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episode6. 情報屋

「涙で…消える.......」


「......そ、」



僕はそっと目元を抑える。



「どういうこと?」



そう問うレナトくんには一度も宝石の話をしたことがない。



「......そのままだよ。

涙を流せば瞳は消える」

「......まあ、例外はいるけど」



「......」



「つまり、スイが涙を流せば、普通の目になるってこと?」


「......多分」


「多分?」



首を傾げた赤髪が不安げに揺れる。



「...」

「宝石持ちには、2種類いるんだ。」

「1度も涙を流したことない人。

......まあ、それが僕ね。」

「それと...あともう1つ」

「涙を流してもなお、宝石の瞳が残り続ける。...所謂......」



「呪いの子」


「......!」



後ろから声がして、弾くように後ろを向くと、カウンターの席に1人の男が座っている。



「兄ちゃん達の話面白そうだなあ」

「俺も混ぜてくれよ」



男は、不敵に笑った。








__________










「......何者なの」

(追い出そうかな。)



僕の店に変な人が来るなんて。



「おっと...

客に失礼な店長だなあ」



ユートと名乗った男はそうヘラヘラと笑う。



「面白そうな話に、混ぜてくれって言っただけじゃあないか」



細い目が更に細まる。


薄い唇は、不気味に弧を描いた。



「なんで呪いの子の事を知ってるの」


「呪いの子?」


「涙を流しても瞳が輝き続ける者をそう言ってたんだ。」



そう説明する僕はただただ男に好奇の目で見られてた。


軽快な足取りでこちらにやってくる男を軽く睨む。



「…なあんか面白い話してるなあって思ったら、あんた....

宝石持ちじゃあないか」



目の前に立ち、物珍しそうに僕を見つめる男。


息をのみ、見上げる形で睨む。



「エメラルドだから、すぐにわかったよ」


「......」


「宝石の瞳は前髪を伸ばせば隠せるらしいが、お前さんは隠さないのかい?」



「......僕の質問に答えて。」

「あんた、何者なの」



うーん、とユートが答える。



「...」

「言ったろう?俺はユート。」

「ただのしがない情報屋さ」








__________








「…情報屋...」



「......ほんとにいるんだ」



感嘆の声をあげるシオンさんとレナトくんに目を向けた。



「いるさあ、宝石持ちがいれば情報屋だっている。もしかしたら神なんてものも存在するのかもしれない」



空いた席にどかっ、と座ると、情報屋は大きく腕を広げた。



「さあ、絵本の中の住人が目の前にいるみたいで今俺は舞い上がっているんだ。少し昔話でもしよう。」


「...なんか変な奴だな」


「だねえ...」


「......」


「宝石持ちのことを、知っているのか」



騎士3人が少し呆れる中、金髪の彼は珍しく興味を見せた。



「もちろんさ。昔から空想学が好きだったんだ。」


「......」

(なんで………)










「…元々、宝石の瞳は5つに分かれる。

エメラルド、ルビー、サファイア、アメジスト、トパーズ。」



情報屋が手を広げ、指折り数える。



「その中で、一番輝くのがエメラルド。

宝石の瞳を言じてる奴からすりゃあ、店長は一発だ。」


「確かに...」


「よく考えれば異質だよなあ」


「逆に一番輝かないのがアメジスト。

アメジストは本当に見つけにくくてね、まだいるんじゃないかと疑ってしまうほどさ。」

「あとは......」



僕を盗み見るユートさん。



「…何十年か前。

トパーズの瞳は全滅したって言われてる。」


「え、

...トパーズだけ?」


「......」


「……」


「...」



騎士3人は少し息を呑んだ気がした。



「何があったのかは詳しくは分からないのだが、…..エメラルドが深く関係しているようで......」



そう言って僕に目線をあわせて少し彼はかがむ。



「だから、お前さんに聞きたいんだ。店長」

「宝石の瞳は、なんでいないとされているのか」


「……」

「こんな”子供”に聞いても、何も出てこないよ」



淡々と伝えると、情報屋は明らかにがっかりした表情を浮かべた。



(情報屋に、情報提供するのはね...)


「そうか......」

「まあ、宝石持ちのことで何か知れたら、また教えるよ。

...お前さん自身も、よくわからないだろう?」



男の黒い瞳がこっちに向く。



「........あと、”お前さん”にもね」



そう言って騎士達の方に目配せをする情報屋。



(...この人.......)


「じゃ、お代は店長との出会い、ってことで〜」



胡散臭く手を振り、去っていく情報屋。



「...」

(なんで...)



嵐みたいだったねえ、なんて話すまひとくんを横目に、閉まっていく扉を見つめた。


“エメラルド”

彼の眼には、僕の瞳しか映っていなかっただろうか。


『エメラルドだから、すぐにわかったよ』

そう言う彼の眼には、僕がどんな風に映っていたのだろうか。


ふと見上げた窓に自分の姿が映る。


窓に映った僕の瞳は悪戯に笑った、ようなな気がした。



(僕には......)

(これ)しか、価値がないんだ..)



握り潰したい感情で、目元を抑えた。

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