表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第二章 学園騒乱編
33/40

17話 異能教徒

 行方が事務所に向かうと、そこには事件の前兆を思わせる顔ぶれが立ち並んでいた。


「ジンさんに八百万長官……夏目さんに呼ばれて来たんですけど、春木さんと揃っていないと言うことは、()()()()()()()()……ってことですかね?」


 ジンは、青褪めた顔で行方に向き合った。


「そうだね、きっと()()()()()()()()()だと思う」


 次いで、異能警察長官、八百万神子も向き合う。


「私たちが以前逃したコードネーム『キキョウ』。一ツ橋剣二は、あの事件以降、()()()()()()として真っ先に捉えるべき対象となっていた」

「そこまでは聞き及んでいます。十年前のNo.2にして、現在異能の複数持ち。第一級になるのは当然かと」

「しかし、上からのお達しだ。キキョウは、今後一切、()()()()()()()()()()()()()()()こととなった」


 行方は顎に手を置く。しかし、焦る素ぶりは一切見せなかった。


「予想通りです。まあ最初にこの事態を予見していたのは夏目さんですが……」

「やっぱり国家と繋がっていたんだ……!」


 ドン! と、ジンは強く机を叩いた。


「どこまで罪を重ねる気なんだ……! 剣二……!」

「ジンさん、落ち着きましょう。国家と繋がったからと言って、キキョウが更に犯罪を重ねるとは限らない。そうですよね? 十文字局長?」


 そして、行方は奥に座る十文字燈篭に目配せをした。


「そうじゃ。夏目と春木は、現在、神奈川の異能祓魔院へと向かわせておる……」

異能教徒(いのうきょうと)……。神からの贈り物。異能力に取り憑かれた過激派集団……。遂に動き出しましたか……」

「恐らく、最初に狙われるのは異能祓魔院じゃろう。霊魂を祓う根源たる異能力集団を、最初に潰しておきたいと思うのは当然じゃからな」

「では、僕たちの目的は……」


 燈篭は目を尖らせた。


「異能教徒は、大元が捉えられない。枝分かれし過ぎている集団じゃ。しかし、枝分かれしていたとしてもその枝は根に繋がっておる。その枝をしっかり捉えるのじゃ」

()()()()()()()()()()()()()、そのまま芋蔓式(いもづるしき)に大元に辿り着くこと……ですね。了解しました」


 ジンは未だ青褪めた顔を浮かべる。


「ジンさん、憶測の話ですが、もしかしたら国家も異能教徒の動きに応じて、キキョウと取引をしているのかも知れません。キキョウは確かに既に大罪人ですが、だからこそ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もあります」

「そうだね……。気に病んでいても仕方ないか……」


 そして、燈篭は改めて行方に書類を渡した。


「引き続き、行方にはこちらの案件を追ってもらう」

「判りました。『()()()()()()()()()()()()()()()()()を捕獲する任務』ですね。檻口教諭の疑わしい行動は既に抑えました。あとは証拠だけです」

「ふふ……。頼もしいな。流石は夏目に鍛えられただけのことはある」


 行方は書類を受け取るとすぐに背を向けた。


「その話は、あまりしないで頂きたいです」


 そして、行方は探偵局を後にした。


   *


 翌日、異能教学園の校門には生徒会メンバーが立ち並んでいた。


「行方先生、おはようございます」

「生徒会長、四波慎太郎か。おはよう。今日は毎週月曜に行われる検査日だったな。僕も折角だし立ち会ってもいいか?」

「もちろんです! 生徒に対する姿勢、流石です!」


 やがて、疲弊した顔を浮かべる二宮が登校して来た。


「随分と疲れた顔だな、二宮」

「あ、行方くん……。おはよう……。昨日のレポート、なんてまとめればいいか分からなくて……」

「行方 "先生" だが、まあ許してやろう。提出できそうでよかったな。あとで、そのリボン直しておけ」

「はいはい……」

「はい、は一回だ」


 暫くして、三嶋グループもやんやと登校して来た。九恩の姿もそこにはあった。


「止まれ」


 やはり、止めたのは副会長、八百万昴。


「あ、今日は検査日か……。すまねぇ、すぐ直す」

「いや……必要はない」

「は?」


 ガシャン! ガシャン! ガシャン! ガシャン!


