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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
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4話 異能教学園

 二宮は、怒涛の連休という名の異能探偵局の試験を受けて、いつもの学校生活に戻っていた。

 校門を潜ると、周りは二宮を意識はしない。何故なら、この異能教学園とは、二宮二乃に次ぐレベルの高い異能者の集う学校だったからだ。


「二乃〜! おはよう〜! 随分とお疲れだね!」


 鞄を振り回しながら二宮の前に現れたのは、


「相変わらず元気ね。ナルは」


 十二鳴美(ソニ ナルミ)。No.12の実力者である。しかし、一桁と二桁の実力には大きな差があり、異名を持つのはNo.9までとなる。

 

「朝からホント、騒がしいこと。異能教の恥ですわね」


 そう言いながら十二の前に現れたのは、青いロングの巻き髪の四波志帆(シバ シホ)だった。


「あら〜、No.14の『私以下』の四波さんじゃ〜ん! どうもおはようございます〜!!」

「十二さん、言っておきますけど私たちの実力は大して変わりませんからね!!」


 二人は、犬猿の仲であった。


「私のお兄様みたく、もっと異能教学園生としての誇りを持って、周囲に迷惑を掛けずにご登校下さる?」


 四波慎太郎(シバ シンタロウ)。異能教学園が誇る生徒会長にしてNo.4の実力者。才色兼備で、二宮より順位は劣るが、学校で注目を浴びるとしたら、彼であった。


「何をしている。急がないと遅刻だぞ」


 そんなやり取りの中、後ろから注意を促すのは、銀髪にキリッと眼鏡を掛けた男だった。


八百万(ヤオヨロズ)先輩……。すみません、急ぎますわ……」


 そして、三人はそそくさと教室に向かった。八百万昴(ヤオヨロズ スバル)、生徒会副会長にして、No.8の実力を誇る三年生。

 朝礼のチャイムが鳴り、先生が教壇に立つ。


「えー、今日から一ヶ月間、大学から実習生が来る話は聞いているな。それじゃあ、入って」


 ガラリと扉は開けられ、二宮は目を丸くする。


「東京大学科学部から来た行方行秋です。よろしくお願いします」

「はぁ!? なんでアンタが……!?」

「なんだ、二宮! 知り合いなのか! なら、学校の案内とかしてやってくれ!」


 二宮が困惑する中、行方は相変わらずの無表情でそのまま教壇横の席に着席し、朝のホームルームが進む。そして、ホームルームが終われば、お決まりのあの時間が訪れる。


「ねえー、行方先生〜!」

「東京大学ってすごい頭いいよね!」

「先生はどんな異能が使えるのー?」


 少し歳の離れた大学生。行方は多少ルックスが良い分、女子生徒からのいい的になってしまっていた。

 が、


「僕は無能力者だ」

「あ、次の授業、移動教室だったわよね……」

「急がなきゃ〜……遅れたら怒られちゃう〜!」


 異能教学園は、異能の強さこそが全て。無能力者と明かせば、自分に寄り付かなくなることは行方自身が分かって発言していた。しかし、一人の少女だけが残った。


「あ、あの……先生は彼女とか……いるんですか……」

「ちょ、ちょっと……ナル!?」


 顔を赤らめ、ザ・意識してますと宣言するような質問を投げ掛けるのは、十二鳴美だった。二宮も今まで遠目から眺めていたが、十二の突飛な質問に思わず身を乗り出してしまう。


