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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
13/40

12話 異能力

 十年前、伝説の四人と謳われた学生たちがいた。

 No.4 春木春臣、No3 夏目夏人。No.2 一ツ橋剣二、そして、No.1 一ツ橋盾一。

 彼らは、No.5以下の実力を裕に超え、中でもNo.1の盾一は、弟の剣二すらをも凌駕する実力者だった。訳は、剣二には未だ、『異能を無効化する力』が備わっていなかっただった。

 そんな二人は、とある女性に片思いをしていた。なんの異能も持ち合わせていない無能力者の女性。しかし、そんな剣二の恋心に気付いた盾一は、自ら一歩を引き、弟の剣二が付き合うことになった。

 その一年後、剣二の彼女は事故により他界した。その事故は、当時から発生していた『子供の抑制できない異能による暴走』、つまりは、彼女の()()()()()()()()()()()()()()()だった。


「僕は……僕にはこんなに力があるのに……彼女を救うことができなかった……」

「剣二、仕方のないことだ。異能では出来ないこともある」

「僕も……兄さんみたいな異能を無効化する力があれば!! 彼女を死なさずには済んだかもしれない……。いや……付き合う相手が兄さんなら……」


 バシン!!


 盾一は、剣二を思い切り引っ叩いた。


「天地がひっくり返っても、そんなことは二度と言うな!!」


 その盾一の瞳からは、涙が零れ落ちていた。

 暫くして、ボロボロの家から、警察により現場の遺棄物の相談が寄せられた。中でも二人が目を丸くさせたのは、頑丈な鞄に守られていたと言う、()()()()だった。


「この白い桔梗……僕の花の……」

「お前は愛されていたんだよ、剣二……」

「うわあああああ!!」


 剣二は、ずっと抱えていた涙を溢れ出していた。そして、その花を握り締め、警察から受け取った。

 それ以降、剣二は()()()()()()()()()()()


   *


「それから、二人は互いに別々の道を歩む。ジンさんは力の行使をしない道へ、そして、キキョウは、力の行使をして人命を助けられる可能性、つまりは()()()()()()()()()()()()()()()()()()を探しているんだ」


 夏目が一頻り説明をすると、キキョウは立ち上がる。


「そうだ……僕も彼女も……異能の力が強ければ、人は簡単に死なずには済んだんだ……」

「それは違うよ、剣二。異能力が全てじゃない」

「お前は黙ってろよ、夏目!! お前は昔から飄々としていて、今回も僕を騙したじゃないか!! 力になってやると言っておきながら、二重スパイで騙していた!!」


 激情するキキョウ、次第にキキョウの周りには、白いキキョウの花で埋め尽くされていった。


「今更、手遅れだよ、剣二……」

「ハハ……違うよ。僕は諦めない……。絶対に……!」


 そう言うと、キキョウの姿は花と共にどこかへ消えた。


「ワープ!? 剣二にそんな力はない……!!」

「いや、異能力というのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()するケースがあります。滅多にないことですが、彼は恵まれた異能力者だったのかも知れません」

