episode5. 涙
からんからん、と鳴る鈴の音
「わお..」
白い服を着て、剣を腰に掛ける男が4人。
そんな4人を見てレナトが声を洩らす。
「久しいなぁ~!」
「......アインが美味いって言ってたのなんだっけ」
「サンドイッチだろ」
「......」
次々に店内に入ってくる4人は騒がしくも席に座った。
脱みを効かせると、バルトさんが手をひらりと振る。
「やっぱりいい目してるね」
「......」
「......欲しいんですか」
「まさか、」
バルトさんは笑う。
なんなんだ揃いも揃ってこの人たちは。
「バルトさん達もサンドイッチ知らないんですか?」
メニューを片手に持ってきたレナトくんは聞いた。
「ん?いいや?サンドイッチ知らないのなんてコイツくらいだよ。」
「アインさんだけ...?」
「そうそう、だってこいつ......」
「バルト」
突然バルトさんを遮る声が聞こえた。
シオンさんが睨み、バルトさんは苦笑する。
「......おっと。
こっちの話だわ、ごめんな」
「......?」
そう言って話題を変えていってしまう。
「......お、?」
テゼさんが声をあげ、そちらを見ると、いつも来てくれている男の子がテゼさんの裾を掴んでいた。
「......お兄さんたち、きしさまなの?」
そう言ってテゼさんを見上げる。
途端に男の子のお母さんが飛んでやって来て、テゼさんに謝っていた。
「......」
「…おー、そうだぞ少年。
国王に仕える4人の騎士だ」
「......かっこいいね」
そう騎士を褒める男の子の言葉にテゼさんは複雑な表情を浮かべていた。
「そうか、?」
「僕もなれる...?」
「......」
「俺がなれたから、なれるさ」
「......そっか...」
テゼさんは男の子の頭に手を置く。
男の子はキラキラと目を輝かせ、お母さんがぺこりと頭を下げ、親子は店を出ていった。
「......」
「昔......
王宮に仕える騎士は情が無いとか、人の心あらずとか、散々噂を聞いたけど...…」
「...……僕が考えるよりもずっと、表情豊かなんだね」
扉を見つめながら言う。
再び見た騎士たちの顔は、思ったよりも間抜けだった。
「え、俺らそんな風に思われてたの?」
「まじかぁ...」
「大体はアインの仏頂面のせいだろ」
「それだわ」
「おい大団長お前のせいだとよ」
「......すまん」
そう言って肩を組みに行くバルトさんだったがアインさんは表情を変えなかった。
「...」
そんな座るアインさんを僕は見つめる。
服は分厚く少々着込んでいるように見えた。
「暑くないの」
「これが規則だ」
またしてもアインさんはひとつも表情変えなかった。
(暑いのは否定しないんだ...)
「ふぅん...」
まるで決まり事を全て守る人形のようだ。
情があるのか、ないのか。
(きっと僕と同じだ。)
なぜか親近感を覚える。
用意したサンドウィッチを彼らの前に出しながら僕は質問した。
「.....ねぇ。
宝石持ちのこと、どこまで知ってるの?」
僕は4人に問いかける。
ただ単純に、僕らの事をどこまで知っているのか知りたかった。
「どこまで、かぁ....」
「いくら王族に仕えていても所詮は未知だよ、言い伝えの事しか知らない」
みんな横に首を振るばかりだったが、アインさんはよく知っているみたいだ。
「宝石の瞳....
異様な輝きを放つ瞳。
現在持っている者は限りなく0に近い。
持って生まれたとしても、1年経つ前に普通の瞳に戻っている記録が多い。」
「瞳自体の価値は国ひとつは固いらしいが、狙われるのはそちらではなくて、『宝石持ちの涙』。」
「たった1粒で世界さえも動かせると言われるものだ。」
「国王は、その涙を欲しがっている。」
そう言ってアインさんは僕を見つめる。
「.......が、」
「やっと見つけた宝石持ちがこんな子供じゃあ、俺らも療に障るわけ」
せっかく見つかったのになぁとバルトさんが悔しそうな声をあげる。
「こんな子泣かせる訳にはなぁ?」
「......スイちゃんを連れて行く気ですか」
レナトくんが僕を庇うようにテゼを睨む。
「まさか。」
「......でも、早く持って来いって急かされちゃってさあ」
その一言を聞いてレナトくんは渡さない、と言わんばかりに僕の前に立つ。
「...」
「レナトくん...」
「んな驚戒しなくても.....」
「......まあ、場合によっては....ね?」
今はしないよ、そう微笑むテゼさん。
妖艶に微笑むその顔は、どこか不気味にも見えた。
「......渡しませんよ」
「......」
「そんな子供泣かせる趣味なんぞありゃしないよ」
(子供...ねえ......)
「......所詮伽噺だもんな...」
そう僕は声を洩らす。
「ねぇ、アインさん」
「......」
「宝石の瞳はね」
「涙で消えるんだ」