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episode3. 友達は宝石持ち

「宝石の瞳、って話は、知ってるよな」



テゼさんは僕を試すように問う。


流石の僕でも一度は聞いたことがある話だ。



一昔前、宝石の瞳を持つ人たちがいた。


彼らが流す涙からは宝石が落ちる。


彼らが作る宝石は特別で国一つも簡単に動かせれるとかなんとか。


しかしそんな人たちは今の時代にはいない。


昔に途絶えてしまったのだ。


そういう締めになっている御伽話。



普通の平民でも貴族でも王族でも誰でも知っているような御伽話。



「あぁ、あの御伽噺の」



「違う。」



突然とシオンさんに遮られる。



「実話だ。」



「......え?」



驚きすぎて僕は間抜けな声を漏らす。


片目が紫髪で隠れている彼には、割と威圧感があった。



「…そう、実話なんだよ。あの迷信は。」



(宝石の瞳は...実在するってこと...?)

「どういうことですか...それ.......」



「だから...」








「お前の友達の瞳が、その宝石の瞳だって言ってんだよ」



呆れたようにバルトさんが言い捨てる。



「......は、?」









__________









「......もうお店、戻っていいですか」



突然外に出たので、上着を持っていかなかった。


そろそろ寒いなと思い、それを理由に店に帰ろうと促す。



「待て。お前は何者だって聞いてんだ」



金髪の騎士は肩を掴み僕を止めた。



「......」

「見ての通り、飯屋の店長。

......ただの子供です」



「でもお前...その瞳......」



「あの、」



何か言いたそうな金髪の騎士を遮る。


なるべく目を合わせて。



「宝石持ちだからって、なんなんですか」

「僕は泣かない。

......涙が欲しいのなら、無駄ですよ」



絶対にあげない、そう意思が固い僕に、少し悲しそうな、哀れな目で見つめる。



「......」



そんな人に構わずに、

相手に流されないように、



(絶対にあげない。)

「…では、僕には仕事があるので。」



「ぁ、….....」



まだ何かを言いたそうな金髪の騎士を横目に再びスイは店へと入っていく。


金髪の青年はその姿をを唖然と見つめていた。



「......仕事...」

「私情は...持ち込まない...」



自分に言い聞かせるように唱える。


ため息とともに、彼は首に手を置いた。









__________










「元々は、俺とアインが調査に出るはずだったんだけど......」



バルトは横目で2人を見た。



(スイちゃんを連れてった人、アインって言うんだ...)



「......」

「僕が無理言って行かせてもらった」



そう答えるテゼが角砂糖を、紅茶が溢れないようにそっと入れている姿が、なんとも可愛く見えてくる。



「俺はノリで」




どうやら、紅茶には興味がないようで、席に腰掛けたままのシオンも言う。



(ノリ...?!)


「まあ、宝石持ちが本当にまだいるのか、って調査だから...痛い事とかはしないよ。

......多分」



そう言ってバルトはレナトから視線を外す。



「多分?!」

「そこ1番ぼかしちゃだめでしょ!」


「あいつ何するかわかんねえからなあ...」



そう言って心配そうに窓の外を眺める。



「......」



シオンも同じように窓の外を眺めた。


(えぇ...)


誰も何も発しない状況にレナトはスイを心配しながら同じように窓の外を見つめた。








そんな時、誰かがドアを開けた音がした。



「...ただいま」


「! スイちゃん!」



扉を開けたスイちゃんに駆け寄る。



「おー、アインに酷い事されなかった?」



赤髪の人は今度はレナに問いかける。



「アイン......

あの人そんな名前なんですか」

「......なんも、されてないですけど」



スイちゃんはアインさんに心底興味がなかったように見える。



(よかった......)



そう両手を広げてみるスイちゃんに、心から安堵した。



「あれ?アインは?」



ふと扉の方へ目を向けてみても、誰もいない。

ドアも閉まっている。



「...すまない、待たせた」



そういう声と共にいつのまにか店に入っているアインさんがいた。



「うおっ!...音もなく立つなよ、後ろに」



「んで?どう?この子、本物?」



びっくりするテゼを横目にバルトはアインに食い気味に質問する。



「.......本物...」

「だが......」


「だが?」


「......」

「いや、なんでもない」


「なんなんだよ」


「......」



きっとなんかあったのであろう。


アインさんは歯切れの悪い回答をする。


スイちゃんは普段より静かである。



「......」


「えー、じゃあさ、気に入った?この子」



予想外の質問が耳に聞こえてきた。



「はぁ?!」


「は?」



予想外の言葉が聞こえ、僕とスイちゃんの声が重なって響いた。



「……」

「なんだろうか。

......なんとなく、興味を持った」



「......は、」



「きゃー!♡」



「おー…..」



茶化した割にその反応は何なんだよと喝を入れたいところであるが、心の中で精一杯叫ぶことにする。



「……」


「おいおい珍しいぞ~?うちの大団長が人に興味をも つ な ん て〜♡」



テゼはスイとアインを茶化すように肩に腕を置く。



「......肩組まないでください」


「えー?どうするどうする?」


「......肩組まないで...」



本気で嫌がるスイちゃんは話を全く聞かないバルトに呆れながらもされるがままの状態だ。



「バルト、テゼ、シオン。

帰るぞ」



そんな状態を察したのか、騎士団長はみんなをまとめて帰ろうとする。



「...ちぇー....」


「あいあいさー」


「了解」



文句を言いながら去っていく人もいたが、騎士団はすぐに退散した。



「では、失礼したな」



騎士団長は律儀に挨拶をして店を出ていく。


開いたドアから漏れた光はとても暖かく、風はほんのり冷えていた。



(ほんとにね!!)



僕はそう思いながらも、全員が出ていくのを見守る。



「また来る」



からん、からんっ......



「また来........」

「…はぁっ?!?!?!」



心の中で文句を言う僕はスイの大きな悲痛の声を耳にしたのだった。

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