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異能探偵局  作者: 春木
異能祓魔院 第一章 異能開花編
15/40

(プロローグ)

 その固い扉は、窓など付いてはおらず、外界の景色を見やることすら禁止された牢獄のような部屋だった。常に鍵が閉められ、仕事の時にしか外には出されない。

 ガチャっと、再びその扉は開けられることとなる。


「36番、仕事だ。出ろ」

「うぃ〜っす」


 36番と呼ばれた少年は、物心つく前に人身商売で売り飛ばされ、今この施設に軟禁されている。

 仕事内容は、


 ザシュッ!


「いち、にー、さん……えっと、次の数字なんだっけ。まあいいや、多分全員殺しただろ」


 ()()()。そして、


「出て来たなー、じゃあ全員()()()に行ってくれ」


 36番が札を何枚も投げ飛ばすと、人体から放たれた薄水色の形のない思念体は消滅した。彼の仕事内容は、暗殺、及び、()()()()()()()()()までもが仕事の範疇だった。

 そんな生活の中、突如として施設内は騒然とする。


異能探偵局(いのうたんていきょく)だ!! 早く逃げろ!! 異能警察(いのうけいさつ)もいるぞ!!」

「ダメだ……なんで非常口に夏目(ナツメ)春木(ハルキ)がいるんだよ……! うわぁ、石化された!!」


 その怒号は、36番の元にも響いていた。そして、暫くすると喧騒は収まり、36番の固い扉は、大きな音を立てて破壊された。


「これで36人目だ。本当に数字順に子供が入れられてやがる……!」


 その様子を、ただ茫然と眺める36番。


「お前、これから自由に生きられるぞ! まずは施設に預けられることになるが、きっと直ぐに順応できる!」


 その男は、真面目を絵に描いたような趣で、メガネを掛けて片腕を岩石のように変身させていた。その姿に、36番はただただ目を丸くしていた。


「なんだ……あの力……」


 そして、異能警察の下、計43人もの暗殺に利用されてきた子供たちは、各所散り散りに施設へと送られた。

 施設にいきなり児童が増え、元々いた児童たちとは馴染めず、36番は孤立していた。しかし、外の景色を見ているだけでも楽しかった。そこに、一人だけ見覚えのある女がいた。


「お前、4番って呼ばれてた奴だろ」

「そう、貴方もあの組織に使われてた人?」

「ああ、36番って呼ばれてた」

「そう」


 真っ黒のショートカットで、施設で綺麗にカットされたのだろう綺麗な髪を靡かせた物静かな少女だった。


「4番さー、ここの生活楽しい?」

「全然」

「俺は割と楽しいぜ〜、外の景色とか仕事以外で見たことなかったし。なんか()()()()()使ってる奴いるから、なんか見てて楽しいわ」

「そう」

「でも、だったら()()()はもっと楽しいのかな」


 そして、36番は高く分厚い壁を見遣る。

 子供の安全を考えられた大きな壁だが、元々軟禁されていた36番にとって、あまり環境は変わらない。"自由" と言うものを掴めてはいなかった。


「なあ、4番。俺と一緒に脱獄しねぇ?」

「ふふ、ちょっと楽しそうかも」

「じゃあ決まり、今から抜け出そうぜ」

「でも、こんな高い壁乗り越えられないよ?」


 すると、36番は施設の裏手の薄暗いボロ小屋へ行く。


「お、やっぱいた。気配はずっと感じてたんだよな」

「何これ、()()()()? 意識はないみたいだから、浮遊霊(ふゆうれい)ってやつなのかな」


 36番は徐に、猿の霊魂を手に掴む。


「え、何してるの?」

「コイツの力を……()()()んだ……!」


 そして、自らの身体に霊魂を流し込んだ。すると、ヒョイと4番を持ち上げ、高い壁を難なく乗り越えてしまった。


「意識ないだろうけど、猿、サンキューな。成仏してくれ」


 最後に、36番は霊魂を祓った。


「ねえ、普通はあんなこと出来ないんだけど」

「え、そうなの? みんな出来るのかと思ってた。まあいいや、確か日本の神奈川……? って言ってたよな。海が近いらしいぜ。行ってみようぜ」


 そうして、36番と4番は歩き始めた。



 異能祓魔院(いのうふつまいん) 始

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