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episode9. 正義と剣

少し動けば触れそうな剣の先。


僕はじとり、とシオンさんを見つめた。



「......」


「.......シオン」



レナトくんたちが困惑していると、アインさんが口を開いてシオンさんを止める。



「罪の無い民に剣を向けるな。」

「それは法度だ。

......その意味を分かっているのか」

「お前は、今国を敵にまわしているんだぞ」


「うるさいっっ!!」

「僕は...つ、

僕の信念の為なら.......国だろうが正義だろうがなんだろうが、なんだって敵に回してやる、つ!」



僕の目の前で剣先が震える。


1歩引くと、シオンさんの強い片目が僕を睨んだ。



「......おい宝石持ち。

正直に話せ」

「お前は、エルピス村を知っているのか」



紫の瞳が歪む。


その瞳を見て


出会った時からの疑問が、確信に変わった。



「......ああ、」



宝石が、宝石を映した。












__________











ある日僕、スイはアインさんに問うた事がある。



「...あまり、剣を使わないんだね」


「......ああ」

騎士(俺ら)にとって、剣は正義だからな」



正義......



「俺らは、正義に仕える騎士だ。」


「......」

「…その自分勝手な正義に、僕を巻き込まないで」


「...」

「善処する。」



アインさんは、そう微笑んだ。



「......いつか、スイに剣を向ける時が来るのだろうか」


「......僕は罪人にはなりたくないけどね」


「そうだな...」

「その時は......」



『俺が、正義を捨てた時だろう』










__________











「.........知ってる」


「......っ

お前..」


「......とても、いい所だったよ」



物怖じせずに告ぐ。


シオンさんは、嘲笑うように口角を上げた。



「…っは、そうだろ。僕が生まれた場所だ」


「......うん。」


「僕と、.....バルトが。」


「......うん...」



予想外のことに内心驚いたが、平然と振る舞う。


自分でも感心するくらい肝が据わっていた。



「......え、」


「......」


「は、......」


「.........」



レナトくんと今まで知らされていない騎士たちは目を見開いた。



「…5年前に、少しだけ置いてもらった事がある。僕の目なんて気にもとめず、優しく接してくれた」


「......あの村は、みんな優しかった」


「…そこで育った君達も、優しいだろう」


「......」

「僕は、関係ない。」


「......何故」



こんなに取り乱していたら今頃僕を切り捨てていてもおかしくないはずだ。


僅かに剣先が震えるのが目に入る。



「あの村で、御伽噺を信じるのは僕らだけだった。みんな見えないものは信じなかったから」

「ぼくは優しくない。」


「......みんなと違うから、優しくないの」


「黙れ」



剣が強く握られる。


疲れか、不安か、怯えからか。


剣先は大きく震えている。



「シオン......」


「......」

「おいエメラルド。」

「何故トパーズを消した。何故宝石狩りをした。何故...」

「何故......」

「親父と、お袋......バルトまで、奪おうとしたんだ......っ」



顔が歪む。


震える手を、まじまじと見つめた。



「......」

「子供に聞いたって、なにも変わらない」


「お前も同類だ。あいつとっ、!」


「君も同類だ。」


「.......っ、!、」


「......シオン」



息を切らすシオンにアインは話しかける。



「、っ」


「ずっと.....

何を言っているの...」


「......」



レナトくんから不安な声が聞こえてくる。


しかし、シオンさんの瞳には僕のエメラルド色の瞳しか映っていない。



「僕は...君の求めるものは持ってない」


「......口ではなんとでも言える。」

「…..ずっと探して来て、初めて見つけたエメラルドなんだ。

......お前、エルビスに、なぜ行った」


「…..言った通り、住まわせて貰っただけだ」


「......嘘つけ、つ!本当は…」


「シオン。」



バルトが2人の間に入る。



「.........」


「剣を、下ろせ」


「......」



やっとのことでシオンさんは、僕から剣の先を逸らした。



「......ほっ...」


「......お前ら、」

「......スイと、その村に、なんの関係があるんだ...」

「......シオン、スイ。そしてバルトも。説明が無いと何も理解ができない」



僕とシオンさんに間が空いたのを見計らい、アインさんが問いかける。



「......」

「…トパーズが消えたのは、何十年も前だと言われているが、本当は、17年前だ」


「じゅう......なな...」


「最後のトパーズは......」

「...バルトだった」


「......」


「バルトさん...?」



問いかけるレナトくんの瞳に映った蜂蜜色の瞳は、

宝石が消えていることを知らせる。



「...」

「そして......」


「......」



シオンさんは、僕に睨みを効かせる。



「.....これが、僕の応えだ」



長い前髪がかきあげられる。


隠れた片目が、姿を現した。



「......」


「......?!」


「......あ、」


「...」



みんなが息を飲む。


僕の目に映るのは、

黄金に光るひとつの瞳。


トパーズだ。



「それ.......」


「.........」



シオンさんの持っていた剣は、床に落ちた。



「僕のお袋はアメジストで」









「親父はトパーズだ。」



輝く2色は、

夜に浮かぶ、月のようだった。

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