episode 4. 会いたい
「スイ、サンドイッチとはなんだ」
「.......また来たの」
軽快なベルの音と共に金髪の騎士がやってくる。
あれからというもの、この人が毎日のように店に来るようになった。
来るたんびに、『あれはなんだ』だの『これを食わせてくれ』だの。
(忙しくないのかな...)
そう思いながらも毎日アインの接客をする。
「......サンドイッチなら、今レナトくんが食べてるよ」
ほら、とカウンターの席を指す。
ホットミルクを片手にサンドイッチを食べていたレナトくんが振り向く。
「え、アインさんサンドイッチ食べたことないんですか?」
「......決まった物しか食したことがない」
そんな会話を横目に、野菜を炒める。
ビーフシチューを奥の席へ持って行くと、ふとその席に座っていた男の子に服の裾を掴まれた。
「ねぇねぇ、てんちょう」
「ん?」
「てんちょうは、あの人の先生なの?」
そう言ってアインさんを指す男の子。
「せんせい.......」
「あの人がいってたよ、『スイは俺の知らないことを沢山知っている』って」
そう言われて目を向けると二人の話し声が耳に入ってくる。
「ここのサンドイッチ、スイちゃんが僕のところのパンを使ってくれてるんですよ」
「......なにか狭まっている...」
「......」
「僕は...」
「教えを乞うては...ないと思うんだけどな」
男の子は、一瞬きょとんとした後、あの人の剣かっこいいね、と微笑んだ。
__________
「......なんでいつもここに来るの?」
「......」
ある日、サンドイッチに目を輝かせるアインさんにそう問うてみた。
すると彼は頭に手を当て、黙りこくった。
「.......たしかに...
何故だろうか」
「僕が聞きたいよ...」
「......」
「......この目が目的?それなら...」
「いや、」
ぇ、と話を遮るアインさんに驚き顔を上げると、彼もこちらを見ていた。
「だが...
元々、命じられたのは存在の確認だけだ。お前がいると分かった以上、これ以上干渉する必要はないのだが」
「......」
「なぜだか、ここに足が進むんだ」
そんな堅苦しい格好をして、重いを腰に下げて。
なんで
なんで
そう、楽しそうに
微笑むのだろう。
(....わからない...)
そっと、目元を抑えた。
__________
「......」
「ねぇレナトくん」
「ん?」
スイちゃんはカウンターでビーフシチューを飲む僕に声をかける。
「レナトくんは、なんでここにくるの?」
我ながら、幼子の様な声が出た。
きょとん、と丸い目が僕を見つめる。
「んー......」
「ご飯が美味しいから、かな...?」
「..なんで疑問形......?」
「......なんでだろ...」
「ん"~......、でも......」
「スイちゃんに会いたいなあ、って、気づいたらここにいるんだよなぁ」
「......へんなの...」
そう言うスイちゃんは少し頬が上がっている様に見えた。
「変かなぁ」
「全然だと思うけど」
そう答えてビーフシチューを進める。
「......」
「僕に会いたいなんて変な事を言う人は、君が初めてだ」
「そう?
誰でも人と関わりたいと思っているんじゃないかな」
「...スイちゃんこそ変だね」
「...え?」
彼は変わった価値観を持ってる。
「….僕は君の目のことなんて微塵も興味ないから
なんで突き放そうとするのか分からない
君は偶に薄情だね」
人と関わるとは悪いことだけではない。
むしろ僕は人との関わりを楽しんでいる。
僕は純粋に友達になりたいと思ったから仲良くなったまで。
なぜそこまで情を入れないのだろう。
「......」
「僕をそんな風に言う人も、君が初めてだ
やっぱり君は変だ」
「変かなぁ」
「変だね」
そう言って僕らはお互い微笑みあった。