「彼女はいない。それより、君は十二鳴美だな。君にはすごく興味があるな……」


 そう言うと、十二は更に顔を赤らめる。


「ちょ、ちょっとアンタ!! 何口走ってんのよ!! 先生が生徒に手を出すなんて、それこそ犯罪でしょ!?」

「二宮か。何を言っている。僕は、彼女の『音波の異能』に興味があるんだ。音を操れるなんて凄いだろ? 攻撃にも起用できるし、医療やその他多数で活躍できる」

「ほ、ほら、ナル聞いた? コイツ、こんな感じでクッソ真面目な奴なの! ホント、やめといた方がいいから!」


 顔を赤くしたまま、十二はそそくさと移動教室に出て行ってしまった。


「ほら、お前も行かなくていいのか?」

「余計なお世話よ! たく……発言には気を付けてよ。私の友達なんだから!」

「あと、コイツではない。行方 "先生" だ」

「分かってるわよ!! せんせい!! ふん!!」


 そして、二宮も急いで支度して教室を後にした。


「ナル〜! 大丈夫だった? あの先生、急に変なこと言うから、驚いちゃったわよね〜……」


 しかし、十二にいつもの元気はなく、顔は未だ赤い。


「もしかして……」

「私、初めてだったの……」

「な、何が……?」

「私の音の異能は、実績こそ出せているけど、正直あまり褒められたことがなくて……。だから、あそこまで真摯に私の異能を褒めてくれたのが嬉しくて……」

「ナル……」


 しかし、二宮はブンブンと顔を振る。


「で、でもあの先生は辞めた方がいいと思う!!」

「なんで……?」

「それは……その……」


 そして、二宮は一瞬の内に "クソ真面目" と、悪口を思い浮かべてみたが、衝動的に動いてしまうだけで、どちらかと言うと真面目な二宮にとって、クソ真面目と言うのは何もマイナスポイントではなく、特にコレと言った理由が出てこなかった。


「もしかして、二乃ちゃん先生のこと好きなの!? 前々から知ってたみたいだし、なら、私が好きになるのも止めようとするか〜!」

「ち、違うわよ!! それは絶対ないから!! 好きになっていいと思うわよ!! ウンウン!!」

「え? そう? じゃあ、思い切ってもっと話し掛けてみようかな〜」


 そして、ルンルン気分で十二は移動教室に向かった。二宮には謎のどんよりした気持ちが残っていた。

 そして、長い昼休みが始まる。


「二宮」

「わ! 何よ……急に……」

「お前、朝のホームルームで僕を案内しろと担任から言われていただろ。忘れたのか?」

「お、覚えてるわよ……!」


 そして、チラッと横に視線を向ける。


「あ、あの! 私も一緒にいいですか!」

「十二か。いいぞ、二宮とも仲良いらしいしな」


 やっぱりか〜……と、二宮は汗を垂らした。

 そして、着々と重要施設の紹介を進める。


「ここは何の教室なんだ?」

「あ、そこは生徒会室……」


 その瞬間、生徒会室の扉はバタリと開かれる。


「む」

「げ……生徒会長……」


 すると、生徒会長、四波慎太郎は、行方のことをぐるぐると舐めるように見始めた。


「なんだ?」

「貴方が今日から来た実習生ですね。私はこの学園の生徒会長、四波慎太郎と言います。どうぞ、よろしく」


 そして、四波は手を差し出す。それに対し、行方も手を出し、握手を交わした。


「ふむ、いい筋肉量だ。No.4の生徒会長は、上から目線だから気を付けるように言われていたが、No.4の自身の実力に怠慢せず、日々努力の跡が伺える」

「ちょ……生徒会長に何言って……!」


 しかし、四波はその言葉に泣き崩れていた。


「わ……分かってくれるんですか……! 私はまだまだ力不足だから……日々努力して……ウゥ……!」

「君の努力はきっと結ばれる。応援しているぞ」


 そうして、行方は四波の肩にそっと手を掛ける。


「ひぐっ……お名前をお聞きしても……?」

「行方行秋、東京大学科学部から来た。よろしくな」

「東大……貴方も努力されたんですね……」


 またしても四波は泣き崩れてしまった。


「生徒会長のこんな姿……初めて見たんだけど……」

「わ、私も……」


 こうして、二宮の友人、十二からの恋心と、生徒会長、四波からの尊敬を受け、行方の実習生初日は幕を閉じた。

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