episode15.王族の騎士
騎士たちが頭を抱えて呆れているこの状況。
『王族のアイン』...
「......今まで黙っていたんだが、俺には王族の血が流れている」
「そうだったの?!?!」
目を見開き尋ねるレナトくんにアインさんは縦に首を振る。
「騎士始めたのも王様を守らなければならなかったから?」
「...いや、家族との約束だった」
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俺の家は城の一角にある端の部屋だった。
家族も親戚も皆城に住んでいて、どこを歩いても知り合いに出会った。
俺には血のつながっていない兄が7人、姉が5人いる。
俺は13番目の子だった。
生まれてから、ずっと13は不吉な数字だと忌み嫌われる。
でも、それは俺だけではなかった。
13と同様に4も9も忌み嫌われていた。
4番目の子、シェリー姉様と9番目の子、アンジュ兄様。
俺らは互いの苦しみを分け合いながら協力して過ごしていた。
俺らは勉学や剣術に励み、いつしか一人前に王族の一員として認めてもらえるように血を吐くような努力をし続けた。
そんなある日俺ら3人は父様に呼び出された。
「君たちをここに置いておくことはできない。18になったら出ていってもらう。」
王一族の繁栄に障害をきたす可能性がある者を置いておくことはできない。
当たり前のことだ。当たり前のことなのに...。
「うぅっ...」
自室に戻った途端に涙が取り留めなく溢れてくる。
淀みなくカーペットにシミを残していく。
ずっとずっと頑張ってきた。
こんな俺でも認めてくれるかもって。
そんなのは儚い夢だ。
俺らの希望は泡沫に消えてしまった。
その後俺の勤め先は聖堂になったものの、母様が取引をしたらしく俺は騎士に就くことになった。
今まで忌み嫌ってきた親族を守る職業。
なんて皮肉なことだろう。
なんでいつもこうなんだろう。
親も親戚もうまくいかない自分も嫌いだ。
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ずっと前に一度だけ聞いた言葉...
そんな意味があったなんて、思いもしなかった。
「王族だと誇りに思ったことはない。ただ、俺の命が狙われるだけだ。」
「...まあ、そういうことだ。そう深く考える必要はない。」
「アインさんはそれで良いの」
そう問うた僕の頭にアインさんの大きな硬い手が伸ばされる。
「今はいいと思える。こいつらのこと好きだからな。守りたい仲間ができて良かった。」
「俺はこいつらのために今もずっと頑張り続けている。もし戦場に行くことになっても、俺がこいつらを家まで安全に帰してやる。」
心配するな、そう言って彼は僕の頭を優しく撫でた。
彼の目はいっそう輝いて見えた。
(『僕の涙で花を咲かす』、僕にもできるのかな。僕の瞳を犠牲にする、なんてこと。)




