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異能探偵局  作者: 春木
異能祓魔院 第一章 異能開花編
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(2話 アイ)

 街を素足で歩く二人は、注目を浴びていた。


「なんかすげー見られるな」

「私たちがこんなボロボロな格好で、素足で歩いてるのにみんな驚いてるのよ。普通は孤児だと思われる。警察って人に見つかったら、また施設に戻されるわ」

「え、じゃあどうすればいいんだよ! 隠れるのか!? でも海が見たいんだよな〜!」

「どちらにせよ、街で深夜に出歩いてたらそれこそ補導ってものをされるの。隠れ場所、と言うのも正しいけど、()()()()()()()()()を探さないと」


 そう言って、愛が前進し、楽もそれに続いた。街を歩く中で、悪霊はボソッと呟く。


「人の世も変わったな。昔は街中にも浮遊霊がうじゃうじゃ居ったのに、まるで姿がない。じゃから妾の神社に集まる者が増えるのじゃ」

「あー、そういや霊魂いねぇーなぁ。すげえ綺麗。視界良好って感じだ。人も全然死んでねぇのか?」

「いや、人自体は死んでおる。不死なんて人間は居らんからな。でも、霊魂が人類にハッキリ見えるようになってからは、葬式後直ぐ、()()()()()されるようになったのじゃ」

「そういや、俺たちを飼ってた奴らも、人を逃すな、()()()()()()()()()()()()って厳しく言われてたな」


 暫くすると、愛は立ち止まる。人気のない道を暫く歩き、辺り一面はコンクリートが広がる、ボロボロの廃工場が聳え立っていた。


「ここなら見つからないと思うわ」

「こんな何もねぇとこ、つまんねぇーよ! 施設と何も飼わんねぇじゃねぇーか!」

「いいじゃない、別に。ここで夜を過ごすだけ、昼間は自由に行動できるんだから」


 渋々と、楽は愛に続き、廃工場へと入っていく。


「つーか、なんでここなら見つからないって断言できるんだよ。いつ人が来るかなんて分かんねぇだろ?」

「だって、()()()()()を見ればここ数年間、誰も立ち入ってないことくらい分かるじゃない」

「は? 見る? 過去の映像? なんだそれ……?」

「え、楽には見えないの? 霊魂が見えてるなら過去の映像も見えてるのかと思ってた……」

「ふむ、もしかすると、その力が愛の異能なのかも知れんな。愛だけに『()()』という異能名にしよう」

「ちょっと、ふざけないでよ。でもそっか、じゃあこの過去の映像が見れることが()()()()なんだ……」


 そう言うと、訝しげに地下を見遣った。


「じゃあ、楽には、()()()()()()()()()の過去の記憶も見れてないんだね……」

「地下にいる霊魂か? 泣いてるのは察知できるけど、記憶までは別に見えてねぇよ」


 この廃工場には地下があり、霊魂が泣いている姿を二人はしっかりと捉えていた。


「この人……数十年もずっと泣いてる……。成仏させてあげる?」

「はぁ? なんのメリットがあるんだ? 放っとけよ」

「楽も落ち着かなくない? ずっと泣かれてるんだよ、私たちが寝てる間も」


 暫く考えた後、地下への通路を探し、二人は地下へ降りた。ずっと泣いていた霊魂は、二人の姿を確認するなり、涙が止まり、怒りの膨れ上がる顔付きへと変わる。


「なんだ……? コイツ怒ってんのか……!?」

「生前が酷い死に方をしている人なの。きっと、人のことが憎くて仕方ないのよ。早く祓ってあげましょ」


 愛がフラフラ近付くと、霊魂は紫色のオーラを発し、風圧で愛のことを吹き飛ばしてしまった。


「童ら! 此奴は悪霊じゃ! 悪霊は憎しみが大きければ大きいほど強い!! 祓う前に童らが殺されるぞ!!」


 突如として悪霊は声を荒げた。


「何よ……こんな霊魂見たことない……」


 擦り傷に手を当て、愛は苦い顔を浮かべる。


「ハハっ、俺たちゃ、ずっと祓う仕事をしてたけど、やっぱり外の世界は知らないことが多いな! 面白ぇ! 俺たちは確かに、殺した瞬間の霊魂しか祓って来たことないから、()()()()()()()()()()()()()()なんて初めてだ!」


 そう言うと、笑いながら楽は駆け出した。


「ガアア!!」


 悪霊は、無数にも生えた長い腕を楽に向ける。楽は持ち前の身体能力でスルリと交わす。


「すげぇ……楽しいぜ!! ギャハハハハハ!!」


 しかし、最高潮に上がったテンションのまま、口から飛び出た長い舌に叩き落とされてしまう。


「痛ってぇ〜……マジで化け物みたいに強ぇじゃん……」

「だから言ったじゃろ。此奴に関わるのはやめておけ」


 しかし、楽はまだ笑っていた。


「アハハ、こんな面白ぇ奴に会ったのによぉ、見逃してやるわけねぇーだろ!!」


 そう言うと、今度は駆け足で腕を交わしながら懐に潜り込み、紫色に溢れ漏れているオーラを掴む。


「楽! それはやめろ!!」


 しかし、悪霊の声も遅く、楽はその大量のオーラをそのまま身体に憑依させた。霊魂の姿は消滅し、辺りは一瞬にして静寂が訪れる。


「なん……だ……?」


 すると、楽の身体は突如として、ボコボコと内臓がどこからともなく膨れ始め、


「オエッ……オエェッ……!」


 嘔吐し、涙も止まらず、悲痛な声と共に暴れる。そして、楽の身体からは、何人もの霊魂が次から次へと数え切れないほど飛び抜けてきた。

 見たこともない光景、あまりの恐怖に、愛は隅で震えることしか出来なかった。


「うわっ、なんだこの量は……!!」

「中に人がいるかを優先しろ!!」


 暫くすると、どこからともなく、数名もの足音がバタバタと鳴り響いた。


「下に子供がいます! うわっ……奥に……得体の知れない少年が……霊を放出し続けてます……!!」

「なんてことだ……! 全員、配置に付け!!」

「ハッ!!」


 青髪で短髪の男性は、愛を守るように背を向け、大きな銃口を楽へと向けた。


「撃っちゃ……ダメ……」


 震えながらも、愛からなんとか出た言葉だった。その声に、男は振り返る。


「大丈夫だ。()()()()()


 そう言うと、隊長らしき大柄な男に合図を送る。


「準備完了! 開始します!」

「放て!!」


 ドォン!!


 大きな銃口からは、エネルギー体の透明な弾丸が飛び出し、楽の頭に命中した。次第に、楽からは未だ霊が放出され続けているが、楽は苦しみから解き放たれたかのように気絶していた。


神崎(カンザキ)!」

「はーいよ!」


 すると、男の背にいた神崎と呼ばれた女性は、姿を透明化させると、楽の身体をギュッと抑え込んだ。


「シスター、()()を」


 最後に、全員から守られるように姿を現した女性は、ただ一人防具を身に付けておらず、真っ白な装束に身を包み、両手を胸の前に掲げる。


「未だこの地に囚われている魂よ。その身を委ね、汝の道を示しなさい……」


 そして、その言葉に合わせ、隊長らしき男は、ゆっくりと歩み出し、楽の眼前で仁王立ちをする。


祓魔院(ふつまいん)より見届けます。汝、苦しみからの……」


 男は、静かに、楽の体内へと腕を貫通させる。


「「 ()() 」」


 その瞬間、一瞬パッと明るくなると、楽から霊は放出されなくなり、そのままパタリと倒れた。それを見た安堵からか、愛もそのまま気を失った。

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