 すると、昴は全員の前に鋼を降り注いだ。


「どう言うつもりだ……? 昴……!」

「生徒会として取り締まっているだけだ」


 睨み合う三嶋と昴。


「ちょっと待て……! 落ち着け、昴……!」


 仲裁に入る四波。しかし、


「てめぇ……四波慎太郎!! よく私の前に姿を見せられたな!!」


 九恩は、敵意剥き出しに会長の胸ぐらを掴んだ。


「あの時は仕方がなかっただろ……!!」


 その九恩の圧により、三嶋グループの他の不良たちも威圧感を剥き出しにさせる。

 そんな一触即発の空気の中、


 パンパン!


「そこまでにしておきなさい」


 その空気を止めたのは、檻口だった。


「檻口先生……」

「もう始業のチャイムが鳴ってしまうぞ。いいじゃないか、服の乱れくらい今ここで直せばいいだけさ」

「確かに……。それもそうですね……。早計でした……」


 そう言うと、全員の前に下ろした鋼は消えた。


「おい、昴」

「なんだ、三嶋」

「後で話がある」


 そう言うと、三嶋グループは三嶋の指揮で全員速やかに服装を正し、校内へと入って行った。それに続いて、檻口に並び、生徒会も入った。


「あの……行方先生……」


 行方がその背に続こうとした瞬間、コッソリと校門を潜る生徒に引き留められる。


「十二か。遅刻ギリギリだぞ」

「すみません……。昨日徹夜しちゃって……。それより、私って音の異能じゃないですか……その、さっき喧嘩みたいなの聞いちゃって……。あとで、三嶋先輩と副会長が話すとかも聞こえちゃって……」

「十二はあんな小さな声も聞き取れていたのか」

「はい……。三嶋先輩の声から、覚悟のようなものを感じちゃって……。私、会長の妹の志帆とは少し仲良いから、三人の関係もよく耳にしてるし、心配で……」

「覚悟……。そうか、君は色んな人の声を聞いてきたことで、()()()()()()()()()()()()()()()()()も備わっているようだ。しかし、問題はない。()()な」

「なら、よかったです! なんか、行方先生が言うと安心しますね……!」

「それはそうと、走らなきゃ遅刻だぞ」

「あぁ! いけない!」


 そう言うと、十二は駆けて行った。


「副会長、昴の衝動的な行動……三嶋の覚悟……四波慎太郎と九恩の不仲……檻口教諭の歯止め……」


 行方はブツブツと朝の光景を脳内に刻む。


「よし、全て分かった。問題は、"あの子" だな……」


 そうして、行方も校舎へ入って行った。

 放課後、三嶋は昴と相対していた。


「話とはなんだ? 三嶋」

「もう檻口と関わるのはやめろ。昨日の不良集団を仕向けたのもお前たちだろ」

「先生を付けろ、三嶋」

「否定はしないんだな……。どうしちまったんだよ、昴! お前はそんな奴じゃなかっただろ!?」


 ガシャン!!


 再び、三嶋の眼前に鋼が振り落とされる。


「直に当てても、俺に罰は下らない。何故なら、俺は生徒会副会長で、貴様は不良グループの長だからだ」

「昴……」


 ヒリつく空気感の中、三嶋は歯を食いしばる。


「ダチが曲がった時、正してやるのがダチだ……」


 三嶋が足に力を入れ、異能を発動しようとしたその時、


 トン……


 ガクッと三嶋は肩を叩かれ、体勢を崩す。


「行方さん……!?」


 止めたのは行方だった。


「どうしてここが……」


 行方は後ろを振り返る。そこには十二と二宮の姿があった。


「十二の異能力で、君たちの居場所を探した」

「これはもう俺たちの問題……ダチの俺がなんとかしてやらなきゃいけないんだ!!」

「やはりそうか」

「やはり……? 俺の気持ちがアンタに判って……!」


 そして、行方は昴の奥に手を伸ばした。


「お前の気持ちではない。あそこに、檻口がいる」

「え……?」


 昴も行方の言葉に目を丸くした。その言葉に、檻口は静かに現れた。


「とうとう気付かれてしまったか……。まあ、もう十分手駒は手に入ったからいいか……」


 不敵な笑みを浮かべ、檻口は近付いて来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