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異能探偵局  作者: 春木
異能探偵局 第一章 ドラッグ編
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10話 仮面の男

 なんの幕切れもなく、事態は突如として進む。


「貴方ですよね。()()()()()()()は」

「なるほど。行秋くんは俺がスパイだと?」

「はい。全て裏は取れました」


 そうして、静寂が二人の間を包む。


「何故、俺が仮面の男だと?」

「先日のキキョウとの交戦時、貴方はキキョウの身体に触れてワープを行った。瞬間移動の異能ではない」

「証明できるものは? 俺の『ワープ』は、"印を示した相手" 、及び、"印を示した場所" にしか移動できない」

「印は、キキョウの服の裏にでもあったのでしょう。それよりも、貴方の()()()()()()に目を付けたんです」


 これは、行方の頭脳と観察眼でのみ見つけられる。


「貴方のワープは、長距離移動をする時、数センチだけ浮いてからその姿を消す。他の移動系の異能者のどれとも当てはまらないんです」

「なるほど。異能科学を研究している行秋くんらしい推察だね。素直に感心するよ」

「僕は、以前より貴方を疑わしいと睨んでいました」

「そうだね。君が俺のことを注意して監視していることは分かっていた。じゃあ探偵局を辞める? 二乃ちゃんの試験の時にも言われたね。()()()()()()()()()って」

「いえ……」


 そして、バタバタと夏目の背後から足音が響く。


「行方!! 夏目!!」


 駆け付けたのは、春木と『メデューサ』のラムだった。


「なるほど、ラムちゃんの異能で石化して拘束か。今、異能の行使をすれば、簡単に逃げられるけど……」

「それは出来ません。貴方の同行は、発信機で全て記録され、ワープ先、及びアジトの位置も特定済みです。異能警察にも協力してもらい、既に貴方は逃げられない」


 すると、夏目はニヤッと笑みを浮かべた。そして、懐から件の仮面を出し、徐に顔に着ける。


「甘いよ、行秋くん。君は俺を捕まえられない」

「今更……威勢は異能警察本部で聞きます」

「違うよ。君……と言うより、他の誰にも、俺の()()()()()()()を知らないんだ」


 そう言うと、夏目は数センチ浮いた。


「ラム!! 石化を……!!」


 しかし、間に合わず、夏目は姿を消した。


「本当に……知らないワープ先があるのか……?」


 夏目のワープ先は、離島の監獄の中だった。


「またここに戻ってくるなんてね……。行秋くん、だいぶ成長していたな。油断は出来ないようだ……。さて」


 監獄の中で、夏目は探偵局のバッジを握り潰した。


「流石は『異能探偵局の頭脳』と呼ばれるだけはあるね、行秋くん……。でも、ここまでは予定通りだ。さあ、君は僕の頭脳を上回ることが出来るかな……」


 仮面の中で、夏目はニヤリと微笑んだ。

 場所は、夕焼けの橋へと戻る。


「春木さん、明日、緊急会議を行います。異能警察の方にも連絡を入れておいて頂けないでしょうか?」

「ああ、分かった。今回はお手柄だったな」


 そう言うと、ラムを乗せて車で去って行った。

 ポツリと残された行方と二宮。行方は、そっと二宮に近寄る。


「二宮、お前にとって正義とはなんだ?」


 唐突な質問、夕日に照らされる中で、身長の高い行方の表情は暗く覆われているように見えた。


「弱い人を強い人が守ること……」


 再び、静かな静寂、川の音が響いていた。


「そうか」

「何か悪い!? 私の強力な異能なら、沢山の人を助けられるの!! 私の力はその為の力だから!!」

「別に悪いとは言っていない。いい理想だと思う」

「じゃあ……行方くんにとっての正義は何……?」

「僕は……」


 行方は、二宮の瞳をそっと見つめる。


「弱い人も強い人も、公平に助けられる人になる」


   *


 翌日、春木の招集により、異能探偵局には、交戦に参加する異能警察の部隊が集められていた。


「ふむ、夏目がスパイだったとは……」


 幕切りを割いたのは、長官の八百万神子。遂に、明日に迫った犯罪者グループとの交戦。その前日に知らされた核となる人物のスパイ発覚。


「まあ、暗い顔をしていても事態が好転する訳ではない。まずは、異能警察からの部隊を紹介しよう」


 八百万が手を掲げると、一人のガタイのいい男がズイと前に出て、シュバっと敬礼をした。


「俺は十塚森羅(トヅカ シンラ)。異能警察の副官だ。よろしく頼む」


 次に、先日も参加していた書記の男が前に出る。


「僕は千羽彼方。遠方支援専門です。よろしくお願いします!」

「最後に、危険な男で、交戦が激しくなる時だけ呼ぶことにしている男を今回は急遽声をかけた。こっちに来い」


 すると、ずっと椅子に座らず、体育座りで隅にいた男はニヤニヤしながら前に出た。


「コイツは()()()()から抜擢された、百瀬白蘭(モモセ ビャクラン)と言う男だ。この通り危険を体現しているような男だ。背中には気を付けてくれ」


 紹介を受けると、また元の定位置に戻って行った。


「そして、私を含めた以上の四名が参戦する」


 春木さんも異能探偵局の参戦メンバーを順次紹介して行き、敵組織の人員が書かれた書類を見せていた。時間が過ぎる中で、作戦といった作戦は提示されず、決行日を迎えることとなった。


「本当に大丈夫なの……?」


 帰り道、二宮は行方にふと溢す。行方は何も言わなかった。そして、そのまま二宮宅まで着いてしまった。


「二宮」


 戸を開ける瞬間、行方は二宮を呼び止める。


「明日になれば全てが分かる。心配するな」


 その言葉で、二宮は少しだけ安心を取り戻した。


「信じてるわよ!」


 そう言って、二宮は家の中に入った。


「さて……大詰めか……」


 行方は、再びバイクを走らせた。

 カラン……と、行方は戸を開けた。


「おや、もう閉店時間は過ぎているんだけどね……。行方くん」

「お願いがあって来ました。ジンさん」


 行方は、ジンの目の前のカウンター席に腰掛けた。

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