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episode14.和気藹々

「.......なにを...言いたいの....」


「いや?ただ直感的にそう思っただけだよ」


「......」


「『始まりの石』.......」


「......つ」


「......やっぱり知ってるのか、お前さん」



勘繰るように顔を覗き込まれる。


細い瞳は、とても不気味に見えた。



「昔、古びた本屋で見たんだ。宝石持ちの本。…....ほんとにだな、あれは」


「………」


「あれからずっと探してるんだよ」



据わった目で彼は言った。



「ダイヤモンドを」







__________







「あ!戻ってきた......って、あれ...ユートさんは?」


「.......帰った」



僕の言葉を聞いて、目を輝かせてユートさんの帰りを待っていたレナトくんは少しがっかりしているようだった。


あの後情報屋はお金を僕に預けて帰って行った。


帰り際の軽い足取りを思い出して腹が立つ。



「えー?まじー?」


「まじまじ。......はい、アインさんコレ」



伸びをするバルトさんを横目にアインさんの手にお金を乗っける。



「.....いいのか?」


「いいってよ。あの人変なことしか話さなそうだったし。」


「結局なんだったの?あの話」


ユートさんに向けられていたレナトくんの好奇心の目がこちらへ向く。


「…」

「昔読んだ本の話だって。」


「ふうん?」


「.........あの話、スイは知ってたのか」


「…」

「みんな質問ばっかりだね。」



さあさあと料理を作り始める。


シオンさんはどこか不服そうだった。



「スイ」


「…」

「音もなく目の前に来るよね。何?騎士ってそんな特殊訓練でも受けてるの?」



調理場の目の前に突然現れるアインさん。


バルトさんが「あいつが特殊なんだよ」なんて笑っていたのを思い出す。



「その......」

「なにか、あったら...言え......」


「………」


「俺が始めたみたいな事だから、そのせいでお前が危ない目にあったら….」

「すまない。」


「......なんなの...」


「......え、」


「あんたはさ、」

「今の店に来てるただのお客さんなんだから。そんな顔しないでくれる?」



申し訳なさそうな顔をするアインさんの額を指で弾く。



「......った...」



こんくらいで痛むのか、騎士も案外弱っちいんだな、なんて心の中で嘲笑う。



「ここはご飯屋さんなの。

ここにいる間は僕は宝石持ちじゃなくて、ただの店主のスイだし、」

「あんたは聖風騎士の団長じゃなくて、ただのお客さん。」



そんな顔されたら、情が湧くしかないじゃないか。


いらないと思ってたのに、あんたらのせいだからね。


勝手に騒いで、勝手に笑って、勝手に落ち込んでさ。


あんたらがいるとさ、まるで自分が普通の人間みたいに思えたんだ。


あんたらが僕より目立つから。



「お客さんの役目はね」

「ここでご飯食べて、美味しいって言って、笑顔で帰ってくことなの。」

「そんな顔じゃ、うちのご飯が美味しくないみたいじゃんか。」


「……」


「......みんなも!

ここでは辛気臭いの禁止だから!あと仏頂面!特にアインさんとシオンさん!」



テーブルにいる4人の方にも指をさす。


シオンさんは僕から目を逸らした。


アインさんの方を向くと、小さく微笑んでいた。



「......何...」


「.....いや....」

「やっぱり......まだ16だもんな。安心したんだ。年相応で」


「怒り方ガキで安心したってよー」



テゼさん.......さっきまで喋ってなかったくせに。



「スイlちゃんの料理いつでも美味しいからねえ~」


「俺ビーフシチュー食べたい!」


「えー......なんか甘いもん」


「今作ってるの6人分のクリームシチューなんだけど!!!」


「…」



アインさんが背を向けて肩を震わせる。



「......笑ってますよね....」


「......っふ、い、いや...」

「可愛らしいなぁと......」



そうやって微笑むもんだから、



「......っ、!は、アインさん何言ってんの?!そんなこと言ったってクリームシチュー多くなんてしないからね?!」



クリームシチューが飛び散るんじゃないかくらいにかき混ぜる。



「赤い顔に緑の瞳は映えますなぁ」


「......でたよ、天然...」


「破壊力破壊力」


「スイちゃん?!熱?!」


「馬鹿か」



騎士たちの会話が深まる中、う~、と唸るとアインさんは更に笑みを深めた。


あーもうやだやだ。顔が良ければなんでも許されるの。



「......揶揄ってる?」


「......?いや...そのつもりはないのだが....」


「~〜~っ」

「ばーかばーか!!そうまさんのばか!!」



こういうときの大人の余裕のようなものはずるい。


アインさんから距離を置いて悪口を吐き捨てる。



「……」

「馬鹿......」



いやなに落ち込んでるんだよ。大人だろうが。


結構軽い悪口だぞ。え、そんなに落ち込まなくても...



「ははっ、スイちゃんだけだる!"王族”のアインにここまで言えるの!」



そう言ってバルトさんは笑う。














ん?

『王族のそうま』.......?


「.........え」


「......あ」

「………………」

「き、聞かなかったことにして...?」



いや、冷や汗だらだらじゃん。

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