episode2. 騎士団
「……」
いきなり入ってきた大人の人達に、店内の子供たちは驚いている。
それに気づいたように、金髪の人は外を指した。
「すまない、外で話をしようか」
「......わかりました」
「ちょ、スイちゃん...」
危険を感じて止めてくれるレナトくんだったが、僕はなぜか行かなければならないような気がした。
「レナくん、ごめん、お店よろしくね。」
「......わ、かっ...た......」
少し納得がいかないようだったが僕がそう微笑むと、レナトくんは渋々頷いてくれた。
「...じゃあ、俺以外の3人はこの店に置いていっていいか」
(いやなんでだよ......)
「...どうぞ...」
シブシブと許可をして、3人とレナトくんを店に残し、僕らは店を出る。
不安げな表情のレナトくんにもう一度微笑み、店の裏に足を進めた。
__________
金髪の人は腕を組み、また僕の瞳を見据えた。
「......宝石の瞳、って知ってるか」
「……」
スイは黙り込む。
この国の昔からの言い伝え、『宝石の瞳』
国民ならば知らない者はいないだろう。
目が宝石でできている、と言われ、その価値は国ひとつも固いとかなんとか。
「御伽噺がなにか。」
たかが迷言。されど迷信。
そう......思われていた..。
「……」
「お前のその瞳、エメラルドだろう」
「……」
宝石の瞳は隠せない。奇妙な色で、輝きを放つ。
だから、この小さな村に越したのに、何故バレたのか。
「......最後に宝石の瞳が発見されたのは15年前。2人の夫婦だった......」
「本当......探すのに苦労したよ。」
「お前の親だろう?この宝石持ちは。」
ああ、僕はこの人が嫌いだ、と
赤い瞳を見て、直感的に思った。
__________
中で待つということで、黄色髪の人以外はスイちゃんのお店の席に座っていた。
少ししたおもてなしとして、紅茶と角砂糖を用意して去ろうとしたが、他の3人に止められ、一緒の席に座りスイちゃんの帰りを待つことになってしまった。
僕は椅子に腰掛けながらも、知らない人に囲まれている緊張からか、そわそわする。
「……」
(スイちゃん大丈夫かなぁ...)
「なあ、水色頭」
角砂糖を紅茶に入れながら、赤髪の男性に唐突に話しかけられた。
「っは、はいっ!」
(水色頭?!)
髪の色で呼ばれたことはなかったので少しびっくりする。
赤髪の人は声が低く、少し威圧的な声だが、少しチャラい雰囲気がどことなく伝わってくる。
「あの宝石持ち、いくつ?」
「宝石持ち...?
......ああ、スイちゃんなら、もうすぐで16…です......」
「だよなぁ、何度聞いても変わんねぇんだよなぁ.....」
そう言って赤髪の人はがしがしと頭を掻く。
赤髪の人は白ベースに赤のラインの入った服を着ていた。
腕には何かの紋様が描かれている。
おまけにこの人には腰に剣がある。
「……」
「なんか気になることでもあんの?」
今度はずっと黙っていた緑髪の人が話しかける。
少し吊り目であり、おまけに髪も結っているので普通の人は怖いと感じるだろう。
そしてこの人にも腕に紋様があり、腰に剣がある。
(この紋章、どっかで見覚えがあるような…)
「んー......
なんか、とても16だとは思えねぇんだよ。なんか、人生2回目..みたいな......」
「なにそれ...」
(なにそれ…)
「たまにバルトの勘はあたるからな...」
今度は紫髪の人が呆れたように赤髪の人を横目で見て話す。
(偶になんだ...)
「...あ!ていうか!貴方たちは一体なんなんですか!」
赤髪、緑髪、紫髪の人たちに問う。
「ん?俺ら?
わかんない?」
少しデカい態度に少し身がすくむ。
「わかんない...です......」
「俺らは騎士。
王に仕える聖風騎士だ。」
「きし......
騎士!?!?」
「俺が調査小隊長のバルト。
22歳。よろしくな」
「俺は聖風騎士団代理団長、テゼ。
同じく22。よろしく」
「シオン。騎兵隊隊長。同じく22。」
「......はぁ...」
きらり、と腕の紋章が光った。
(この紋章…王の紋章だったのか。)
(おいおいおい......やばい人たちじゃないか?!)
あわあわと狼狽える僕なんか気にもとめず、バルトさんが話し出した。
「んで、今君の友達を連れてったのがアイン。聖風騎士団の大団長だ。」
「歳は......俺らと変わんないんだけど…」
「まあ、仲良くしてやってくれ」
「は、はい......」
(読めない..話の流れが読めない...!)
「てか、あの...スイちゃん、って子、宝石持ちって知ってて仲良くしてたの?」
「はあ..宝石持ち.....
が、そもそもよく分からないんですが....」
そう僕が言うと、テゼさんたちは目を丸くした。
お客さんはもうすっからかんだ。貴方たちのせいだぞ、と心の中で責めておいた。
「宝石持ちってのは......」
__________
「それを知って、どうするつもりですか」
「...いや、別に、まだ宝石持ちがいると聞いて気になっただけだったよ。」
金髪の人は目を細める。
「ただ、」
「最後に見られた宝石持ち。
……お前の両親は、どちらともサファイアだった。」
「歴史上、宝石持ちから違う種の宝石持ちが産まれた記録はない。」
僕を見据える開かれた瞳は、初めて怖いと感じた。
「お前は、何者だ?」