「またしても逃しちゃったね」


 辺りが静まり返る中、一人の少年が駆け出す。


「俺だって……諦めねえよ……!!」


 ジュースは、思い切り速度を上げ、燈篭の元にグーパンをけしかけるが、燈篭は片手で受け流した。


「その程度か……? 十蔵(ジュウゾウ)……」


 憐れむような目線をジュースに送る。


「そうやって……いつも……! 親父が俺のことをダメな息子だと思ってんの分かってんだからな!!」

「十五歳にしてNo.10。十文字(ジュウモンジ)十蔵(ジュウゾウ)くん。一桁台に乗れなかったとしても誇るべき高位だと思うが……」


 夏目は、ジュースを見ながら宥めるが、燈篭は、十蔵の拳を掴んで思い切り投げ飛ばした。


「お前が()()()()()()()に取り憑かれている以上、私がお前を認めることはない!!」


 ヨロヨロと立ち上がると、ジュースは二宮を睨む。


「この女だって、現役No.2だから引き入れたんだろ! 知ってるんだぞ……高火力の火炎放射だって!!」


 そして、二宮をここぞとばかりに指を刺した。すると、二宮は、ジュースの腕を引き、強引に立ち上がらせると、自分の正面に立たせた。


「どこからでもいい、異能力を使ってもいい。私を、倒してみなさい」

「は? いいのか? この距離だとお前、骨折じゃ済まないぞ?」

「減らず口はいいから、かかってきなさい」


 そして、ジュースから放たれる強烈に早いパンチも、蹴りも、全てを交わし、


「お父さんを前に、ごめんなさいね……!!」


 ゴッ!!


 二宮は、腹部に思い切りパンチを喰らわせた。


「な……なんで異能力を使わない……」

「私も、この探偵局に入る前は、異能の力こそが強さだと思ってた。でも、現実はそんなことはなかった。私も今、自分の無力さを痛感しているところよ……」

「でも……お前は異能なしで強いじゃねぇか……!」


 そして、今度はジュースの真横の崩れた瓦礫を、細い足で思い切り蹴り崩した。


「強くなったのよ!! 異能力がなくても!!」


 ジュースは、遂に黙り込んでしまった。


「私に出来ることをした。もう、おしまいにする」

「そうか、お疲れ様」


 そう行方に告げると、二宮はパタリと倒れ、そのまま眠りについてしまった。ジュースは既に意気消沈しており、戦う意志は見られなかった。


「話が終わりそうなところ悪いんですけど〜、まだ僕は戦っちゃいますよ〜?」


 すると、背後から再び百瀬は銃口を向ける。


 スパン!!


 しかし、銃が鳴らされることはなく、神子はその拳銃を思い切りぶった斬った。


「悪いけど、アンタの攻撃はもう当たらないわよ」

「そんな重い装備で……どうしてそんな早く……!」

「私の異能は『鋼鉄』。見に纏っている鋼が重ければ重いほど、早く動くことが出来る。そして……」


 すると、急いで百瀬は次弾の装着をして構える。しかし、またしても百瀬の拳銃を斬った。


()()()()()()が多いほど、早く動ける」


 百瀬は膝から崩れ落ちてしまった。


「私をやりたきゃ、探偵局のように事前調べでもして、情報を掻き集めることだね」


 そう言うと、異能警察はジュースと、百瀬、そして転がっている犯罪者グループを拘束し、迅速に撤収した。


「今回のドラッグは、使用制限付きのようだ。異能の使用回数が終わると、そのまま命を落とす。異能の力に取り憑かれた者たちの暴走劇だったわけだね」


 夏目は、いつもの笑みはなく、説明していた。後に、十蔵が件のドラッグ事件に首を突っ込んでいたのは、そんな異能者だらけの世界でも、自分は更に強いのだと父に証明したかったと供述していた。

 剣二は、恐らく今も、異能に取り憑かれている。


「夏目さん、二重スパイ、お疲れ様でした」

「行秋くん。いやいや、君が早くに気付いてくれたから、俺も動きやすかったよ。ナイス演技だ」

「今回の事件ですが、二つ報告があります。まず、ドラッグを密売していたのは、キキョウ……一ツ橋剣二ではありませんでした。彼も、十文字十蔵同様に、販売員の一人で、大元は他になります」

「もちろん、行秋くんならその()()()()()()も仕入れてきているんだろうね?」

「当然です。誰に鍛えられたと思ってるんですか?」

「それで、その大元の組織の名は?」

()()です」


 ニコッと笑うと、夏目は「疲れたね」と言って、片手に持っていた未開封の缶コーヒーを行方に渡し、そのまま去って行ってしまった。

 行方は、貰った缶コーヒーをそのまま開け、静かにそのまま地べたに座り込んだ。

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