episode13. 始まり
「.......髪...」
「......切った。」
驚戒なベルの音と共にやってきた騎士は、右目を輝かせ、左目を小さく灯し、僕の店にやってきた。
「1人?」
運んでいた料理を子供の前に置き、シオンさんに向き直る。
「1人...で、来た...」
(意外......)
「.......えっと...」
黙る僕に気まずそうに口篭る。
「.......ごめん...」
「え...?」
「この前、......その...」
「変なこと...言って.......」
「...変なこと」
「......」
そう言って気まずそうに下を向く姿は、この国を守る騎士だとはとても思えなくて
「...大丈夫」
「、え...」
「気にしてないよ。
......きっと、大切な人が酷い目にあったら、みんな取り乱すもの」
調理場へ足を運ぶ。
入り口の小さな扉に手をかけて、くると後ろを振り向く。
「......瞳以外も、見てよ」
「...へ、」
「1回でいいから、食べてみて。
ここの料理」
「美味しいよ」
「...…」
「...っ、はっ」
「自分で言うのかよ」
初めて、シオンさんの笑顔を見た気がした。
__________
「.....宝石ってさ、本当に5つだけなのかなあ.....」
4人の騎士と、僕と、レナトくん。そして情報屋の人もいる時、レナトくんがそんな事を言った。
「、急にどうした」
「......他にもいると?」
「だって...5つって言っても、シオンさんとか2つ持ってる人がいる訳でしょ?」
頬杖をついて空を仰ぐレナトくん。
「......他にも、いるんじゃないのかなあ」
「他の......宝石...」
「......」
「......いい着眼点だな、お前さん」
音もなく颯爽とユートさんが現れたが、不気味にも思えた。
「!ユートさんはなんか知ってるの?」
「んー?そりゃあ、まあ?」
胡散臭く笑う情報屋。
僕はこの人が嫌いだ。
「......教えてほしいかい?」
「ほしい!!」
「ははっ、いいなあ子供っていうのは。無邪気だ。」
「......俺はこれでも情報屋だ。『これ』がねえとやってけねえのよ」
そう言って人差し指と親指で輪っかを作る情報屋。
子供には到底手の届かないもの。
「えー...」
「えー...じゃないんだよ、無償で情報やるなんてただの口が軽い奴だよ」
困ったように笑う。
「まあ、宝石の瞳の噂なんて数え切れないほどあるよなあ.....っと、」
コインが軽く投げられ、情報屋の手に収まる。
「おっと......」
「......それで足りるか」
「アインさん!?」
「アインっ?!」
「......参ったな。足りすぎるぐらいだ」
目を見開くバルトさんの横で、金色に光るコインを等で握り、また苦笑する情報屋。
「.......そうだなあ...」
「..........紫の騎士さんが2つ持ちだとは驚いた。まだ俺の知らないこともあるんだろうが...」
「…エメラルド、トパーズ、ルビー、サファイア、アメジスト...
あともう1つ。」
「…”始まりの石“というのを知っている」
「...…っ」
僅かに自分の肩が揺れた感覚がした。
頭の中が弾かれたような感覚。
「始まりの石?」
「…シオンさん知ってる?」
「......いや、初耳...」
「...」
「俺が生きてる中で1度も見たことないし他の宝石と違って、絵画などにもない」
「あくまで噂だ。1度だけ、書物で読んだことがあるだけの。」
「……1000年前の、始まりの石。」
「それが......
って、うわっ!」
「………」
情報屋が何かを言う前に、僕は手を引き外に出る。
少し歩いた先の壁に情報屋を追いやり、鋭く脱んだ。
「......」
「おっと......」
「なんだい?俺は騎士さんにコインを貰ってしまったからね、必要な情報を渡さなければいけないのさ」
「...どこまで知ってるの。」
「......」
薄い唇が弧を描く。
「.......どこまで、とは?」
「...僕の瞳のこと、僕の親のこと。......宝石の瞳のこと。」
「.......んー...そうだなあ」
「全部、と言ったら?」
「洗いざらい吐かせる。」
「…おっと......…」
「......」
「お前さんの親のこと。お前さんの瞳のこと。......これくらいは、分かるさ」
「……何を知ってるの」
「ん?」
「僕のこと、何を知ってるの」
「.......長年生きてると、様々な情報が耳に入る。もちろん、闇市のこともね。」
「......闇市...?」
「おっと、これはお前さんは知らないことか。」
(やっぱり嫌いだ。)
少しでも僕の知らない情報が手に入るのかもしれないと期待してしまった僕が馬鹿に思える。
「そうだなあ......」
「お前さん、本当はエメラルドじゃあ、ないだろう?」
不気味なオーラを持つ、目の前の男は鋭く目を光らせた。