類を掲げた女性を静止させる行方。そして、いつもの光景かのように冷静に前に出て、七色を二宮の前に立たせる。

 

「二宮さんも居るわね。彼女の紹介をしておくわ。彼女は七色(ナナイロ)ナナ。一応、私の部下よ」

「え、もしかして、No.7『夢想絵画(むそうかいが)』の七色ナナさんですか!?」


 二宮は、その名を聞いて驚愕を示す。


「本来、異能の本領は高校生が一番強力と言われている中で、卒業後に本領を発揮して今年初の十八歳以上にして一桁台に降臨したダークホースですよね!?」


 そう、七色ナナは異能者の中で有名だった。二十歳から徐々に異能の力が弱まると言われるが、一番強力に扱えるのは十五歳から十八歳と言われている。しかし、七色ナナは十八歳になるまで圏外に属し、十八歳を超えて急に現れた類を見ない人間だった。


「えへへ〜、そんなに私、有名人なのかぁ〜」

「七色さんって言ったら……そりゃあ異能者の間では有名ですよ。しかも異能は『対象に好きな夢を見させる能力』って、まさに最強じゃないですか……」

「眠らせられるのは確かに無敵だけど、私に攻撃力とかはないから微妙だよ〜。そんなことより、No.2の二宮さんの方が凄いじゃん! 探偵局も安泰だね!」


 そんなやり取りの中、行方が立ち上がる。そして、七色の頭を書類で優しく叩いた。


「ほら、七色。大切な書類だ。まずは調査報告と報告書の作成。それから……」

「もう〜、分かってるよ! 行方くんはホント、気難しくて真面目さんだよね〜!」


 ブツクサ言いながら、冬芽に連れられ、七色は書類室へと入って行った。


「なんか……イメージと違う人だったな……。と言うか、行方くん、すごく親し気だけど……」

「ああ。七色は高校の同期なんだ。ほら、冬芽さんたちの班の後は俺たちの仕事だ。行くぞ」

「え、ちょっと……!」


 行方と夏目は、書類にサラッと目を通すと、暗いジャケットを着て外出の準備を始めた。


「行くって……急にどこに!?」

「冬芽班は情報収集班なんだ。そして、僕たち夏目班は犯人の追跡からアジトの特定まで。戦闘力の高い春木班を主力に交戦班と分けられているんだ」

「ってことは……」

「これから、()()()()()()()()()


 急な展開に着いて行けない二宮ではあったが、こんな展開も慣れ始めてきていた。

 二宮の覚悟が決まるまでが早くなっていた。


「安心しろ、今回の二宮の仕事は『拘束』だ。余計なことは考えなくていい。お得意の "火炎放射" で、犯罪者を捕まえてやることだけ考えろ」

「わ、分かった……!」


 そして、夏目班はドラッグ転売されている目的地へと向かった。

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