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異能探偵局  作者: 春木
異能祓魔院 第一章 異能開花編
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(11話 もう一人のアルバイト)

 楽の目の前に現れていたのは、先日の鬼道だった。


「やっぱてめぇか、しつけぇな。てめぇの悪霊は殴んねぇっつってんだろ」

「それはもう聞いたよ。今日は君とは戦わない」

「は? 俺たちを呼び付けたのはてめぇらだろ!」

「ふふっ、馬鹿共が勝手にしてることだ。僕はそんなものに興味はないんだ。むしろ()()とさえ言える……!」

「好機……?」

「あぁ。()()()()()()()、楽」


 そうして、鬼道は手を差し伸べた。鬼道は一体の霊も憑依させてはいない。言っていることが本当だと、楽でも理解していた。


「手は組まねぇよ……。けどまあ、取り敢えず俺たちは戦わなくていいんだな?」

「今はそれでいい。じゃあ、()()()()()()まで行くぞ」


 楽は少し呆然としながらも、鬼道に着いて行った。


   *

  

 その頃、睦月とシスターは、金髪の青年と交戦。


「アハハハハ!! まるで虫みたいだね!!」


 睦月は近付くことが出来ず、遠方から放たれる波動攻撃を異能で貫通させて避けていた。


「隊長! 私の力を使ってください……!!」

「ダメだ……。きっとコイツらは、シスターの力すら計算の内でこうして俺とシスター二人にしたんだ……」

「でも……それじゃあ隊長は……」


 そう、勝てない――――。近付けないで、少しずつ傷を負う現状に、金髪の青年も腹を抱える様子でじわじわと痛め付けていた。


「大丈夫だ……。任せろ……」

「ハハッ! 強がりも甚だしいね! 僕は物覚えの悪い老人とは違う! 睦月飛車角、十年前のNo.6、逸見桂馬、十年前のNo.5だ! その異能を計算し、過去のデータから絶対勝てないように考え尽くされてるんだ!!」


 鼻高々に笑う。しかし、睦月はその言葉に、ニヤッと笑みを浮かべる。


「異能力も人間の体力みたいなものだ。時期に僕の攻撃も避けられなくなる。もうそろそろ限界だろ……?」


 そして、金髪の異能教徒は手を翳す。


「死んでくれ、異能祓魔院。全ては神の為――――」


 見えない波動が放たれる中、睦月は動かなかった。


「隊長!!」

「 " () " 」


 次の瞬間、睦月は左へ大きく移動し、攻撃を交わす。


「な、なんだ!?」

「やっと来たか……。昨日は何時までゲームしてたんだ?」

「えっと……朝の六時っスかね……。八幡さんに電話で叩き起こされて急いで来たんスよ……」

「あの、彼は……?」


 フラッと現れたのは、ボサボサの黒髪にメガネを掛けた青年だった。シスターも異能教徒も呆然と見遣っていた。


「異能教徒のデータにはないだろう……。そりゃあ、シスターでも知らないほど、この仕事に参加しない、()()()()()()()()()()だからな……!」

「あ、初めましてシスターさん。一応アルバイトで、八幡さんに呼ばれた時にしか行かないんスよ。止水歩(シスイ アユム)って言います」

「歩! 悠長に挨拶してる暇はないぞ!! 次の攻撃が……」

「Aっス。大丈夫っスよ。もう判ったんで」


 そして、睦月は途端に右に大きく飛ぶと、ズパン! と波動は地面に直撃した。


「貴様……! 何者なんだ……!? なんで僕の攻撃が読める……!? 見えているわけはない……どうして……」


 睦月はニヤッと立ち上がる。


「驚くのも無理はない。何故なら彼は、"()()()()" だからな」

「無能力者だと……!? だったら尚更……」

「判らないか。神の言葉しか信用しないお前たちには到底判る訳ないな。異能探偵局にも、そして俺たち異能祓魔院にも、無能力者が雇われている。彼らは、異能力者である我々と同等に仕事をこなす。それは何故か」

「次はDっス」


 睦月は再び、大きく左へと避ける。大きな音で波動は地面に直撃。睦月はニヤッと笑い、立ち上がる。


「何故なら、彼らは "天才" だからだ」


 睦月は止水を見遣る。


「こちらから攻撃を仕掛けたい。行けるか?」

「んー、()()()で倒せます」


 その言葉に、金髪の異能教徒は顔を歪ませる。


「ハッタリだ!! 僕の攻撃が避けられても、僕に近付くだけでお前は吹き飛ぶ!! シスターの力だって僕たちは計算の内だ!! 僕は倒せない!!」

「試してみるか?」


 次の瞬間、睦月は勢い良く走り出す。


「A D D W W D A A D W S……W」


 止水の謎の英語に合わせ、睦月はその言葉に合わせ横移動と前進を繰り返し、攻撃を全て交わしながら正確に近付いていた。


「な、なんなんだ、その英語は……!!」


 そして、遂に相手の眼前へと迫る。


「三秒止まって、スペース……」


 三秒後、睦月は大きく飛び上がる。


「これも……避けられた……!?」

「隊長、最後、()()()()()です」

「あいよ!」


 睦月は右手を貫通させ、金髪の体内に腕を侵入させると、そのまま脊椎に少しだけヒビを入れた。そのまま、叫ぶことなく金髪の異能教徒は気絶した。


「大丈夫だ、異能警察には医療の達人がいるからな」

「隊長の必殺技、逸見さんみたいにかっこよくないんで、正直やり甲斐がないっス」

「お前……! 俺が医療を学んでなければ出来ない芸当なんだからな!?」

「あ、あの……先程から止水さんの言われている、英語……? は、なんなんですか?」


 一人着いて行けないシスターは、トトト……と二人に近付く。


「あぁ、コイツは()()()()なんだ。パソコンゲームのキーボードのキーなんだ。Aなら左、Dなら右、スペースはジャンプだ」

「え、えぇ……」


 少し引き気味にシスターは呆然とした。


「でも、この意味不明な伝達のお陰で、相手には動きを悟られないで済む。それに、歩の凄いところはゲームのキーでの情報伝達ではない」

「は、はぁ……。と、言いますと……?」

「コイツは、相手の呼吸、目の動き、筋肉の動きで()()()()()()()()()()()なんだ」

「それって……武道の達人の芸当じゃないですか!」


 すると、睦月は声を出して笑う。


「ハハハ! そうなんだよ! それをコイツは、()()()()()()()()()()()しているんだ」


 すると、止水は徐に鞄からPSPを取り出す。それを睦月は掴む。


「歩、神崎を助けに来たんだろ?」


 止水は黙って睦月を見た後、PSPをしまった。


「そうっスね……。まあ、神崎には恩があるんで……。まあ、少し、少しだけっスけど……」

「なら、ゲームは全部終わってからだ」

「了解っス」


 そうして、三人は奥へと進んだ。

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